先生、マグロは好きですか?

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
35 / 85
2018・爽秋

34

しおりを挟む

 正直、潤は今夜のセックスに乗り気ではない。解決してない問題がモヤモヤと、ずっと胸の浅いところに漂って居座って気になってしまう。それでも、励ましてくれた飛鳥の気持ちに応えたく、切り替えてエッチな気分になろうと頑張ってみるのだった。
「所長、今日は抱っこして寝るだけにしようか。その気になんないでしょ」
飛鳥は潤の気持ちを察して、珍しい提案をしてくれた。
「いや、あの…あ……ごめん…」
「所長が謝らないでよ、ケンタが悪いんだよ。こわいよね」
「うん…」
 ふかふかのベッドへ尻からダイブし、飛鳥は天井の鏡に気付いて「おぉ」と驚く。
「所長、おいで」
 その彼に手を引かれ潤も隣に寝そべり、同じく鏡に映った自分たちを見て「わぁ」と驚いた顔をした。まるで人に見られている様な感覚、どぎまぎとしながら飛鳥とキスをして、伏し目がちに舌をその唇へ沿わせる。
「ほんっと、ケンタは罪な男だね…」
「ウン?」
「別れて1年以上経つってのに、ずっと所長を悩ませて、心の中に居続けちゃってさ…ずるいよ」
飛鳥はハムハムと潤の唇をついばみながらそう呟いた。
「そんな事言っても、先生だって元カノとかいたでしょう?」
「まぁね」
「ほらぁ、私ばっかり責められるのは…ずるいじゃない」
「だね」
元カレ・ケンタのキモメールの威力たるや絶大で、飛鳥も脱力してしまいどうも唇を合わせても興奮しきれないでいた。

「ねぇ、」
弱った顔でため息を吐く飛鳥に、潤は元カノのエピソードなどをねだって聞かせてもらった。
 その人数は意外に少なくて2人、学生時代の彼女が最後で、社会人になってからは特定の恋人は作らず、割り切った関係の女性と遊んでいたらしい。
「面倒でね…ボクはほら、虐めるの好きでしょ。Mな子と付き合いたいけどなかなかねぇ、調教済みじゃ意味無いしさ。しばらくはプロのお姉さんと遊んでたよ」
「うーん…ヤキモチやく気にもなんない…プロかぁ…ずっと同じ人?」
「そうだね…その人が…んー…引っ越すまでは…シてたね」
少し遠い目をして、飛鳥は「別れた」と言いたくないのか言葉を選んだようだった。
「そっか…遠いの?」
「なかなかね。ははっ」
「むー…」
「なに?妬いてくれるの?」
「いや…私はケンタの事でいつも詰められるのに…」
「ボクの元セフレは『ショウコ』さんだったよ」
「あっそう…」
 案外、潤はヤキモチを妬いてくれているのかも、そう感じた飛鳥はかねてより考えていた事を打ち明ける。
「……所長さぁ、ボクらって付き合うより先にセックスしちゃったじゃない?それで相性がいいから…というかボクが離さないから一緒にいるんだけどさ…」
「うん?」
「ボク自身の事はどう思ってる?ボクがもしセックスが下手だったら、今頃こんな事になってないでしょう?」
「あー………」
 潤はしばらく黙り込み、続ける。
「生理の血が付いちゃったのを助けてくれたのは打算だった?私の事が好みじゃなかったらスルーしてた?」
 そもそもの仲良くなるキッカケは、彼女の経血が染みてそれを彼が助けたことに始まっている。
「…………いや……誰だろうと助けたと思うけど…」
「んー、そういう所だと思うなぁ…。お世話焼きでしょ、家事能力高いでしょ、女子力も高いでしょ、あと……体もまぁ……」
「相性がいいよね」
「うん、そういうこと……上手い下手はよく分かんないけど……大切にしてくれるなら一緒にいたと思う。私に無いものをたくさん持ってて…んー………好き、よ」
「ふふっ………嬉しいな……所長、ん、キスしよう、は…」
 腕を、指を、脚を、腰を、絡めあってほぐれ合って、潤が上になるようにコロンと体を回す。
 身体だけのただれた関係ではなかった。それをやっと確認できた飛鳥は嬉しくて潤を抱く手に力を込めた。
「ずっと聞きたかったんだよ。ボクじゃなきゃ駄目な理由って所長にはあるのかなって…」
「うん…」
「ボクはねぇ、所長じゃなきゃいけない理由って正直無いんだよ」
「ぇえ⁉︎無いの⁉︎」
ここまで言わせておいてなんて事を言うのか、潤は遊ばれたような感覚になり難しい表情になってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...