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「落ち着いたか、ミサ、とりあえずリビングに戻ろう」

ミサの嗚咽が止んだ頃、俺はそう言って彼女を抱き上げた。

 もう豚丼の素はぐずぐずに煮えているだろうか、それはそれでアリだろうか。


 ソファーに掛けて、ミサはおそらく先ほど喋っていたことを繰り返し教えてくれた。

「嫌なの、自分の母性を感じられないところも、女としての仕事が出来ないことも、赤ちゃんデキてないって分かって、喜んじゃった自分も嫌なの、でも、成昭さんとエッチするの、辞めらんない、だらしない自分も嫌、」

「うん…」

「もし、もし陽性だったら、ちょっと喜んでた、でも陰性で、『よかった』とか言っちゃって、もぉ、私、人間としてどうなの、」

「お互いさまだ、ミサ。俺は自分で判断できねぇからミサに任せた。意志を尊重するって言えば聞こえは良いけどよ、結局は逃げたんだ…でも完全な避妊をするかって言われたら、それは出来ねぇ。ミサとシたいから」


 俺たちはだらしなくていい加減でダメ人間だ。

 子供が欲しくないのに自制も出来ないクズだ。

 それをお互いに分かってて、その馬鹿さを気に入ってたりするのだが。


「ミサ、メシにしよう。食べて、頭働かそうぜ」

「うん…そういやこの1週間、まともに食べてないの」

「ばか、食えよ…んで、病院とか調べようぜ」

「うん…お腹すいた」
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