跳ね馬の恩返し—元ヤン娘は商店街の華になる

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　夜、和樹は真綾の家の近くまで迎えに行き、助手席に乗せて少し流すことにした。

「今日、角田に会って来たよ」

「…ど、どうだった？」

真綾はドキドキと胸を押さえて運転席を窺う。

「真綾に会いに来るな、来たら怒るよ～って話つけたよ」

「…それだけで、大丈夫なのかな」

「書面も交わしたし…彼女と別れて、寂しいところに真綾のバイクの目撃情報が入って、ヨリ戻せるかもって思ったみたいだな。んで、偵察も兼ねて商店街を暴走してたと」

「なにそれ、迷惑だし…私、ナメられてる」

真綾はプンプンと、腕組みして唇を尖らせた。

「……」

　舐められるくらい、当時は溺愛していたのだろう。

　何をしても許してくれる女だと、角田は安心しきり油断していたのだろう。

　全幅の信頼を置かれてる今、和樹は角田の気持ちが少し分かる。

　何をしたって真綾は逃げていかないだろうと、傲おごりが出そうになる。

　庇護ひご欲を刺激して満たしてくれて、変な優越感が前面に出そうになる。

　もしかしたら既に体現しているかもしれない、なにせ金銭を肩代わりしてしまったのだし。


「…これで私、和樹くんのものだよね？」

「ん？んー…そうだな…俺が貰い受けた、って感じかな」

「え？私、物じゃないよー」

「うん…まぁ、親御さんにもその辺り話そうかな」

「…うん？」

　不思議そうな顔の真綾を乗せて線路を跨ぎ、ぐるっと最低限のドライブをしてから車を白銀家へと着ける。