君は、裸の王子さま—イタズラ御曹司は気弱な幼馴染みが欲しくてたまらない!

茜琉ぴーたん

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「こんにちは、悠里くん、合格おめでとう!」
心平は家庭教師としての最後の仕事に赴いた。
「ありがとう、ネットで見たの?」
「うん、自分のことみたいに緊張しちゃったよ」
「そっか…」
100パーセント晴れやかとは言えない面持ちで、悠里はチェアに掛ける。
 もし不合格なら地元に住みながらエスカレーター式に大学に上がるだけだった。同じく実家住みの心平とは近距離のまま親しくできるはずだった。けれど将来のために出した決断により、春からは絶妙な遠距離になってしまう。
 以前の悠里なら、時間をかけて家から電車で通っただろう。家に居れば家事はしてもらえるし、美味しい食事も出て来る。しかし大人たるもの、生活全般を自分で賄うのが当たり前…と悠里は張り切ったのだ。
 働いて報酬を得たことも自信になったし、自分の城を持つことに憧れもあった。疲れてベッドに倒れ込む日もあるだろう、何もする気が起こらず気が沈む日もあるだろう。でもそれも主人公っぽくて良い感じ、堕落した自分も経験してみようと悠里は間口を大きく広げることにした。
 余裕を身につけて、カッコいい大人になるために。そしてそれは何のためって、目の前の心平のためなのである。

 あと少しで引越すので、それまでには答えが欲しい。ダラダラと連絡を取っても、きっと進展しない。幼馴染み以上恋人未満は、もう充分に味わった。同じ遠距離ならば、友情ではなく恋愛がしたい。
「……心平くん、僕、引越す前に…ハッキリさせたくて。その、あ、改めて告白するから、素直に…答えて欲しいんだ」
悠里は震える手を手で隠し、心平を見つめる。
「…うん」
「僕は心平くんが好き。小っちゃい頃から。何でって、分かんない。過ごしやすくて、落ち着くんだ。男同士だから結婚とかは分からないけど、この先、ずっと、一緒に居て欲しい。心平くんの将来、うちが面倒見るから」
「へ?」
「……あ、いや、うち、事業してるから…養いたい、それくらいの気持ちなんだ。ごめん、お金で来てもらって、またお金の話して…違う、心平くんと一緒に居たい、その現実的で堅実なプランを提案してるんだ…お願い、心平くん、遠距離になっちゃうけど、僕と恋愛して欲しい」
 交際の申し込みではないところに、心平は悠里の可愛らしさを感じた。
 彼にとってこの1年と数ヶ月はみそぎ期間であったのだろう、やっとマイナスをゼロに戻せたとの認識らしい。心平からすれば仲を深められたとの印象だったのだが、その辺りに相違があるようだ。
「…これから、始めるんだね」
「うん、見直してもらえてたら嬉しい」
「見直したよ、僕は…人と付き合ったことが無いからうといんだけど、悠里くんとはこの先も仲良くやっていけそうな気がするよ」
「本当?」
「うん…単純で申し訳ないんだけど、好きって言われたらそれだけで悠里くんのこと意識しちゃったんだ。動機が僕都合で悪いんだけど、悠里くんのこと好きだよ」
「やっ…た…」
 緊張の糸が切れた悠里はガクンとチェアにもたれ、足が滑りズズズと体が床に落ちて行く。
 心平は椅子から離れて寄り添った。
「だ、大丈夫⁉︎」
「だいじょーぶ…ははっ……僕は…こんな気持ちを味わうことなく、心平くんを失うところだった…バカだよ、本当…」
「反省したなら良いじゃない」
「うん…心平くん、僕、ずっと仲良くしたいから。エッチなこともそりゃ興味はあるよ、でもなんか…違うんだ、純愛?なのかな…ごめん、説得力無いんだけど」

 涙ぐむ悠里の頭をポンポンと叩いて、心平は慰めた。初めてキスをした日も、こうして悠里を慰めた。一方的な暴君は、案外操りやすい子だった。
 互いに把握し切れてない部分があって、それは異なる人間なのだから当たり前で。どちらが上に立つとかはよく分からず、ただホワホワと温かい気持ちが胸で渦巻く。
「…悠里くん、」
心平は優しく初彼氏の名を呼ぶ。
 そして歳上らしく、上がって来た悠里のあごをちょいと掴んで…キスをした。
 確実に唇に触れるまで目を開けて、それが段々と閉じられて薄目が色っぽいと悠里は潤む瞳で眺めていた。
「……ぇ、あ、心平くん…」
「…同意は要らないかと思って…ごめんね」
「っ…あ、やだ、嬉しい…もぉ…心平くんのくせに、リードしないで」
「なにそれ…まぁ、そういうことも、追々考えて行こうね」
「うん、うん…」

 二人は床に座ったまま抱き合い、また数回キスをした。一度は悔しがった悠里から、一度は余裕ぶった心平から。最後のキスはどちらともなく、接地する前から深いものになると予感が出来ていた。
「…ん、ん…」
「は…ム…ン、」
「…ぷは…悠里くんヤバいね、キスってこんなに気持ち良いんだ」
「…すっごい興奮する…心平くん、僕ら、大人になった気がするね」

 やめられないと踏んだ二人はそれで打ち止めにして、ギュッと抱き合ってから家族の待つダイニングへと降りる。
 合格祝いのディナーは大層豪華で、心平は少しお酒も頂いて良い気分だった。

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