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2月・勇者は大切ない
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しおりを挟む「ごめ、ん…ヒナちゃん……ごめん……」
さっと身を引いた嘉島は土下座にも似た格好で陽菜子の足元に蹲り、汗ばんだ額をシーツへ付けてただただ詫びる。
「本当にDV野郎ですよ……あー…すごい……こんな…感じなんですね…ぴくぴくして……あ、健一さん…あ、垂れて…あ…動けな…」
「は……いい眺めだなァ…精液で汚れた奥さん…はは…俺の奥さん…エロい…」
「エッチなのは健さんですよ……もう…」
膝立ちになった陽菜子は内腿に伝う白濁を見下ろし、拭いて欲しいと男へ視線を送りティッシュを取らせた。
そして嘉島は白い腿に手を添えて自ら排泄したその白濁をちょんちょんとティッシュに吸わせて陽菜子へ向き直る。
「ごめん、あのー……最低なことをした。言うことを聞かせたいって……すごく上からになった。改める」
「いいです…殴られたりしたら通報しますし…ケンカですよね、まぁ…貸しですよ。本当に…これ以上の暴虐は許せません」
「殴らない、それは絶対しない……でもイライラしてると荒々しく抱くのはあるかも……ごめん、だから寝室は別にしよう、本気で言ってる」
痛切に諭す嘉島の眉間にはまだ苛立ちの縦筋がうっすら残っていて、反論しようものなら再びその溝が濃く深くなることは明らかだった。
「あのぅ、個々の部屋に拘るんじゃなくて、私のベッドこの部屋に入れちゃダメですか?」
「は……は?」
「シングルとダブル、くっ付けて…あ、壁沿いに付けて真ん中に通路を作ってもいいです、それなら歩くのも問題ないですし…」
8畳間にベッドが2つ、間取り的には出来なくはないが想像しただけでも圧迫感がある。
「珍しいやり方ではないです。ミライさんの…守谷チーフのところは6畳にベッド2台だって言われてました!」
「守谷くんは体大きいし…あそこは子供もいるからだろ」
「でもぉ!……ダメですか?エッチしたら自分のベッドに戻りますから…同じ部屋で寝たいんです、お願いします…」
さっぱりしているようで譲れない拘りは強く、陽菜子は目を伏せて懇願して見せた。
シーツについた指先は小さく震え、しゃくり上げるように細い肩が上下しだすと嘉島はたちまち罪悪感に苛まれる。
「いや…泣くなよ…分かったよ…分かった、同室な、もー…」
「やった、ありがとうございます♡」
「あ?」
明るく顔を上げた彼女はニッコリと美しく笑み、呆然とする主人に向かってあろうことか舌を出して目尻を下げた。
「あの、年下だからってナチュラルに何でも言うこと聞くと思わないで下さいね、意見は言いますし暴力は容赦なく通報しますし、最悪職場で言いふらして社会的に抹」
「分かったよ、恐いな!」
「はー…あの……荒々しい健さんも好きですけど、やっぱり優しくシて下さる方が好きです。…どうしても、その…イライラとかぶつけたい時はまず相談して下さると助かります」
初めての喧嘩らしい喧嘩に陽菜子は正直恐怖を覚えた。
好いた相手とはいえレイプまがいのセックスは許されるものではない。
慕っているし尽くすつもりもあるが、無条件で従うわけではない…これからも何度か言い争いはありそうだ。
「ぶつけたいって気はないんだけど……うん、ごめん」
「痛いのは嫌ですけど、頑張れることは頑張りますから」
「俺、そんな酷いことしないよ」
でも縛ったりはするかも、降って湧いた若い伴侶、まだまだシてみたいことは沢山ある。
「あの、もう大丈夫ですか?ズボン、履いても…」
「あ、ごめん…着て、家具屋………来るまで………あ、ヒナちゃん、血、血出てる!」
「え、あ…本当だ…健さん、見て、乱暴にしたから生理が早く来ちゃった」
初めての夜の時よりも鮮やかな色の血、陽菜子の尻の下のシーツと内腿にじっとり経血が垂れていた。
「うそ、ごめん、なんか破裂とかそういう…」
「冗談です、まぁ刺激されたんでしょうけど…激しくなさるから…」
「ごめ、あー…服まで、ごめん、」
「責任とって下さいねー…」
「取る、取るよ…風呂、ヒナちゃん風呂…」
それから嘉島は家具屋が来るまでにシーツを片付けてスペースを確保し、彼の寝室には無事新しいベッドが追加された。
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