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しおりを挟むそして…二人が結ばれてからひと月ほど経った頃、なんと角田から和樹へ電話が入った。
代理人として連絡を取った時に電話番号は教えており、そのままにしておいたのだ。
内容は「バイク代を貰い過ぎていたので返したい。ついてはあの書類も書き直して欲しい」とのことだった。
「…角田さんがバイクを購入した金額は、おいくらで?」
『…は、80万。正確には、78万と4500円だった。中古だったから』
「そうでしたか…承知しました、新しい書類をお持ちしますね…ところで、どうして今なんですか?結構時間が経ちましたけど」
『…バイク買った時の、控えとか探してたんだ。通帳に履歴が残ってたから間違いねぇよ』
「そうでしたか、新車価格ではないと最初から分かってた訳ですね」
『…だから、貰い過ぎて恐くなっちまったんだよ!差額は返す、税金関係もややこしいことは分かんねぇからよ…それで良いんだろ?』
「まぁ、そうですね…では、お伺いしますね」
和樹はまた角田の会社に電車と徒歩で出向き、先日と同じように書類を書かせてバイク代の差額を預かった。
角田はとても安心した様子で、おそらく脱税やら逮捕やら何やらの不安を抱いていたようだ。
「では、こちら控えですね…では」
もう会わないだろう、気の利いたことでも言えれば気分が良いのだが和樹は何もしなかった。
角田にとって自分は「真綾の代理人」であって、真綾の婚約者だとバレると和樹を辿って真綾の居場所諸々が知られてしまう。
角田も何も言わず、和樹は静かに角田の元を去る。
それから和樹は家に帰る前に真綾の父へ連絡を入れて、外で待ち合わせることにした。
「お父さん、これがお伝えした新たな書類の控えです」
喫茶店で和樹はファイルを差し出し、真綾父はさらっと確認してバッグへ収める。
「うん、分かった…まぁあれだね、差額分は和樹くんの代理人としての報酬にしたら良いんじゃない?」
「元々が僕の金なんですけどね」
「…真綾には、言うの?」
「いえ、言わずにいようかなと」
「多めに返済させるの?悪い男だねぇ~」
冷やかす義父、人目もあるので和樹はワタワタと口を閉じるようジェスチャーした。
「すみません…僕の覚悟が、勝手に値下げされるのは嫌な感じがしたので」
「そうだね、あの金額を出すにも気を揉んだだろうしね」
「…はい。真綾さんの返済額が本来の金額に達したら、その時には伝えようと思ってます。もう良いよって…だからこれは、僕とお父さんとの秘密ってことで」
「うん…よろしくね、和樹くん」
男同士の熱い握手を交わし、和樹は商店街の自宅へと帰った。
つづく
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