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しおりを挟む「…これは早めに支払って縁を切ろう、振り込みで良いのか、ちょっと通帳を」
「お父さん、待って下さい。こちらを」
和樹は妻へ目配せする真綾父を制して、新たな書類をめくる。
「これは…」
「領収書の控えです。それから納品書、受領証の控え、ですね。そしてそれを受けての宣誓書、です……すみません、結論から説明すると話が進まないかと思ったので…順番に出しました」
「……萩原くん、1束も立て替えたのか⁉︎」
お堅めの職に就いているらしい真綾父は立ち上がりかけてヘナっと座り込み、脱力してしまった。
和樹の仕事は伝えているし、大盤振る舞いできるほど儲けてないことは予測できる。
それが恋人のためとはいえ大金を渡してしまうことに、実は気前の良さよりも思慮の浅さも感じていた。
「待ってくれ…萩原くん、ここまでしてくれなくても…」
自身の娘の愚かさを棚に上げて、大金を請求されるままに支払ってしまう、和樹もヤバい男だと感じたのだ。
そしてまさかそれを盾に真綾を好きにされるのでは、とことん男運が無いなんて妄想も膨らんでいた。
「(お父さん、俺のこともヤベーと思ってそうな目だな…分かりますとも、俺だって自覚あります)」
和樹は父を安心させようと、一層背筋を正して口を開く。
「…僕も一応、商売をしてますので、お金の大切さは分かっているつもりです。角田もこれが大金だと自覚していて、請求すれば真綾さんの痛手になることを予想していました」
「……」
「請求しない代わりに真綾さんとヨリを戻したいと、望んでいたので…僕が支払うことにしました。角田には、真綾さんがお金を出したと伝えてあります。頑張って捻出したと言いました。それだけのことをしても、角田の元に戻る気は無い、とハッキリ伝えました」
「しかし萩原くん…交渉から支払いまですぐじゃなかったろう?ひと言、相談してくれれば私だって…それに、こんなことを言ってはバチが当たるが、交際して間も無い恋人のためにこの額を出すのは…ちょっと、君も普通じゃないぞ」
ごもっとも、と和樹は頷く。
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