僕たちが幸せを知るのに

あかね

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Capitolo11…Vecchiaia

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「先生、帰りましょう」

 大学卒業から丸5年、つまりは勤め始めて6年目の春。

 新しい裸像のお披露目式が済んで帰る車内はなごやかな雰囲気だった。

「えぇ」

「いい式でしたね。布を剥がした後のflashフラッシュ、相変わらず快感です」

「ふふ、裸を披露するのに快感だなんて…ラッセルくんは変態ねぇ」

「それを作った先生に言われたくありません、出しますね」


 とある富豪のお庭の噴水の中に置かれたは堂々と仁王立ちを決めていて…脳天とモノの先からぴゅうと水が出るよう悪趣味ギミックも取り入れて、依頼の時点で僕はもう何度白目になったか分からない。

 先生は発注が来てからそれはそれは楽しそうで、普段は絡まない造園技師さんや塗料メーカーさんと話をしたり、イメージを掴むために実際に僕を噴水に立たせたり皆の前で脱がせようとしたりやりたい放題だった。

 そして満足のいく作品が出来上がり無事納品、先生は喜ぶ依頼者から出されたシャンパンを断りきれずひと口呑んで顔を真っ赤にして、僕の助け無しでは歩けないくらいに酩酊めいていしてしまった。


「ん~気分良いわ~、ふわふわ飛んでるみたい」

「乗り心地は良いでしょうね」

「ラッセルくんの運転が上手なのね」

「恐れ入ります」

 先生は今や彫刻の権威…とまではいかないけど、国内の現代彫刻作家の代表のひとりに数えられるくらいには名が売れている。

 おかげさまで実入りも増えたし送迎用の自動車も新調できて万々歳だ。

 後部座席の革のリクライニングシートで「わーい」と遊ぶ先生をミラーで確認しつつアトリエ兼自宅マンションへと送り届けた。
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