15 / 15
結城と緋鞠の契約
しおりを挟む
同日の静かな夜に差し込む月日に照らされながら、後輩に私は修学旅行で購入した木刀を向けていた。
後輩にちょっとだけ優しい声を掛けただけで、すんなりと釣れた事もあり、知能指数が低いのかと思ってしまう。
何の疑いもせずに信用する獲物を拘束した結果が、今に繋がるこの光景というわけだ。
「兄さんに近づく蛆虫。『デス、デス』言ってれば見逃すつもりだったけど、兄さんが赤の他人である貴女に変な意識を持たない内に言っておきます。担当を変えるように説得をしなさい。じゃないと、私がーーー」
「......」
口をギュッと口篭りしながら、変えるつもりはないと固い意思を見せ付けていた後輩の頬をペチっと叩く。
何も言わずに強い眼差しで私を見つめる相手に、苛立ちを覚えながらも髪の毛を引っ張るように壁に押し付ける。
「貴女が兄さんに色目を使うのも時間の問題です。それもさっきの行動でしっかりと把握する事が出来ました」
携帯を取り出して相手に見せると、その中に収めた兄から借りた服の匂いを幸せそうな表情と共に嗅いでいる証拠が写されていた。
「私は華月ちゃんの代理でもあります。許している部分もあるのかもしれませんが、今後を考えた上で今、この状況が作られているのはわかりますね?」
「お兄ちゃんが好きなワケじゃないデス。私は、私の野望の為に利用してるに過ぎないデス.......」
やっと出てきた後輩の言葉に信用性の欠片も感じないまま、相手の両腕を拘束した布をギュッと更に強めると、苦痛に歪むんだ表情を見せていた。
「なら好きでもない兄さんの服を今すぐ脱がしてあげる」
相手の服に手をかけると、抵抗する意思も見せずに下着一枚という、あられもない姿になっても表情を変えずに私を見つめていた。
「満足したデスカ? 早くこれを解いて解放するデス......」
拘束した腕を前に出して、何事もなかったかのように冷静な相手に苛立ちを重ねてしまう私の心が、解放するなと言っていた。
「まだ解放しない。契約の記として私が貴女の姿を模写しますので、そのままでいてください」
ペンタブを取り出すとゆっくりと時間を掛けて、相手の姿を模写していく。姿形からアニメに出てくるような身なりの後輩に度々、掛け寄っては髪並を直したりと細かい部分までしっかりと描き込んでいく。
「緋鞠さんは三つの人格でも持ってるデス? 今の緋鞠さんはステージの上にいるとも私を虐めていた時とも違うデス。まるで、好きな事に夢中になっている子供みたいに純粋デス」
「...私はアイドルが続かなくても続いても、将来の夢はデザイナーになる事。だから絵も知識も全てが宝なの。下手なデザイナーより漫画家やイラストレーターの方が綺麗な服装をデザインできるから、きっかけを作ってくれた全てに感謝してる」
数時間という長い時間の中で吹き抜ける風に、相手がくしゃみをしたのを見て、ゆっくりと毛布を被せると、顔を至近距離まで近づけながら、ジーッと瞳を覗き込む。
「ち、近いデス! それに吐息が当たってくすぐったいデスーーー」
照れくさそうに顔を背ける相手を見た後にしっかりと、描きあがった絵と比較するように後輩の顔を正面に向ける。
「インパクトが欲しい。ちょっと待ってて」
部屋の隅に置いてあった化粧道具を取り出すと、相手の顔並を再び整えた後に赤のカラーコンタクトを嵌め込んで、再び模写を描き始める。
「貴女のキャラクターだけど、ファッションビッチ?より厨二病で売る方が向いてると思うけど? 今のアイドルでも中々いない類で私達より目立つと思う」
目を見開くようにそのアドバイスに耳を疑っていた相手を見ながら、描き終えた絵を見つめて真剣な表情をして、頬に手を添える。
「厨二病って何デス?」
「厨二病も知らないの? しょうがないですね本当に」
腕の拘束を解いて、隣に座り込むと出来るだけの知識を相手に教えてみた。まだ信用は出来ないが、悪い子でないのは話していた感じ方と私の描いた絵が伝えてくれた。
それに華月ちゃんもきっと私に限らず、この子も許さない意地っ張りなところがあるから、私が自分らしくない行動を取らなくても良かったのだと、途中で気づかされた。
「そういえば、さっき言ってた野望って何の事?」
「---借金デス。負債を抱えているので稼ぐ為にお兄ちゃんのお気に入りになろうとしたデス」
聞かされた借金の額は高校生には、彼女が使ったビッチという名目でもとても返せる値ではなく、私達と同等に売れなければいけない問題だった。
両親が共に研究の為に出費を重ねた結果ともいえるが、子どもである相手が抱える必要があるのかと考える事は私には出来なかった。
「緋鞠さんを今度から、『マスター』とお呼びしてもいいデス? 授かった知識と契約の証デス。貰ったこの眼も大事にしたいデスからーーー」
「好きにすればいい。私は貴女の問題も聞いた仲だし、『ベアト』って呼んであげるから感謝しなさいよね?」
私の発言の後にニヤニヤとした相手に掴み掛かるように、顔を赤くしながら弱々しく顔を叩く。
「今のがマスターの言う『ツンデレ』という奴デス?」
「ち、違うから!!!」
反対を向いて眠るように目を閉じると、相手が背中に寄り添うように眠ったのを確認し、正面にベアトを捉えるとゆっくりと胸に寄せながら、静かに陽が昇るまで疲れを癒していく。
数時間の短い時間であったが、光が差し込む窓を見つめながら、ゆっくりと起き上がると隣で寝ていた筈のベアトがいなくなっていた。
「お兄ちゃん起床の時間デース!!!」
ベアトの大きな声が聞こえると、部屋を出て兄の寝室で寝ている相手に跨りながら、起こそうとしていた後輩の姿を目にする。
「お腹すいたから朝ご飯を早く準備するデース! じゃないとお兄ちゃんのどーてーを頂くデスヨ?」
「あと...五分だけ待って......」
朝日を受けると、薄い目で目覚めた兄がベアトをゆっくりとベッドから落とすように身体の向きを変えていた。
「くぅぅ。マスター手助けをお願いしますデス!」
「わ、私もするの......?」
恥じらいながらもベアトに手を引かれながら、寝ている兄目掛けて助走をつけた跳び蹴りをする。
そのままベッドから落ちる兄の姿に、慌てて駆け寄ると怒りに満ちた顔ではしゃいでいたベアトに矛先が向いていた。
「ふっふっふ。お兄ちゃん、いや『眷属』よ。今のがモーニングコミュニケーションというものデース! 早く私に触媒を用意するデース!!!」
「お前は...俺の昨日の心配を怒りに変えた天才だよ結城......。懺悔の準備は出来てるか?」
いつも以上に怒りに満ちた兄に連れられて、その後に勉強という地獄にずっと正座で受けさせられていたベアトを横目に華月ちゃんと優雅な朝ご飯を過ごす事になった。
肝心のベアトは朝ご飯が抜かれたまま、泣きながら流れる英語の設問に苦しめられていた。
後輩にちょっとだけ優しい声を掛けただけで、すんなりと釣れた事もあり、知能指数が低いのかと思ってしまう。
何の疑いもせずに信用する獲物を拘束した結果が、今に繋がるこの光景というわけだ。
「兄さんに近づく蛆虫。『デス、デス』言ってれば見逃すつもりだったけど、兄さんが赤の他人である貴女に変な意識を持たない内に言っておきます。担当を変えるように説得をしなさい。じゃないと、私がーーー」
「......」
口をギュッと口篭りしながら、変えるつもりはないと固い意思を見せ付けていた後輩の頬をペチっと叩く。
何も言わずに強い眼差しで私を見つめる相手に、苛立ちを覚えながらも髪の毛を引っ張るように壁に押し付ける。
「貴女が兄さんに色目を使うのも時間の問題です。それもさっきの行動でしっかりと把握する事が出来ました」
携帯を取り出して相手に見せると、その中に収めた兄から借りた服の匂いを幸せそうな表情と共に嗅いでいる証拠が写されていた。
「私は華月ちゃんの代理でもあります。許している部分もあるのかもしれませんが、今後を考えた上で今、この状況が作られているのはわかりますね?」
「お兄ちゃんが好きなワケじゃないデス。私は、私の野望の為に利用してるに過ぎないデス.......」
やっと出てきた後輩の言葉に信用性の欠片も感じないまま、相手の両腕を拘束した布をギュッと更に強めると、苦痛に歪むんだ表情を見せていた。
「なら好きでもない兄さんの服を今すぐ脱がしてあげる」
相手の服に手をかけると、抵抗する意思も見せずに下着一枚という、あられもない姿になっても表情を変えずに私を見つめていた。
「満足したデスカ? 早くこれを解いて解放するデス......」
拘束した腕を前に出して、何事もなかったかのように冷静な相手に苛立ちを重ねてしまう私の心が、解放するなと言っていた。
「まだ解放しない。契約の記として私が貴女の姿を模写しますので、そのままでいてください」
ペンタブを取り出すとゆっくりと時間を掛けて、相手の姿を模写していく。姿形からアニメに出てくるような身なりの後輩に度々、掛け寄っては髪並を直したりと細かい部分までしっかりと描き込んでいく。
「緋鞠さんは三つの人格でも持ってるデス? 今の緋鞠さんはステージの上にいるとも私を虐めていた時とも違うデス。まるで、好きな事に夢中になっている子供みたいに純粋デス」
「...私はアイドルが続かなくても続いても、将来の夢はデザイナーになる事。だから絵も知識も全てが宝なの。下手なデザイナーより漫画家やイラストレーターの方が綺麗な服装をデザインできるから、きっかけを作ってくれた全てに感謝してる」
数時間という長い時間の中で吹き抜ける風に、相手がくしゃみをしたのを見て、ゆっくりと毛布を被せると、顔を至近距離まで近づけながら、ジーッと瞳を覗き込む。
「ち、近いデス! それに吐息が当たってくすぐったいデスーーー」
照れくさそうに顔を背ける相手を見た後にしっかりと、描きあがった絵と比較するように後輩の顔を正面に向ける。
「インパクトが欲しい。ちょっと待ってて」
部屋の隅に置いてあった化粧道具を取り出すと、相手の顔並を再び整えた後に赤のカラーコンタクトを嵌め込んで、再び模写を描き始める。
「貴女のキャラクターだけど、ファッションビッチ?より厨二病で売る方が向いてると思うけど? 今のアイドルでも中々いない類で私達より目立つと思う」
目を見開くようにそのアドバイスに耳を疑っていた相手を見ながら、描き終えた絵を見つめて真剣な表情をして、頬に手を添える。
「厨二病って何デス?」
「厨二病も知らないの? しょうがないですね本当に」
腕の拘束を解いて、隣に座り込むと出来るだけの知識を相手に教えてみた。まだ信用は出来ないが、悪い子でないのは話していた感じ方と私の描いた絵が伝えてくれた。
それに華月ちゃんもきっと私に限らず、この子も許さない意地っ張りなところがあるから、私が自分らしくない行動を取らなくても良かったのだと、途中で気づかされた。
「そういえば、さっき言ってた野望って何の事?」
「---借金デス。負債を抱えているので稼ぐ為にお兄ちゃんのお気に入りになろうとしたデス」
聞かされた借金の額は高校生には、彼女が使ったビッチという名目でもとても返せる値ではなく、私達と同等に売れなければいけない問題だった。
両親が共に研究の為に出費を重ねた結果ともいえるが、子どもである相手が抱える必要があるのかと考える事は私には出来なかった。
「緋鞠さんを今度から、『マスター』とお呼びしてもいいデス? 授かった知識と契約の証デス。貰ったこの眼も大事にしたいデスからーーー」
「好きにすればいい。私は貴女の問題も聞いた仲だし、『ベアト』って呼んであげるから感謝しなさいよね?」
私の発言の後にニヤニヤとした相手に掴み掛かるように、顔を赤くしながら弱々しく顔を叩く。
「今のがマスターの言う『ツンデレ』という奴デス?」
「ち、違うから!!!」
反対を向いて眠るように目を閉じると、相手が背中に寄り添うように眠ったのを確認し、正面にベアトを捉えるとゆっくりと胸に寄せながら、静かに陽が昇るまで疲れを癒していく。
数時間の短い時間であったが、光が差し込む窓を見つめながら、ゆっくりと起き上がると隣で寝ていた筈のベアトがいなくなっていた。
「お兄ちゃん起床の時間デース!!!」
ベアトの大きな声が聞こえると、部屋を出て兄の寝室で寝ている相手に跨りながら、起こそうとしていた後輩の姿を目にする。
「お腹すいたから朝ご飯を早く準備するデース! じゃないとお兄ちゃんのどーてーを頂くデスヨ?」
「あと...五分だけ待って......」
朝日を受けると、薄い目で目覚めた兄がベアトをゆっくりとベッドから落とすように身体の向きを変えていた。
「くぅぅ。マスター手助けをお願いしますデス!」
「わ、私もするの......?」
恥じらいながらもベアトに手を引かれながら、寝ている兄目掛けて助走をつけた跳び蹴りをする。
そのままベッドから落ちる兄の姿に、慌てて駆け寄ると怒りに満ちた顔ではしゃいでいたベアトに矛先が向いていた。
「ふっふっふ。お兄ちゃん、いや『眷属』よ。今のがモーニングコミュニケーションというものデース! 早く私に触媒を用意するデース!!!」
「お前は...俺の昨日の心配を怒りに変えた天才だよ結城......。懺悔の準備は出来てるか?」
いつも以上に怒りに満ちた兄に連れられて、その後に勉強という地獄にずっと正座で受けさせられていたベアトを横目に華月ちゃんと優雅な朝ご飯を過ごす事になった。
肝心のベアトは朝ご飯が抜かれたまま、泣きながら流れる英語の設問に苦しめられていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる