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非恋愛もの
191129【冬眠】冷たく眠る
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ぼくにとって、お母さんは何よりも『だいじ』な人だった。
少しだけ変わってると言われるぼくを、みんなから変な目で見られるぼくを
『だいじ』にしてくれるただ1人の人だったから。
《冷たく眠る》
「ただいま」
学校がおわって団地にある家にかえると、知らないお兄さんがいた。
家の中はきたなくて、物がたおれてて、こわれてて
どうしたんだろうって思ってたら、お母さんがベッドによこになっていて。
「お母さんは?」
「寝ているよ」
「お兄さんだれ?」
「お母さんのトモダチだよ」
見たことない人だったけど、どうでもよかった。
ぼくが帰ってきたのに出てきてくれないお母さん。
ねむっちゃってるお母さん。
いつもならすぐにだきしめてくれるのに。
そばに近づいてお母さんをじっと見る。
目をあけるようすはない。
あたたかそうにおふとんにくるまって、目をつむっている。
お母さんのベッドのとなりにランドセルをおいた。
今日のしゅくだいを広げて、お母さんに声をかける。
「あのね、今日はこうじくんが窓でね……」
「お母さんは、まだ寝てたいみたいなんだ」
うしろから、お兄さんが声をかけてきた。
「なんで?」
「疲れちゃったんだって」
「そっか」
お兄さんの服はまっかで、よく見たらおふとんもまっかだった。
お兄さんの手もまっかで、顔にもあかがついてた。
「お母さんが起きるまでそばにいてあげられる?」
「うん、いいよ」
ぼくが言うと、お兄さんはニヤッと笑ってキッチンで手をあらう。
服をぬいで、ひっくり返った机の上にぽいとすてると、あたらしい服をきて、家から出ていった。
「ああ、今日は雪が降るらしい。暖かくしておくんだよ」
出る前にそんなことを言っていた。
ぼくは無言でうなずいた。
僕はお兄さんの言う通り、ずっと傍にいてあげた。
ベッドの隣にしゃがみ込んで
ずっとお母さんに話しかけていた。
「それでこうじくん、手を滑らせちゃったんだ」
ずっと傍にいた。
「みんなは泣いたり叫んだりの大騒ぎでね」
夜になっても、電気も暖房も点けなかった。
「まさかカエルひとつであんなことになるなんて思わなかったよ」
寒かったけど、暗かったけど、少しも離れたくなかったし
それに、暖房なんかつけたら、お母さんがいなくなっちゃうから。
お母さんじゃなくなっちゃうから。
「ほんと、くだらないよね」
本当はわかってるよ。
お母さんは二度と目を覚まさないこと。
あの人がお母さんを殺したこと。
実は僕をも殺そうとしていたこと。
全部全部わかってるよ。
だけど、僕は傍にいたかった。
大好きなお母さん。
こんな僕を愛してくれたお母さん。
離れたくなんかない。
誰の元にも行きたくなんてない。
ずっと一緒だ。
約束したんだ。
「眠い……」
お母さんは喋らない。
ずっと眠ったままでいる。
僕も、もう、眠ってしまおう。
お母さんの布団に入る。
お母さんの隣は冷たかった。
それでもいいんだ。
ひとりのほうが寂しくて、寒くて、つらかったから。
だから、一緒に寝よう。
今日は雪が降るらしい。
素敵な夢が見れるといいね。
大好きだよ、お母さん。
END
少しだけ変わってると言われるぼくを、みんなから変な目で見られるぼくを
『だいじ』にしてくれるただ1人の人だったから。
《冷たく眠る》
「ただいま」
学校がおわって団地にある家にかえると、知らないお兄さんがいた。
家の中はきたなくて、物がたおれてて、こわれてて
どうしたんだろうって思ってたら、お母さんがベッドによこになっていて。
「お母さんは?」
「寝ているよ」
「お兄さんだれ?」
「お母さんのトモダチだよ」
見たことない人だったけど、どうでもよかった。
ぼくが帰ってきたのに出てきてくれないお母さん。
ねむっちゃってるお母さん。
いつもならすぐにだきしめてくれるのに。
そばに近づいてお母さんをじっと見る。
目をあけるようすはない。
あたたかそうにおふとんにくるまって、目をつむっている。
お母さんのベッドのとなりにランドセルをおいた。
今日のしゅくだいを広げて、お母さんに声をかける。
「あのね、今日はこうじくんが窓でね……」
「お母さんは、まだ寝てたいみたいなんだ」
うしろから、お兄さんが声をかけてきた。
「なんで?」
「疲れちゃったんだって」
「そっか」
お兄さんの服はまっかで、よく見たらおふとんもまっかだった。
お兄さんの手もまっかで、顔にもあかがついてた。
「お母さんが起きるまでそばにいてあげられる?」
「うん、いいよ」
ぼくが言うと、お兄さんはニヤッと笑ってキッチンで手をあらう。
服をぬいで、ひっくり返った机の上にぽいとすてると、あたらしい服をきて、家から出ていった。
「ああ、今日は雪が降るらしい。暖かくしておくんだよ」
出る前にそんなことを言っていた。
ぼくは無言でうなずいた。
僕はお兄さんの言う通り、ずっと傍にいてあげた。
ベッドの隣にしゃがみ込んで
ずっとお母さんに話しかけていた。
「それでこうじくん、手を滑らせちゃったんだ」
ずっと傍にいた。
「みんなは泣いたり叫んだりの大騒ぎでね」
夜になっても、電気も暖房も点けなかった。
「まさかカエルひとつであんなことになるなんて思わなかったよ」
寒かったけど、暗かったけど、少しも離れたくなかったし
それに、暖房なんかつけたら、お母さんがいなくなっちゃうから。
お母さんじゃなくなっちゃうから。
「ほんと、くだらないよね」
本当はわかってるよ。
お母さんは二度と目を覚まさないこと。
あの人がお母さんを殺したこと。
実は僕をも殺そうとしていたこと。
全部全部わかってるよ。
だけど、僕は傍にいたかった。
大好きなお母さん。
こんな僕を愛してくれたお母さん。
離れたくなんかない。
誰の元にも行きたくなんてない。
ずっと一緒だ。
約束したんだ。
「眠い……」
お母さんは喋らない。
ずっと眠ったままでいる。
僕も、もう、眠ってしまおう。
お母さんの布団に入る。
お母さんの隣は冷たかった。
それでもいいんだ。
ひとりのほうが寂しくて、寒くて、つらかったから。
だから、一緒に寝よう。
今日は雪が降るらしい。
素敵な夢が見れるといいね。
大好きだよ、お母さん。
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