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趣味が理解できない

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 終わるんだ、短い恋だった。

 腑に落ちないというか解せないというか、もう好意は無いのだがモヤモヤが募る。

 変態のひと言で済ませるには、美しい恋だったのがしんどい。

 キラキラOLのドキドキオフィスラブみたいな感じだったじゃん、浮ついていた自分が可哀想で居た堪れない。

 都合の良い関係にもなれない、請われてもならないけど貶されたのが腹立たしい。


 そうだ、怒っても良いんだ。

 趣味は個人の自由だけれど、目の前で書いて私を刺激するようなことをしなくたって良いじゃないか。

 呆気に取られ鈍くなっていたが、よくよく考えれば私にだって怒る権利と自由があるのだ。

 名誉のためにビンタしても許されるんじゃないの、それで痛み分けにならないかしら。

 私の心が傷付いた代わりに、せめて頬を張るくらい許されるんじゃないの。

「……」

「忘れ物、無いか…な…」

ふつふつと沸いた怒りは顔にも表れて、彼は少し気まずそうに口籠った。

 公表しない証は貰ったけれど、私が彼の趣味を明かさないという念は取っていない。

 あくまで弱者だと決め付けられた私は、抵抗もせず引き下がると舐められている。

 どうにかギャフンと言わせられないか、上着を羽織って眉間に皺を寄せた。

「……」

「大丈夫?」

「大丈夫ではないです。ムカつくし…名誉を傷付けられました。私の目の前で私を批評するのは、私に対する侮辱です。じわじわと怒りが込み上げてます…ムカつく、ムカつく!」

「ど、どうしたの。さっきは納得してたじゃない」

「あまりの事に呆然としてしまってたんです。よくよく考えたらおかしいし…バカにしやがって、バカにしやがってえ‼︎」


 暴れたって力では勝てない。

 でも侮られてすごすご帰るなんてできない。

 大人しい私だって、キレたらそれなりに取り乱すし物分かり良くなんていられない。

 この怒りを何かにぶつけねばやってられない、私は大きな枕を掴んで振り回した。
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