3 / 10
恋愛もの
191025【王子様】目を奪われて、春
しおりを挟む
それは一瞬の出来事で
資料室で私を助けてくれた姿はまさしく王子様で
私は何もできなくなって
ただ、彼に見惚れていた。
《目を奪われて、春》
「はぁ?」
放課後の教室で、幼馴染の呆れた声が響く。
目の前で頬杖をつく幼馴染は「あいつのどこが王子様だよ」と一蹴して。
「あいつ無口で生意気で冷めた後輩なんだぞ」
そう悪態をつく幼馴染は、部活が同じなその後輩の話を私によくしていた。
だから、なんとなく知っていた。
確かに幼馴染の言うとおり、生意気で鼻につく喋り方をしたその後輩は
確かに世間一般でイメージされる王子様とは大分違う。
だけど、私にとっては王子様だった。
「王子様ってのは、華やかで気品や人気があるようなやつのことだろ」
「ふーるい! その概念は古すぎるよ。時代遅れだよ。今時どんな人でも誰かの王子様だよ!!」
「誰でもなれんのかよ」
幼馴染が「わけがわかんねえ」とげんなりした顔をする。
半分勢いで適当なこと言ってるんだから、私だってよくわからない。
事の発端はこの前の週番。
資料室に道具を取って来るよう任された私は
大して背もないのに横着をして高いところにある教材をひっくり返して落っことし
危うく模造紙に襲われるところというところを
「大丈夫ですか」と後ろから冷静にキャッチしてくれたのがその後輩で
見上げた視界に入ったその顔は、とてもキラキラと輝いていてバックでお花が咲いてるようにすら見えて。
それから今日の昼休み。
幼馴染への用事でやってきた後輩についでに声をかけられて、ドギマギと返事をして
それを見ていた幼馴染が怪訝な顔で問い詰めてきたのがSHR前。
そして、経緯を聞いた幼馴染がつまらなさそうな顔をしているのが今。
「てか颯爽と助けてくれたっつーから全身で庇ったとかかと思ったら、ただ教材キャッチしただけかよ」
「違う!!」
バンっと机を叩く。
そりゃあ確かにちょっと手が伸びてきて、声をかけられただけ。
庇ってもらったとは確かに違う。
でもすごく綺麗だったんだ。
淡々と冷めた顔をして、言い方だって冷たくて、なのに言葉は優しいその後輩が
全力でキラキラしてたんだ。
「あの輝きはまさしく王子様なの!!」
「資料室の電気つけてないから逆光差してただけじゃね?」
「あとほら、そのあと模造紙も戻してくれたし」
「普通だろ」
深いため息をつかれる。
そんなに眉間にシワを寄せなくてもいいのに。
「どんな楽しい話かと思ったら、めちゃくちゃつまんねえ」
「ひっど!! 勝手に期待しといてひっど!!」
「だってあいつだぞ? もっと王子様っぽいのいるだろ。生徒会長とか」
確かに、今の生徒会長はめちゃくちゃ王子様っぽいけれど。
そういえば入学当時、迷子になってたの助けてもらったけど、別に何も気にならなかったな。
「何故か生徒会長には何もときめかないんだよね」
「お前のポイントがマジでよくわかんねえ」
「あんたにわかってもらわなくてもいいもーん」
確かに幼馴染の好きな人はすごくわかりやすい。
こんな子誰でも好きになるよねって感じの女の子だ。
でもだからって、私までそれを求めるのはどうかと思うのだ。
蛙や熊が王子様なんて、最初は誰も思わないんだし。
その人が私にとって王子様ならそれで良いではないか。
「単にあんたの感性が普通すぎるんじゃなーい?」
「普通で何が悪いんだよ!」
「世界をもっと広く持とうよ」
「単にお前の好みが変なだけだろ」
「価値観せまーい」
じとっと見ると文句ありげに「っていうかなぁ」と睨まれる。
思わずひるんだように「何よ」と返すと、びしっと人差し指を突きつけられた。
「いつもと違うお前が気持ち悪い!」
「しょ、しょうがないでしょ!? 初恋なんだから!!」
「初恋!? おっそ!!!」
「うるさいな!!」
人それぞれタイミングというものがあるのだ。シンデレラだって白雪姫だって
王子様に会うまではずっと出会いなんてなかったのだ。多分。
王子様だからこそ、今の出会いなのだ。きっと。
「とにかく! 普通にしてろ!マジで!」
「まぁ努力はするけど――」
「仲が良いんですね」
突然聞こえた鼻につく喋り方に全身がびくっと跳ねる。顔が熱くなる。
何も意識してない。
考えるより先に体が反応したんだ。条件反射だ。
なんてことだ。
普通にするとか無理だ。
「別に。つーかお前は何でここにいんだよ」
「先輩の声が聞こえたので、からかいに」
「やっぱかわいくねえなお前!」
そう言いながらも本気で嫌そうなわけじゃない幼馴染の顔。
本当は気に入ってるんだなぁと考えながら
淡々と話す後輩の姿を見れば、いまだに花が咲いて見える。
異常事態だ。
「二人は何してたんですか?」
「こいつが――」
「少し話してただけ。もう帰るところだよ」
余計なことを言われる前に遮れば、幼馴染の冷たい視線が突き刺さる。
こんなニコニコした私は気味が悪いのだろう。
自分でもそう思うのだから気持ちはわからなくもない。
でも人の後ろに花が咲いて見えたりしてるんだから
もうそれくらいのことが起きてもおかしくない。
「君は何してたの?」
「教室に荷物を取りに行ってたんですよ」
「そうなんだ」
後輩の右手には、小説のようなものが見えた。
彼はどんな本を読むのだろう。
私は、彼のことをほとんど知らない。
ほんの少し前までは
幼馴染から話を聞いていただけの
それだけの存在だった。
化学部に入ってる一つ下の後輩で
甘いものが好きで
コーヒーが苦手で
無口でクールで生意気で。
それだけの男の子。
でも、今の私にとっては、キラキラ輝く王子様。
この前からずっと
今でもずっと
無表情な、クールな顔が輝いてる。
「もう帰るの?」
「ええ、一応」
彼は私にとって王子様。
だけど私はシンデレラでも白雪姫でもない。
そもそも姫なんて柄じゃない。
待っていたって始まらない。
だったら、自分で全部見つけていきたい。
「君も一緒に帰らない?」
私の言葉に、さっきまでの冷静な顔が変わる。
その表情に釘付けになる。
「もちろん。最初からそのつもりです」
そう言いながら生意気に笑う彼が輝いて見えたから
私はやっぱり重症で
幼馴染にチョップされるまで、私は固まって動けなかった。
END
資料室で私を助けてくれた姿はまさしく王子様で
私は何もできなくなって
ただ、彼に見惚れていた。
《目を奪われて、春》
「はぁ?」
放課後の教室で、幼馴染の呆れた声が響く。
目の前で頬杖をつく幼馴染は「あいつのどこが王子様だよ」と一蹴して。
「あいつ無口で生意気で冷めた後輩なんだぞ」
そう悪態をつく幼馴染は、部活が同じなその後輩の話を私によくしていた。
だから、なんとなく知っていた。
確かに幼馴染の言うとおり、生意気で鼻につく喋り方をしたその後輩は
確かに世間一般でイメージされる王子様とは大分違う。
だけど、私にとっては王子様だった。
「王子様ってのは、華やかで気品や人気があるようなやつのことだろ」
「ふーるい! その概念は古すぎるよ。時代遅れだよ。今時どんな人でも誰かの王子様だよ!!」
「誰でもなれんのかよ」
幼馴染が「わけがわかんねえ」とげんなりした顔をする。
半分勢いで適当なこと言ってるんだから、私だってよくわからない。
事の発端はこの前の週番。
資料室に道具を取って来るよう任された私は
大して背もないのに横着をして高いところにある教材をひっくり返して落っことし
危うく模造紙に襲われるところというところを
「大丈夫ですか」と後ろから冷静にキャッチしてくれたのがその後輩で
見上げた視界に入ったその顔は、とてもキラキラと輝いていてバックでお花が咲いてるようにすら見えて。
それから今日の昼休み。
幼馴染への用事でやってきた後輩についでに声をかけられて、ドギマギと返事をして
それを見ていた幼馴染が怪訝な顔で問い詰めてきたのがSHR前。
そして、経緯を聞いた幼馴染がつまらなさそうな顔をしているのが今。
「てか颯爽と助けてくれたっつーから全身で庇ったとかかと思ったら、ただ教材キャッチしただけかよ」
「違う!!」
バンっと机を叩く。
そりゃあ確かにちょっと手が伸びてきて、声をかけられただけ。
庇ってもらったとは確かに違う。
でもすごく綺麗だったんだ。
淡々と冷めた顔をして、言い方だって冷たくて、なのに言葉は優しいその後輩が
全力でキラキラしてたんだ。
「あの輝きはまさしく王子様なの!!」
「資料室の電気つけてないから逆光差してただけじゃね?」
「あとほら、そのあと模造紙も戻してくれたし」
「普通だろ」
深いため息をつかれる。
そんなに眉間にシワを寄せなくてもいいのに。
「どんな楽しい話かと思ったら、めちゃくちゃつまんねえ」
「ひっど!! 勝手に期待しといてひっど!!」
「だってあいつだぞ? もっと王子様っぽいのいるだろ。生徒会長とか」
確かに、今の生徒会長はめちゃくちゃ王子様っぽいけれど。
そういえば入学当時、迷子になってたの助けてもらったけど、別に何も気にならなかったな。
「何故か生徒会長には何もときめかないんだよね」
「お前のポイントがマジでよくわかんねえ」
「あんたにわかってもらわなくてもいいもーん」
確かに幼馴染の好きな人はすごくわかりやすい。
こんな子誰でも好きになるよねって感じの女の子だ。
でもだからって、私までそれを求めるのはどうかと思うのだ。
蛙や熊が王子様なんて、最初は誰も思わないんだし。
その人が私にとって王子様ならそれで良いではないか。
「単にあんたの感性が普通すぎるんじゃなーい?」
「普通で何が悪いんだよ!」
「世界をもっと広く持とうよ」
「単にお前の好みが変なだけだろ」
「価値観せまーい」
じとっと見ると文句ありげに「っていうかなぁ」と睨まれる。
思わずひるんだように「何よ」と返すと、びしっと人差し指を突きつけられた。
「いつもと違うお前が気持ち悪い!」
「しょ、しょうがないでしょ!? 初恋なんだから!!」
「初恋!? おっそ!!!」
「うるさいな!!」
人それぞれタイミングというものがあるのだ。シンデレラだって白雪姫だって
王子様に会うまではずっと出会いなんてなかったのだ。多分。
王子様だからこそ、今の出会いなのだ。きっと。
「とにかく! 普通にしてろ!マジで!」
「まぁ努力はするけど――」
「仲が良いんですね」
突然聞こえた鼻につく喋り方に全身がびくっと跳ねる。顔が熱くなる。
何も意識してない。
考えるより先に体が反応したんだ。条件反射だ。
なんてことだ。
普通にするとか無理だ。
「別に。つーかお前は何でここにいんだよ」
「先輩の声が聞こえたので、からかいに」
「やっぱかわいくねえなお前!」
そう言いながらも本気で嫌そうなわけじゃない幼馴染の顔。
本当は気に入ってるんだなぁと考えながら
淡々と話す後輩の姿を見れば、いまだに花が咲いて見える。
異常事態だ。
「二人は何してたんですか?」
「こいつが――」
「少し話してただけ。もう帰るところだよ」
余計なことを言われる前に遮れば、幼馴染の冷たい視線が突き刺さる。
こんなニコニコした私は気味が悪いのだろう。
自分でもそう思うのだから気持ちはわからなくもない。
でも人の後ろに花が咲いて見えたりしてるんだから
もうそれくらいのことが起きてもおかしくない。
「君は何してたの?」
「教室に荷物を取りに行ってたんですよ」
「そうなんだ」
後輩の右手には、小説のようなものが見えた。
彼はどんな本を読むのだろう。
私は、彼のことをほとんど知らない。
ほんの少し前までは
幼馴染から話を聞いていただけの
それだけの存在だった。
化学部に入ってる一つ下の後輩で
甘いものが好きで
コーヒーが苦手で
無口でクールで生意気で。
それだけの男の子。
でも、今の私にとっては、キラキラ輝く王子様。
この前からずっと
今でもずっと
無表情な、クールな顔が輝いてる。
「もう帰るの?」
「ええ、一応」
彼は私にとって王子様。
だけど私はシンデレラでも白雪姫でもない。
そもそも姫なんて柄じゃない。
待っていたって始まらない。
だったら、自分で全部見つけていきたい。
「君も一緒に帰らない?」
私の言葉に、さっきまでの冷静な顔が変わる。
その表情に釘付けになる。
「もちろん。最初からそのつもりです」
そう言いながら生意気に笑う彼が輝いて見えたから
私はやっぱり重症で
幼馴染にチョップされるまで、私は固まって動けなかった。
END
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
