高嶺の花は摘まれたい

あかね

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12月

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 美月は畳の上に座布団を敷いてよろよろの高石を寝かし、手早く浴衣を着て彼の枕元に腰を下ろす。

 そして丸裸のままの男の上にも浴衣を広げて掛けてやり、冬だが座卓に置いてあった団扇うちわではたはたと頭に風を送ってやる。

「タカちゃん…頭に血が上っちゃったのね…」

「ミーちゃん…ごめん……」

「いいわよ…ゆっくり休んで……あら」

高石はゴロンと寝返って美月の腿へ頭を乗せ、浴衣の三角ゾーンへ鼻を押し当てた。

「あぁ♡ミーちゃん…堪らんな」

「元気みたいね。退けてくれる?」

呆れる美月は冷めた眼差しで高石を見下ろすも、体を返した拍子に露わになった男の裸体に思わずその目を背ける。

「浴衣…直すわよ…」

「熱いから…このままでええよ…」

「良くないわよ、丸出しじゃない」

触りはしたものの視覚で攻めてこられると弱い、美月は手を伸ばして床に落ちた浴衣を掴み、腰の部分だけでもと体へ掛けてやった。


「ミーちゃん…なんか、俺…まだ待てそうやわ」

「え…」

「触られただけでこのザマよ…情けない…たぶん、セックスしても…保たへんよ…興奮し過ぎて、即終わりやわ。まだ…鍛錬が足りんわ」

「ん……今夜はシない…ってこと?」

美月の声の調子は明らかにホッとした様子で、それを感じ取った高石は哀しげに笑う。

「経験者ぶって偉そうに言うてもうたけど…恋愛が絡むとちゃうな、風俗とは……いっぱいいっぱいや、ええ大人がよ」

「そんなに卑下しなくても…いいじゃない、タカちゃんも余裕無いのね、ふふっ…可愛い♡」

濡れた背中をぽんぽんと叩けば、赤い耳の高石は自身の浴衣を掴んで剥がし、再び裸体を美月ヘ見せつけた。

「ぎゃあッ……も、もう…お腹冷えるわよ……後は…暗くなってからね…」

「ん。いっぱい触ってもらお」


 それから高石はパンツだけは履き、夕食の準備で仲居が入ってくるまで膝枕を楽しんだのだった。


 夕食は部屋の座卓へコース懐石が1品ずつ運ばれてくるシステムで、ゆっくり時間をかけて楽しめた。

「すごい、出汁が効いてる…染みてて…ほろほろ♡」

「美味い」

「これ、細かく切れ目が…山間部だけど新鮮なの仕入れてるのね、」

「美味いね」

「んもータカちゃん、他に感想言えないの?」

中でも一番高級なコースを選んだのにこの感想、美月は高石へ苦言を呈す。

「いや、美味いんやもん。レポーターちゃうねんから…」

「えー、奥さんにご飯作ってもらってもそんな感じなの?やる気無くしちゃうわよ」

それはもちろん自分を想定しての発言で、「美味い」のひと言で済まされれば手の込んだ料理など作る気も失せるというものである。

「また裸エプロンしてぇな、したらなんぼでも感想言うよ」

「それおっぱいの感想でしょ!もう、いいわよ……んム…美味しい…」

「ほらな」


 美月は好物の刺身を口に突っ込まれ、平々凡々な感想を吐き高石に笑われるのであった。
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