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趣味が理解できない

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 彼は会社の上司で、5歳上の30歳だ。

 そこそこイケメンで面倒見が良くて、見初められてガッツポーズを決めたものだが…ハズレだったようだ。

 まだ挽回できるだろうか、余地はあるだろうか。

 その手帳の使い道を知るまでは、せめて監視しよう。


「……正常位、フィニッシュは外で…うん、できた」

「…主任、あの、それ…」

「記録だよ、僕の宝物。歴代の彼女とのセックス記録」

彼は誇らしげにニンマリ笑う。

 この笑顔がさっきまでカッコよかったのに、今では不気味で気色悪い。

「…その記録、どうするんですか?」

「どうって?」

「こ、公開したりとか」

「あー、しないしない。もったいないよ」

 私が心配しているのは広めることの危険性であって、情報自体の価値暴落ではない。

 けれど彼は手帳をぱたんと閉じて、サイドテーブルに大切そうに置いた。

「何人くらい…記録があるんですか?」

「そんなにだよ、もうすぐ3桁かな」

 私と別れてもないのに、もう次の被験者を見越している。

 モラルもクソもあったもんじゃない、なぜ事前に分からなかったのか不思議だ。

 いや、顔とスマートな振る舞いに盲信的になっていたのだろうな…過去の自分を懇々と説得してやりたい。
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