私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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明石あかし市まで出てもいいし、神戸こうべとかもいいよね、オシャレなのかな、半日じゃ足りないかな……源ちゃん、聞いてる?」
「うん、聞いてる」
ふにゃふにゃのうどんをすすりつつ、源ちゃんは目線だけこちらへくれて体勢を変えようとはしない。
 壁際の物書き用の椅子と反対側の壁に頭側を付けてあるベッドの枕元、同じ室内なのに3メートルくらいは離れている。私には不便で、立ち上がりベッドへ座ろうとすれば源ちゃんはうどんを咥えたまま手で制止した。
「なに?」
あっえ待って、」
「…食べ終わったら見てくれるの?」
「うん、んー……あんまり、近付かないで」
「はァ?なんで、汗臭い?」
私はくんくんと肘の匂いを嗅ぐ。
 うどんをゴクンと飲み込んだ源ちゃんは嫌そうに、
「僕は気持ちをモモちゃんに伝えちゃったから。あんまり近付くと恥ずかしいから」
と口をへの字に曲げた。
「………なにそれ、明日も明後日も観光するんだよ?そんなこと言うならなんで初日に言っちゃうの⁉︎」
「言いたかったから言ったんだよ。でも予想以上に恥ずかしい。目的地に歩くのは平気なんだけどね、密室に二人きりだとどうにも恥ずかしいよ」
 壁に目線を逃してつゆを飲んで、「ごちそうさま」と彼はポリ袋にカップと割り箸を入れる。

「…源ちゃん…私…どうしたらいいの?何か答えを出さなきゃダメ?」
「出さなくていいよ、一緒に居たくなければ離れればいいし。言ったじゃん、僕が勝手に好きなんだ…これまで通りだよ」
「そうは言うけどォ」
「…迫っても勝てないしね」
おやつの魚肉ソーセージを開けた源ちゃんは、もぐもぐ噛みながら流し目で私を見て口の端で笑った。
「…私、そんなに力強くないし」
「違うよ、泣かれたら僕弱いんだ。モモちゃんに嫌がられたら僕が泣いちゃうよ」
「そう」
「でもあんまり近付くと…」
「近付くと?」
「触りたくなっちゃう、だから距離は保ちたい」
 ひとつの部屋にベッドがひとつ、そこに若い男女が一組。何が起こっても不思議は無いこの状況と彼の言葉に私の頭がやっと追いついて、じわじわと頬が熱くなってくる。
「さわ、り、」
「触りたいよ、僕は男だし。モモちゃんのこと好きだし」
「あばば」
「でもまだ早い。モモちゃんのお母さんもおじいちゃんも僕を信用してくれてるからこうして二人で旅行できてるんだ…勢いに負けて信用を失くすようなこと、絶対できないんだ」
 そこまで言うと源ちゃんもスマートフォンを開き、
「明日は神戸、明後日は明石とかでどうかな。電車は全部鈍行どんこうで。お金は無いけど時間があるんだ、楽しもう」
と歯を見せた。
「…行きたい所、ピックアップするね……源ちゃん、歯にネギ付いてる」
「ありゃ」
「ふふっ」
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