愛の議論は長々と—あなたには理屈じゃ敵わない—

茜琉ぴーたん

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3・強くあれ

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「翔くん、ソレ、自分では何て呼んでる?」
「……え、コレですか?えー……考えたこと無くて…」
「子供の頃は?」
「…ちんちん?ですかね」
「ふはっ」
見た目にそぐわないポップな男性器の言いように、ついつい笑ってしまう。
「わ、笑わないで下さい…すみません、下ネタに耐性があまり…」
「私には何て言わせたい?」
「……言ってくれるんですか?」
「言えるやつならね」
 男性器の名称は淫語に当たるから嫌がる女性は多かろう。
 しかしその嫌がる姿を愉しむのが男性であって、でもその愉しみ方は翔の趣向には合わない訳で。
「…多香子さんの品位を貶めるのは嫌なので、言わないで下さい」
「婉曲なら?」
「大歓迎です…すみません、こだわりある変態で」
 「良いよ、続けて、」と許せば、翔は私の太ももに改めてソレを当ててしこしこと動き出した。家着とはいえ汚されたくないので、「待ってね」とハーフパンツの裾を捲って肌を露出させる。
 私はくすぐったいと思うくらいで、彼の熱量に押されて引くタイミングを逃した。この人はこんなに私に夢中なんだな、と思えば少しはマシだ。
 私でなくとも性的欲求は満たせるだろうが、まだ私にしか見せてないこの姿を誰にも見せたくない。気が付けば、私はせっせと動く翔の癖っ毛の頭に手を乗せていた。
「頑張って」
「~~ッ…あ‼︎」
少し撫でて声援を送っただけなのに、翔はビクビクと肩を怒らせて仰反る。
 そして半目になって白目になって、口は台形を模して舌を出して。
「あ、」
「~ッく、ぅ…」
 ぴゅっぴゅと白いゼリーみたいなものが流れ出て、私の太ももを濡らす。時間にするととても短かった、それほどに刺激があったのだろうか。
「…翔くん、大丈夫?」
「は、い…すみません、見ないで、下さい…」
「どっちを?」
「顔、私を…」
 ティッシュを手に取り、太ももの精液を拭く。
 翔は自身を拭いており、げんなりというかげっそりしており悲壮感を漂わせていた。
 パンツの中で暴発したり数十回の摩擦で達したり、これは俗に言う早漏というやつなのでは。
 なんとも言えない気まずさに、私の興奮も鎮まっていく。濡れたティッシュをベッド脇のゴミ箱に捨てて、ハーフパンツを元に戻す。
 翔はサカサカと下着とパンツを腰まで上げて、
「速くて、嫌になります…」
と涙を溢した。
「え、泣かないでよ」
「泣かせて下さい、すみません…情けなくて」
「慣れればどうにかなるって」
「いえ、自慰を覚えて数年、繰り返しても一向に改善されません…このままでは、このままでは」
「私とのセックスも、すぐに終わっちゃうね?」
真剣な悩みなのにどこか可笑しく、追い討ちを掛けてしまう。
 おそらく、まだ鼻にティッシュが詰まっているからだろう。
 翔はベッドにぱたんと倒れ、シーツを涙で濡らす。
「そう、でしょうね…もったいない、多香子さんと長く愛し合いたいのに」
「ねぇ、ひとりでスる時って、手で?」
「…はい」
「道具とか使ってさ、女性器の感覚に慣れてみたら?オナホールとか」
我ながら何の提案をしてるんだろう、しかし刺激に強くなるには鍛錬を積むしかないのではなかろうか。
「…そこまで、シたくはないんですよ。多香子さんとシたいだけで」
「他の女の子で経験を積むのは?」
「私を怒らせたいんですか?」
「怒れるの?」
「…怒れないから困ってるんです…そういう試し発言はやめて下さい、切実に…苦しいです」
翔は私の腰に抱きついて、よよと泣く。
 私が謝っても嫌がられるし、悪いことをしておいて平然としているのも良心が痛む。試し行為はもうしないでおこう、翔の頭を撫でて抱き締め返した。
「翔くんの愛を試したくなっちゃう…もうしない」
「…はい」
「私と、短時間でも良いから…セックスしようね」
「…はい、子作りを前提とした、セックスを」
「真面目だねぇ」

 この日から私たちのスキンシップは段々とディープに…なると思いきや、なだらかに微増しただけだった。
 思い切りの付かない翔はセックスに後ろ向きで、その代わりに自慰行為を含むイチャイチャをするようになった。時には私の足の裏に擦り付けたり、膝を曲げて挟んだり。手でスるところを間近で見せてもらったり、手を受け皿にさせられたり。
 翔は強いたりはしないので、あくまで私からの提案である。でも翔がしてみたいんじゃないかな、というプレイを考えては実行している。

 私はショーツを一度も脱ぐことは無く、季節は巡り…年が明けて、私たちは大学を卒業した。
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