悪ガキ御曹司と泣き虫センセ〜チョロすぎる私が悪いんですか⁉︎〜

茜琉ぴーたん

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『和都ちゃんさぁ、クリヤマさんに迫られていい気になってない?』
我が恋人の傑くんは、休憩にそんな心無いことをメッセージで送って来た。
 離れたデスクからご苦労なことだ、終業後には直接言ってくるに違いない。
 私は面倒だなと思いつつも、返事を打つ。
『いい気にはなってないよ。断ったもん。』
『俺の目がなかったら、参加してたんじゃないの?』
「(デレが重いなぁ…)」
 最近のメッセージはこんなやり取りが多い。交際確定までは傑くんの方が押して来ていたのに、今では押し過ぎてぶら下がっているような状態だ。でも好かれているのは有り難いことなのかな、年下彼氏のワガママは今のところ愛らしくて許容できている。
 私は現状栗山さんの誘いを断っているが、それは傑くんの有無に関わってはいない。単純に栗山さんとは2人きりで食事をしようと思わないし、会話が楽しいとは思えないのだ。
 本人は話が弾んで会話上手だと思い込んでいる節があるが、それは周りの人間のサポートがあってこそなのである。足りない単語を補い、わざと下手に出て言葉を引き出し、過度に驚き、相槌を欠かさず、頷き…お手本のような傾聴姿勢を取れる職員が多いため、栗山さんは気持ち良く喋れるのだ。
 いわゆる聞き上手、我々職員は強いられてはないが広く穏やかに話を聞けるよう心掛けている。生徒さんの話を聞く時もそう、卒業生の就職先に赴き現況把握をする時もそう。現場で施設利用者さんと話をするときもそう、これは私たちが働く上で身に付けた、もしくは元々備わっているスキルなのだ。
 比較的女性がその術に長けているかなと感じるが、男性にだって備わっているし習得することは出来る。栗山さんはそれがあまり上手ではない、だから周りが話を合わせてあげているのだ。なので午前のお誘いのように私が最低限の単語数でしか話をしなければ、円滑なコミュニケーションが敵わず…変に噛み合わずグダグダ、になってしまう。
 これを"話が合う相手"とは言えない、ここにも相性というものは感じられる。
 私も傑くんもオタク気質だが、それぞれ互いが"何を感じたか"を知りたい性分なので、聞き合い尋ね合い答え合いになる。相手の答えを受け止めて自分の意見を放つ、自分語りに偏ったりはしてない…と思う。
 私は最近はこうして、傑くんとの相性の答え合わせをすることが増えた。こうだから好き、こうだから気が合う、こうだから尊敬できる、確認しては今の関係が適正であることの裏付けにする。こうでもしないと納得できない…のではなく、あくまで感情の後押し作業だ。いじめっ子から急速にデレに旋回した傑くんに順応している自分が正しいと認める、そこの安心材料集めみたいなものだ。
『私は外ではお酒飲まないし、気を使う人とのご飯は疲れるよ。』
『クリヤマさんから猛アプローチされたら付き合ってた?』
『ない。言ったでしょ、私は優しくて朗らかな人が好きって。マウンティングする人って疲れるの。』
『だよねー、イジリにも愛がないとねー♡』
 どの口が言ってんだ、いや打ってんだ、さくさくとお弁当を平らげて口を拭く。
 ちなみにあの初外泊の日、『晩ごはんは明日食べるから』と連絡を受けたうちの親は大騒ぎしていたらしい。夜に帰宅して一応詫びたら、「相手は誰なの」と母に詰め寄られた。就職のお世話をしてくれた傑くんだとやんわり伝えたところ、父も母も妹も小躍りして喜んでくれた。私がアラサーまで男の影が無かったオタクかつ、相手が地元イチの学校法人の創業一族だから驚きもしただろう。
 あくまでデートをしただけだと真実を告げてはいるが、信じる人はいないか。あのシチュエーションならセックスして帰るのが普通だろう、逆に男性として女性に対して失礼だなんて意見もあるくらいだ。
 ところが未体験なんだよね、早くも「結婚はいつなの」とせがむ両親を鬱陶しく感じているこの頃だ。

『変なヤキモチはやめてね。私は栗山さんとは何もないから。』
『もし浮気したら、和都センセ作『イジワル御曹司の愛が重過ぎる件—奥までいっぱい⭐︎ヤンチャな愛棒—』を朗読するからね。』
『しないってば。やめれ』
 ともかくそんなやり取りをしていると昼休憩も終わり、午後の仕事が始まる。
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