8 / 8
私は三次元に生きているので
7(最終話)
しおりを挟むそしてさらに数日後…私のアパートに段ボールの荷物が届いた。
送り主は彼で、元払いだったし私物の返却かと思い受け取ってしまった。
「……うわ、推しじゃん」
箱の中身は彼が推していたヴァーチャルアイドルのグッズで、見覚えのあるものがギュッと詰め込まれている。
「これを私にどうしろと?」
はてと考えていると、箱のフタ部分にマジックでメッセージが書かれていることに気付く。
『うちにあると親に捨てられてしまう。ポムの家で可愛がってあげてほしい。一緒に応援できる日が待ち遠しいよ!』
「…全然分かってねぇ~‼︎」
もうどうしようもないな、速攻でフタをして粘着テープで封をした。
「…さて」
今後同じようなことがあれば受け取り拒否するとして、この荷物を捨てたり売ったりしたら罪に問われるのだろうか。
他者を介入させるのも気が引けたし、彼の家…つまりは実家に送り返すことにした。
箱の側面には分かるように
『趣味の押し付けは困ります。私はこの二次元アイドルを推してません。』
と書いて、コンビニで発送手続きをしてもらった。
送料はもちろん着払い、受付をしてくれた店員さんはメッセージを見て目を丸くしていた。
なお、送り伝票の品名欄にも『二次元嫁(雑貨)』と解釈が分かれそうなワードを記しておいた。
オタク差別って言われちゃうかな、でも間違ったことは書いていないはず。
もう言葉も通じなくなった元彼が哀れで、怒りはあまり感じない。
一緒に楽しめる趣味があっても無くても、あの人とは長くなかった気もする。
「…引っ越しますかねぇ」
通勤に困らない範囲で今と反対側の地区に越してみようかな。
コンビニの出口に置いてあった住宅情報誌を一部取って、晴れた空を見上げた。
おわり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる