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2010…母親学級バトル
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そして
「子供の世話してると洗い易い服が重宝しますよね。色もサイズも豊富だから俺もお揃い出来て楽しいですわ」
とペアルックに関しても「余計なお世話だ」と釘を刺した。
「美容院なんかもマメに行かせてやりたいですけど本人が遠慮するんでね。でも不潔じゃないし見ての通り肌もツルツルでね、可愛らしいでしょう。大変な時期ですけどカリカリして人に当たり散らすよりね、ニコニコ笑ってるのが一番のお洒落ですよ、なんちゃってね」
「浩史くんったらぁ」
湯本さんはぐぬぬと小鼻をヒクつかせて、しかし何がそんなにイラつくのだろう、まだ噛みつこうと口を開く。
「…上の子がまだ1歳でしょう?歳の差が詰まってると大変よね、うちはきちんと考えますわ」
「そうっすか」
「考えが足りないのかしら、ぽこぽこ作って動物じゃあるまいし」
「はぁ」
俺は詳しく知らないが、今ここに居る看護師さんや助産師さんも2人以上の子持ちである可能性を湯本さんは考えてないようだ。俺と美晴を貶すために対象の大きい話をして知らず知らず敵を作るなんて愚かな奴。
もう遠慮しなくても良いだろうね、かーくんも寝たことだし耳を塞ぐ必要も無い。
俺は立ち上がりキッズコーナーのマットへスヤスヤ状態のかーくんを寝かし、
「そうっすねぇ、うちの嫁さん、魅力的なんでついつい無計画に奮っちゃいましたわ」
とパイプ椅子を美晴の隣へぴっちり寄せてその肩をキツく抱いた。
「浩史くん?」
「いやぁ、ただでさえ嫁が可愛くて夫はセックスしたいもんでしょう?産後の生理の再開があんな早いと思わないんでね、構わずナマで抱いてたらこのザマですよ。でも本能かな、俺の子をもっと産みたいから体が早く回復したのかなぁ?美晴、」
「きゃ、やだぁ……そうなのかな?」
これは自虐だ、相手を攻撃してる訳ではない。むしろ俺の尊厳と品格は著しく降下して地を這っているから誰も損はしていないだろう。
まぁこんなオッサンから下品な話を聞かされる看護師さんたちには申し訳ないとは思うが。
「おたくは、湯本さんはどうなんです?産後はいつからセックスを再開する予定ですか?」
「な、な…失礼よっ」
「あんたこそ、人ん家の家族計画に口出す方がよっぽど失礼だろうが。美晴の見た目のこともそうだけどよ、自分がされて嫌なことを人にすんじゃねぇよ……まぁうちは無計画なんだけどよ、ふはは」
美晴の顔を覗き込めば釣られて笑い出す。
絵に描いたようなハッピーファミリーを見せつけてやると、湯本さんは顔を真っ赤にして机をバァンと叩いた。
「み、港さんのくせに、生意気よ!」
そしてそのまま部屋を後にしてしまい、看護師さんが慌てて湯本さんのバッグを掴み追いかけて行った。
呆気に取られた俺たちは、互いに顔を見合わせる。
「……美晴、湯本さんさ、同級生か何かなんじゃねぇの?」
「そうなのかな…」
「だって『港さん』って言ってたぞ」
美晴の旧姓は『港』である。出身は静岡県だが越境して神奈川県の私立高校に通っていたので、ここらに学生時代の知り合いがいても不思議は無い。
助産師さんに湯本さんの下の名前を尋ねて教えてもらうも美晴はぴんと来ず、俺は「すんませんね、変な空気にしちゃって」とかなり謝った。
会自体は終わりかけだったし湯本さんの発言にもかなり問題はあったし、しばらく会うことも無いだろうからと許してもらえた。
そしてその助産師さんも年子の子持ちだそうで、「大変だろうけど頑張ってね」と親身なエールを貰い美晴はパァと明るい顔で帰ることができた。
・
その後…美晴の実家に眠る高校の卒業アルバムをお義兄さんに見てもらったところ、おそらく湯本さんだろうという女学生の存在が確認できた。
「…3年で同じクラスだったみたいだな、憶えてねぇってマジかよ」
「んー…苗字も違うし、お化粧とかしてたら分かんないな…」
「虐められたりした?」
「した、のかな…私、鈍いから気付いてなかったかも…」
美晴の記憶には何となく嫌味を言われたり学力で張り合われたりという朧げなものしか残っておらず、そのぼんやり具合が向こうからしたら悔しかったのかなと…そう推理する。
「痛いことされたりとか」
「…模試結果、グシャグシャにされたり…志望大学をしつこく聞かれたくらいかな。結局私、大学は行かなかったけど」
「結構なことされてんじゃん…ホワホワした美晴に学力で負けてて敵対心が爆発しちゃったのかねぇ?そんで子供も2人目ときて先を越されたと焦った、とか?」
「どうなんだろ…湯本さんが旦那さんと幸せならそれで良いじゃんね」
「そだな」
その後妊婦健診に何度か付き添う機会はあったが、産院側が配慮してくれたのか湯本さんとバッティングすることはついに無かった。
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