枯れかけのサキュバス

あかね

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10月・展開のサキュバス

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「ひあっ、もう、や、抜いてっ…やだ……ここ、にっ、当てる、のっ」

「うん、当てて、ナニするの?」

「あっ、ひとり……エッチ…すんの!もぉ…や…」

普段からセックスセックスと恥ずかしげもなく口にする唯から、「エッチ」という単語を聞けたことに葉山はどうしようもなく高揚する。

「は♡じゃあユイさんは、僕が帰ってくるまでの時間に、洗濯物を片付けて、アロマ焚いて…切なくなってひとりでしちゃってたところにチャイムが鳴ったわけだ。合ってる?」

 唯はコクコクと頷き倒し、

「そう…で?イケた?途中だったかな?」

そう尋ねたら葉山は指を抜き、彼女のショーツを直して両手でその腰を抱いた。

「…ぃけた……もう離して…」

「ユイさん、顔…見せてよ」

「いやや…」

「乱暴してすみません、本当に浮気の可能性も捨てきれなくて。ね、赤くなった顔見せて下さいよ」

葉山はサッと腕を腰から離し、ふらついた唯の両手首を手錠の様に再び捕まえて、自身の顔の前へ引き寄せる。

「阿呆……見んな…」

上唇を噛み、潤んだ瞳に紅潮した頬、眉毛以外の化粧をしていないあどけない少女の様な姿。

 ちなみに幾度もお泊まりをしていても、未だ唯は素顔をじっくり見せてはくれない。

 朝はシフトに関わらず先にベッドから出て、休みの日でもアイブロウで眉を整えてしまうのだ。

 寝る前も軽くパウダーを乗せるし、セックスすると分かっている夜だとしっかり描いている。

 もっとも、抱いた後は擦れて化粧が落ちていることもあるし、葉山は唯が寝た後・起床前にこっそりその寝顔を観察するので、素顔を知らないわけではない。

 だが、自分を強く見せる最後の鎧、それを取り払って唯が自分から見せてくれる日を心待ちにしている。

「かわいい、ユイさん。恥ずかしかったね、ね、」

「離せ、もうっ…」

顔をぶんぶんと逸らして逃げる唯の唇を葉山は同じ唇で捕まえ、下唇をもちもちと優しくみ、ゼロ距離で囁く。

「ゆいはん、ね、どんなこと考えてヒてたの?」

「関係無いやんか…」

「んっ…僕やないんですか?そら問題や…実演して貰いましょうかぁ」

まだつれない対応に葉山は痺れを切らし、唇を離しておでこをコツンと合わせて圧を掛けた。

「……」

「嘘ですよ、すみません、虐めすぎました。子供みたいな顔するから可愛くて♡」

 いよいよ泣きそうになる直前で葉山は立ち上がり、

「ひどい…」

と恨み言を吐く唯を強く抱き締める。

「ごめんなさい…ねえユイさん、ひとつだけ。これだけ教えてくれたらもう追求しません……一度でも、僕を考えながらシてくれました?」

「……」

耳の後ろから聞こえる自信のなさそうな問いかけに、頷いても伝わらなさそうなので唯は「うん…」と言葉を以て答えた。

「そうですか…良かった♡ねぇ、今日も僕でしたか?」

「………そうやっ…」

「嬉しいなぁ♡僕の帰りを待たれへんかった?はしたないユイちゃん♡ねぇ、恥ずかしついでに『僕をおかずにひとりエッチしました』って言うてくれません?」

また言葉を崩し、そのお願いはやはりここで増長する。

 何度も同じ目に遭ってきたのに回避できないのは何故なのか。

「嫌や、離せ…」

「離しません、顔が見えてないからいいでしょう?言うて、ユイちゃん♡誰で、シたん?」

「~~~、龍ちゃん!」

「僕で、ナニを?」

「ひとり、えっち…」

「うん、想像だけ?それとも部屋着とか使った?」

「……パジャマ…」

「あー、それで転がって…ふふ♡もう1回、誰で?」

「むかつく………龍ちゃん!龍ちゃんのこと考えながらシた!もうええやろ!」

唯の顔はもう染める余地の無いほど耳まで赤く、葉山は頬骨でその温度を感じ取りスリスリと顔を擦り付ける。

「はぁ♡早く帰ったからホテル行こうと思ったけど、今夜はここでユイさんを抱く方が燃えますね。ごはん、食べましょうか。それとも、先にシますか?」

 葉山が体を離し、唯の手の中のローターを見下ろして意地悪そうに提案するので、唯はサッと背中を向け、ポケットに再度仕舞い込み先に寝室を出た。

「…疲れた…ごはん…」

「はい。…抜け駆けするからですよ、ふふ」

 ゆっくり追いかけてくる葉山に向き直り、唯はまだ赤い顔で睨みつける。

「覚えとれよ、お前も…実演さすからな…」

「あー、やだ怖い♡」

 おどけて見せるものの、次の排卵日辺りにマジでこの人はするだろうと、少し後悔する葉山であった。
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