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昼も14時を過ぎて、まったりしていた時。
『♪~』
インターホンが鳴る。
やれ宅配便かと心平がモニターを覗くと、そこにはニコニコ笑う悠里の姿が映し出されていた。
「あ、」
『その声は心平先生?お見舞いでーす』
「あの、調子悪いから気持ちだけで」
『お家の人はいらっしゃらないの?ご挨拶したいなぁ』
「い、居ないから、それはいいよ」
家人は留守、という情報を得た悠里はさらにニンマリと笑う。
そして
『上がらせてよ、声は元気そうじゃん』
と例の写真を映したスマートフォンをカメラにかざした。
「……」
こうなると断ることも出来ず、心平は泣く泣く玄関へと向かい開錠した。
「こんにちは、先生、お見舞いに来たよ」
「悠里くん、うつさないために休んだんだから、来ちゃダメじゃん…」
「病名は何なの?見たところ、動けない訳じゃなさそうだけど」
「…あの、」
インターホンへの応答が秒だったことからも、声が枯れてないことからも、パジャマでないことからも、心平が普段通り過ごしていることは明白だった。
疑いが確信に変わった悠里は、ずかずかと奥へ進み心平の部屋へと向かう。
「部屋は変わってない?ここだよね?」
「う、うん、そうだけど、」
昔はよく訪ねていたから、部屋の位置は分かっていた。
家具や小物のテイストは変わったものの、懐かしい雰囲気に悠里の表情は緩む。
「久しぶりだなぁ、心平先生の部屋」
「…そうだね…昔はここで遊んだりもしたっけ」
「うん……ねぇ、僕があげたプレゼント、使ってみた?」
「…やっぱりその話題になるのか…嫌だなぁ」
おそらく使ってないのだろう、悠里はそれも察していた。心平がオモチャを使い倒していても嫌だと思っていたし、使えないのが悠里にとっては最適解でもあった。
「(でも、見てみたいんだよなぁ。心平先生の可愛い顔、)」
悠里は持参した荷物をゴソゴソと漁り、
「先生、僕からのお土産だよ。こっち使ってみて」
と新たなグッズを差し出す。
「…なに?」
この前と似たような大きさの箱、カラーリング。しかし全体的にピンクっぽくて、媚びや甘さを感じる。
「女のオナホール。こっちなら勃つでしょ?不本意だけど、こっちで試してみてよ」
「なん…」
悠里は微笑みながらも、まるで汚物を触るかのように指先だけでそれを開封し始める。
心平はブツのインパクトよりも、悠里の纏う空気に異様な胸騒ぎを覚えた。
「ふーん、こんななんだって」
悠里はピンク色のシリコンの塊を持ち上げて、心平に掲げる。
「はぁ、」
「ね、オトコノコのやつより穴が大きい。ガバガバだよ、これなら入りやすい」
悠里は女性をdisっては、まるで男性器を握るようにもにもにとそれを潰して感触を楽しむ。
付属の潤滑ゼリーをちゅうっと挿れて軽く揉んで、侮蔑の視線を投げてから再度心平へ見せつけた。
「そんな、無理、」
「心平先生、でも勃ってる」
「恥ずかしいから、勃つよ…あの、本当、こういうのは」
短絡的なエロスに悠里の僅かな苛立ち、それらを見せられた心平はどうしてか興奮していた。
女性を馬鹿にしながらそれを勧めてくる心理とは何なのか、猛った股間を苦々しく見下ろす冷たい視線も気になる。やはり嗜虐心か、それとも嫉妬なのか。
「お布団かけて、僕は直接は見ないよ。だから、してるとこ見せて」
「やだよ、」
「さっさと済ませよう?心平先生、少年の前でオナホール持ってるとこ、親に見られたいの?」
「……」
「あと、今日の仮病のことも…うちの親に黙ってて欲しいでしょ?」
「もう、勝てる要素が無いんだな…」
げんなりしてベッドへ動く心平に、
「そうだよ」
と悠里は優しくも意地悪に声を掛ける。
もぞもぞ、ごそごそ、心平は布団の下で準備を始める。
挿れたフリをしてやり過ごせるか、でも正直な心平は狡猾な悠里を騙せない。
何もかもが無駄だ…心平はいっそ道化に成り下がり、悠里の汚い心を満たしてやろうと決めた。
「…どんな感じ?」
「まだ、挿れてない……あ、冷たい…」
先端に当たるひんやりとしたシリコン、形状は模したのだろうが温度はどうにもならないらしい。
「…勃ってる?」
悠里は透視するように目を細め、わくわくと布団の動きを観察する。
「勃って、る……あ、うわ、あ、」
「どう?初めてのま◯こは」
「その言い方、好きじゃない…」
「そう?僕も響きは下品だと思う。だからこそそう呼ぶんだけどね」
「…悠里くんは、女の子が嫌いなの…?」
心平が女性を擁護したように聞こえて、悠里はキッと目付きが鋭くなる。
「好きじゃない。母さんは好きだよ、別格。でも自分と同世代の女は好きじゃない。嘘つきで見栄っ張りで、強欲で恥知らず」
「め、めっちゃ言うね…何かされた?」
「僕とお喋りした子を、女子の集団が虐めてるのを見ちゃったことがあるんだ。最初は可哀想だと思ったけど、どっちも僕への下心があったみたいだから…うちはそこそこ金持ちだからね、玉の輿狙いも多いんだ」
「へ、へぇ…凄まじいね」
「メスの話は良いじゃない、さ、とっとと突き刺して、征服しちゃって」
どこまで真実か不明だが、心平は悠里にも苦労があるのだなと納得した。しかしその鬱憤と自分がホールを当てがわれることに整合性は無いのでは、と口には出せず。
いっそ本当に発熱していそうなくらい、じんじんと身体が熱くなっている。
「行きます………あ、あ…」
「入る?気持ち良い?」
「そこまでじゃ……あ♡」
「教えて、どんな感じ?僕は女は経験できないから、教えて、」
「え、あー……あの、ヒダヒダが、当たって…うわ……き、もちい…」
纏わりつくゼリー、人肌で温まってシリコンとの一体感が増す。奥まで入ってもまだ足りない感じ、先端が掠るそこに何かある気がする。
「先生、エローい」
「(これは…手とは違う…ホールでこれなら、本物はどんな…うあー♡)」
「心平先生のち◯ぽ、呑み込んでる?」
「言い方……うあ、あ♡」
「ムカつくー」
「え?あ、」
早くも恍惚が見えると、悠里は布団へと手を差し込む。そして手探りでオナホールを見つけ、心平の手を払い除けた。
「ムカつく、メスま◯こでそんな表情しちゃって」
モノが入った分強くなった筒を、ガシと掴んで角度を読む。
布団の中で心平の脚を組み敷いて、顔では「逆らうの?」と威圧する。
「あの、触らないって」
「間接的だから良いでしょ、見えてないし…ほら、ずぷずぷ言ってる」
かまくら状になった布団は、溶けたゼリーの音を端から吐き出す。
すぐそこなのに遠くから響いているようで、悠里はその隔たりにも興奮した。
「あ、あッ♡」
「女のま◯こだよ、心平先生の童貞ち◯ぽ、飲まれちゃってる」
「おもちゃ、だよッ…あ、うわ…こんな、なんだ、あ、」
「ねぇ、気持ち良い?」
「きもち、いッ♡…悠里くん、あの、離して、」
「やだ、せめて僕がイかせてあげたい」
本当なら直に触りたい、こんなハリボテなんかでうっとりしている心平を見たくはない。
でもこれは自分とのラブタイムへの大切なステップなのだ。モテない心平には、まず性的なことへの抵抗を無くしてやらねばとの作戦だった。
それがだいぶん駆け足で段飛ばしで重要なプロセスを経ていないことは…悠里は分かっているようで分かっていない。
せめて告白でもして恋仲になればチャンスは格段に上がるのに、心平の性格に託けて脅迫という外道な手を使っている。
「(心平くん、どうせフラれるなら、立場を利用して…行くとこまで行ってやるさ)」
夏の暑さのせいにして乱れてくれれば良いじゃない、間違った若さの解釈で悠里はオナホールをしこしこと動かした。
「見らいでよ、悠里、ぐ、んッ♡…恥ずかしい、」
「顔しか見てないよ、心平先生がメスま◯こでヨガってる顔♡」
「マジで、あの、出ちゃう、」
「出して、このメスま◯こ、心平先生の精子でいっぱいにしてやって、」
「何なの、その表現ッ…あの、見ないで、悠里くん、」
「やだ、全部見たい、顔しか見ない、」
「やだ、お願い、悠…あの、ダメ、」
クイっと顎を引き上げて、同時に心平は決壊した。
「♡♡♡」
射精に音などありはしないが、鼓膜に刺さる悲鳴と吐息は悠里の精神をさらに高揚させる。
手に脈などの感触は伝わらず、それは残念に思えた。
しかしクタっと頭をもたげる心平のいわゆるアヘ顔は至福のご馳走で…
「ごちそうさま、心平先生♡」
悠里は満面の笑みでそう挨拶して手を離した。
「…ど、うしよ、これ…」
「抜いて、捨てれば良いんじゃない?」
「な、何ゴミだろ…困る…」
「アダルトグッズのサイトに処分便のメニューあったから、僕が出しておいてあげるよ」
「あ、ありがとう……あ、」
これはまた脅迫材料を増やしてしまった、疲れた心平はため息をついてゆるゆるとホールを外す。
「…それ、見ちゃダメ?」
「あ、洗って来ようかな…」
「使い捨てメスま◯こなんか洗わなくて良いよ…ほら、この箱に入れて?」
「…せめて、女性への敬意は払おうよ…」
女性が嫌いなのと男性が好きなのはイコールにあらず、心平は悠里の趣向を理解しきってないので一応注意はする。この先女性と触れ合うことがあるかもしれないし、馬鹿にした態度では悠里が損をする。
「知らないよ、そんなの…じゃ、今日は帰るね。お大事に、仮病の心平先生♡」
悠里はホールを提げて、悠々と出て行く。
またいくつかの弱みを握られた心平はため息をついて、しかしばくばくと高鳴ったままの心臓を押さえて悩ましげにベッドへ倒れ込んだ。
「何なんだよ…あの執念は…」
自分を虐めることにそこまで注力しなくて良いだろう。お金をかけて自慰グッズまで買って、布団越しとはいえ目の前で使わせて。
これがもし学校の人目につかない場所で、高圧的な態度で強制されたらもっと酷い気持ちになったかもしれない。
しかし恥ずかしさはあれど、態度こそ横柄であれど…拒みきれなかった理由は弱み云々だけではない、心平は自覚し始めている。
「(悠里くんに見つめられて、まるで、悠里くんに挿れてる…みたいな…いや、不謹慎だ、絶対想像もしちゃいけない)」
相手は17歳の少年だ、妄想するのも犯罪チックでいけない。
「(もし、悠里くんが…僕に好意を持ってるとかなら…まだ、マシなんだけど…)」
確証の無いことは考えても仕方なし、心平はとりあえず次に待ち構えている関門のことを想像して一気に気が重くなる。この部屋に存在するもうひとつのオナホール、オトコノコのアナルを模したそれの使用レポートのことである。
正直、女性型を経験したからハードルは下がっている。しかし射精後で散らかった頭では、そこに興奮材料を見出したり再度勃たせたりが困難に思えた。実際、スッキリしているので股間はピクリとも反応しない。
「コマッタ」
次の家庭教師の日まであと3日、もう仮病は使えない。
ギリギリまで粘って、無理なら創作してレポートを書き上げれば良い。
「…よし、」
心平は例の袋の中からオナホールを取り出して、とりあえず暖かい布団の中に隠した。寝所を共にすれば慣れてくるかもしれない、賢者タイムにネジが飛んでしまった心平はこれで一歩前進したと清々しい気持ちになる。
この姿を悠里が目撃すれば「バカだなぁ、心平先生♡」と確実に言っただろう。
しかし良くも悪くも真面目で愚鈍な心平は、仮病欠勤の罪の意識を少しでも軽くしようとこれを最良策とした。
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