お嬢の番犬 ブルー

あかね

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 世話役に付いてからは垣内かいちも他の使用人と同様に本宅の離れに部屋をもらっている。

 和久わくと別れやれやれと背中をいつもに増して丸くして離れの自室へ戻ると、ドアの前ではみやびがちょこんと座っていた。

「お嬢、何してん、こんな所来たらあかんよ」

「うん…ごめんね……怒られた?」

「ええのよ、俺の仕事やし…ちょっとカッとなりすぎたんは良くなかったしな。お嬢もビビらしてもうて…すまんかった」

垣内は縁側の掃き出し窓を開けて、そこに数足置いてあったサンダルを履いて庭に出る。

 雅は黙ってそれにならった。


「あの、うちのために動いてくれてありがとう…」

「当然のことよ、義務やから……」

使命でも仕事でもない、垣内が彼女を守る理由はそれなのだ。

 そしてその役目として、和久と話し合った案件をついに切り出す。

「それよりお嬢、あー、……放課後な、最近帰り遅いやんか、学校で何や……変な事シてるやろ」

 庭から表の道へ抜ける小さな門のついた垣根の前まで歩いて、垣内は振り返りそう尋ねれば、

「し、てへんよ…」

と明らかに普段と違う顔つきをしてまた胸元を押さえ、彼女が慌てふためく。


「そこ、何やあんの?ここ…」

 垣内は自身の左の鎖骨の辺りをトントンと指で叩き、

「キスマークか?」

と小学生には早過ぎる単語を出して主人の顔を背けさせた。

 帰宅して着替える際に付き人のミユキにチェックしてもらって報告を受けていたのだ、垣内は雅の反応を見て確信しため息を吐く。
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