君は、裸の王子さま—イタズラ御曹司は気弱な幼馴染みが欲しくてたまらない!

茜琉ぴーたん

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「心平くんお待たせ、あー疲れた」
「お疲れさま、走らなくても良かったのに」
 今夜は地元デート、二人は繁華街の片隅で落ち合った。
 悠里は学生時代同様にジムに程近いアパートを借りて、ひとり暮らしをしている。心平はいまだに実家暮らしで、それで不都合が無いので特に独立は考えていなかった。
「と…社長ってばさ、客のフリして店に電話掛けてくんだよ。そんで僕の応対とか見てんの」
「わぁ」
「マシンの専門的なこととか、わざとマニアックなこと聞いてくんの、もう…整備は専門家に任せてんだから修理のことまでは知らないってのに」
「すごい新人研修だね…」
「違うよ!何が腹立つって、僕にしかしてないんだ!他の店長にはしてないんだ、仕事のフリして僕を虐めてるんだよ!」
「…親子だね」
 息子がワガママならその彼を育てた親にも素養はあって、父・幸司こうじも息子可愛さに職権を濫用して遊んでいるようだ。けれどそれも悠里の実になっているはず、でなければ優秀な息子をギャフンと言わせたい父の汚い嗜虐しぎゃく心の表れか。
「…何があっても対応できるように鍛えてくれてるのは分かってるんだ、実践的にね、でも…ボイスチェンジャーまで使うんだよ、ふざけてるだろ!」
「オモチャ好きも親子らしいね」
 悠里も親心は理解しており、その上で愚痴を心平に吐きたいだけなのだ。
 心平も親子仲の良さは知っているので、微笑ましく悠里の眉間のシワを眺めていた。

 悠里が大学を卒業して地元に帰って来た際に、心平も食事会に参加させてもらった。そこで幸司は「何か報告したいことは無いのかい」と心平に向かって問うた。
 心平が連休ごとに泊まりがけで出掛けることは親同士の交流で周知されており、しかしそれが悠里に関連したことなのかどうかの確信は無かった。さすがの悠里もこの頃には心平への好意を父へ漏らすことはしていなかったし、二人がどれくらいの仲になっているかは測れなかった。
 けれど心平は悠里の帰省の度に訪ねて来るし、幼馴染みとはいえ距離感が近過ぎる。博愛主義の幸司は二人がカップルになることをとがめはしないが、ダラダラと区切りの無い付き合いをすることには抵抗があった。
 なので敢えて年長者である心平へ、「表明してみなさい」と突き付けたのだ。

「え、っと…すみません、言うべきものかも分からず黙っていて…僕、悠里くんとお付き合いしています。僕が家庭教師をしている頃からご存知だったと思うんですが、悠里くんは小さい頃から僕のことを好きでいてくれて。僕は男女問わず恋愛をしたことが無くてそこの抵抗はあったんですが、でも僕も悠里くんのことが好きになって…あの、無責任なことはしたくないのでご両親にはもう隠しませんし、でも会社的にどうかなっていうのがあれば徹底して隠します。僕は…悠里くんと仲良く出来たらそれだけで充分なので、この先もよろしくお願いします」
心平は最初こそ迷いながら、しかし淡々と覚悟を顔にたたえて幸司へと告げた。
 幸司は「オッケー」と軽く受け入れて、そこからは特に何も言及されなかった。一応の筋だけ通させるのと、公言してもらわねば周りがやりにくいとの理由から言わせたのだ。悠里の不利益になるなら排除もするが、ここまで控えめかつ堂々とされるならもう言うことは無かった。
 しかし「『経営者がゲイだから理解あるはず』って、ジムがハッテン場にされちゃ困るから、積極的に吹聴するのは止めなさいね」とは言われたので二人は小さく返事だけしておいた。

 ちなみに心平の両親も「まぁ、それぞれのことだし」と寛容だった。趣向は他人が矯正できるものでもなく、して良いものでもないと分かっていたし、心平が男性と愛し合うことで失われるものも無いと考えていた。
 むしろ「悠里くんと関わり出してから心平は生き生きとした姿をしている」と親目線で語ってくれて、「後悔の無いように」と応援してくれた。

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