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7・思う仲に口さすな
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しおりを挟むそしてその夕刻…現在は友人や職場関係者を招いてパーティーを催している。
宴は立食形式で大小のテーブルを数卓配置、祝辞と結びの挨拶があるくらいで基本は自由に行き交いできるようにしていた。かつての恩師や同期や幼馴染みなど、充分に豪華なメンバーが集結して賑やかだ。
私と翔の元学友や仕事関係者はいずれも高学歴者が多く、起業している人もいる。異職種の人と交流することで新たなビジネスだったり研究だったりを見つけることもあるだろう、その辺りは好きにしてという感じだ。なので私もクラッチバッグには名刺ケースを忍ばせていたりする。
会場の入り口には芸術家の友人にお願いして作ってもらったウェルカムボードを飾り、前撮り写真も立て掛けた。
その隣の小さなテーブルには2段のショーケースを配置、中に飾っているのは懐かしい古代生物のキーホルダーだ。アノマロカリスやプテリゴトゥスなど、私たちの縁の品として堂々と鎮座している。
「多香子さん、お疲れではありませんか?」
オーダーメイドの燕尾服を着こなす翔は実に美麗で、私のドレスが霞んでしまうようだ。
私はウエディングドレスからシックなアイボリーのイブニングドレスにお色直し、スタイルに自信が無かったのでハイウエストで脚長に見えるものを選んだ。
「大丈夫…翔の同級生、凄いね…お医者さんとか弁護士さんとか」
「多香子さんこそ、高名な研究者の方が沢山…誉高いですね」
「まぁ、ね」
上司である勤務先の教授も来て下さり挨拶をしたり、オンライン診療で薬を処方してもらった耳鼻科の先生もいらっしゃる。私たちが築き上げた人間関係の厚さと豊かさを感じる、そしてそこに誉も抱ける。
二人で卓を訪ねてご挨拶をして、余りあるお祝いの言葉を頂いて嬉しい限りだ。
「犬伏さん、おめでとう」
「あ、教授!」
熊学園大学の関係者が集まる一角に向かうと、職員全員で来たのかというくらい多くの人に囲まれた。教授や講師の先生も含め、時間を作って駆け付けてくれている。
学園職員からすると翔はゆくゆくの上長になる訳で、なるべく沢山の職員を引き連れてやって来てくれたようだ。
翔は総務課の職員に囲まれて、方々から祝辞を貰っている。
私の方は繋がりのある理学部関係の方々が挨拶をくれて、その中には私が前にお邪魔した理学部の教授もいらっしゃり…学部繋がりであの無作法ネイル受付・茂木もいた。
「(うわ、仕事できない派手女だ)」
名刺に"すっぴん地味オバ"とか書いてくれてたっけ、同一人物だと分かるだろうか。そしてその地味オバと憧れの翔が交際し結婚していたことについて、何か思うところがあるだろうか。
茂木はクネクネと内股で近寄り、
「おめでとうございますぅ~♡茂木ミユウですぅ、理学部の看板娘、やってまぁす♡はじめまして、熊倉さんの奥さまですかぁ?熊倉さんにはいつもお世話になってますぅ♡」
と涙袋ぷっくりの笑顔を見せる。
翔は職場でも犬伏の姓で働いているのだが、茂木はいまだに旧姓で呼んでいるらしい。そもそも部署が違うのだから呼ぶ頻度も少なかろうに頑なに旧姓を使うあたり、意図的なこだわりを感じさせる。
アンタのものじゃないんだから、とでも言いたげな挑戦的な目だ。
「どうも、犬伏の妻の多香子です。本日はお越し頂いてありがとうございます」
「…あのぉ、どうして奥さまの苗字にしたんですか?可哀想じゃないですか?普通は旦那さまの苗字にするじゃないですかぁ」
「二人で検討したことなので…あと、今言われましても」
「なんか、我が強いんですねぇ、私だったらぁ、熊倉さんの苗字に喜んでなるのにぃ~」
同じ職で別学部の受付女性は「ちょっと、何笑ってるの!」と嗜めてくれているが、茂木は静かになるもののニタニタして感じが悪い。教授も訝しげに茂木を見て遠くにやろうとするも、簡単に触れないために文字通り手を拱いているだけだ。
「改姓に関しては合理的な判断でこうなりましたよ。翔くんが変えたいと言ったので変えてもらいました」
「ふぅん…なんか残念、旦那さまを尻に敷く感じなんだ、それって女性としてどうなんですかぁ?」
「抽象的なことばかり言いますね。私たちのことなので、他人に心配してもらうことは無いですよ」
「えぇ~?なんかこわぁい…リケジョって陰湿なんだぁ、熊倉さんも、こうやっていつも詰められてるのかなぁ、可哀想…」
むしろ理詰めにされているのは私の方なのだが、怒りたくなくてスルーした。これ以上、私たちの情報を茂木に与えてやることもないだろうし。
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