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しおりを挟む「いつもね、照れ臭そうにひと月分のごはん抱えてね、おやつもオモチャもすごい時間かけて選んで…お父さんも『息子が買って帰ってくれるんだ』って言ってらしたし、会員証の名前でカシャちゃんと繋がった感じかな」
「ほう」
「それで…仕事終わって帰ろうと思ったら店に玲二くんが居るの見えて…プライベートなら良いかなって、首輪掴んでつい声掛けちゃった。あの…カシャちゃんが亡くなってから、うちに用事が無いから来てくれなくなったじゃない?それで…あ、会いたかったから」
うちの職場の従業員駐車場とペットショップの裏口は5メートル幅ほどの車道を挟んで隣接している。
俺は駐車場から徒歩でペットショップへ買い物に来ていたから、その出入りなんかはそちらから見えていたのかもしれない。
店の裏側には洗い場があって、そこで犬猫を洗う様子がフェンス越しに感じ取れることはあった。
知らず知らずのうちに俺は見つめられていたのかな…そこまで想像するのは自意識過剰だろうか。
「なんで?」
「え?」
「だから、たまに店で買い物するだけなのに、なんで俺に会いたいとか思えるの」
「…そ、そんなの…説明できないよ、好きになっちゃったんだもん」
「はぁ」
「あたし、小さい頃から店のお手伝いしてて、たまに来るお兄さんくらいの認識だったよ、でも顔を覚えて、買う物を覚えて…気になり始めたの。表向きは嫌そうに買って行くけど、会計終わったら笑ってたし。本当はカシャちゃんのこと大事にしてるんだろうなって…玲二くんが店に来るのが楽しみになってたの」
なるほど積み重ねた想いか、恋に落ちるのに合理的な説明なんて余程の語彙力でもなければ難しいか。
しかしやり方が間違っている。
「……それ、そのまま伝えてくれりゃ良かったんじゃないの?」
と見つめれば
「…心が弱ってる人につけ込むようなこと…気が引けて」
と彼女は今さら人の道を歩もうとする。
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