風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜

古道 庵

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「今日のご予定は?」
「第二弾の洗濯物干し終わったら買い物だな。クーラーボックス積んどくか」
「俺干してる間に必要なの載せといて」
「了解」

お互いに向かい合いながらの食卓。
テーブルには一汁三菜とまではいかないものの、米に味噌汁、焼き鮭と大根の漬物が並んでいる。

今日は休みと決めた日であるが、午後は予定がある。
俺達二人共通の楽しみであるキャンプをする予定なのだ。その為の買い出しと、これから一週間程度の食料を買い込まなければならない。

今回は康平も呼んでおり、キャンプ場開拓仲間&妖怪見える仲間三人での初キャンプになる予定だ。
散々手伝ってくれている妖怪達の事も労わなければならないので、今日はかなり出費が激しくなる事が予想される。

しかし、こんな俺の無鉄砲な計画に皆付き合ってくれているのだ。感謝してもしきれない。
だから少しでもお返ししていきたい。
今日と明日を休みとした理由は、この宴会を開くためだった。


午前中に買い出しを済ませ、午後は積み込みと設営、そして料理をする予定だ。
設営の方は皆に手伝ってもらうとして、料理関係は俺と匠がやる必要がある。

バーベキューで良いかとも思っていたのだが、せっかくキャンプするのだからもう少し凝った物も作って振る舞いたかった。

何せ康平は協力してくれるとは言え、キャンプに対して特に関心が無い。
せっかくキャンプ場作りを一緒にやるのだ。楽しさと言うか、良さを少しでも理解して欲しい。
その方がモチベーションにもなるし、何よりも沼に引き込んでやりたかった。

既に時刻は十一時に近い。あまりのんびりしていると直ぐに約束の時間が来てしまう。

頭の中のリストに優先順位を書き込みつつ、自分の食器を片付けついでに洗う。


ーーーーーーーー


今日も軽トラは満載だ。
ただ、今回は作業道具ではなくキャンプ道具で、という違いがある。
到着すると既に一台の黒いSUVが停まっており、康平が来ている事が分かる。

「悪い、結構待ったか?」
「ぶっちゃけ一時間ぐらい前っス。でも、皆居るんで」
降りるや否やすぐに謝るが、康平は気にしていない様子。

それもそうで魍魎達と遊んでいたようだった。それに響とおっさんの姿もある。相手に困る事は無かっただろう。
約束は二時だったのに対し、既に時刻は三時過ぎだ。
買い物や荷積みで手間取ってしまい遅れてしまったのだった。

暫く山奥の自分の棲み処で養生していた小三郎と響だったが、数日前にひょっこり顔を出し、すっかり元気を取り戻した様子だったので安心した。

ただ、今も本調子では無いようで妖気を使う事はできないらしい。
今日はこの二人に対する感謝もある。

「それにしても二週間でここまでやったんスか。やべー、人力とは思えねえ」
「八割以上妖怪達のお陰だけどな。にしても康平、ランクル乗ってたんだ」
「あれ? タクミ君俺の車見るの初めてでしたっけ。スノボやるんでこれぐらいの足欲しくて買ったんスよ。まあ古いの買ったんで安かったけど」
匠は康平の車に興味津々なようで、返事もそこそこに康平の車へと近寄って見ている。

二人はすっかり打ち解け、匠はもう呼び捨てにしている。
康平は元々明るく話しやすい性格なので最初から態度は変わらないのだが、時折敬語を忘れる程度になっていた。

二人で車談義を始めたようで、興味の薄い話に付き合うのも面倒な訳で。響とおっさんの元へ行く。

「今日は何か、もてなしてくれるんだって?」
響が肩を組んできながら聞いてくる。青葉や山椒のような爽やかで辛味のある香りが鼻腔に届く。

「響と小三郎にはマジで助けられたからな。葡萄仕入れてきたから後で渡す」
「いいねえ、楽しみにしてるよ」
肩に回された腕が首に回り強く締め付けられる。固い腕と柔らかな肉の感触を感じながら、息苦しさにタップを宣言。
すると首に掛かっていた圧力が不意に消え、口笛を吹く響の背中が目に映った。

「ぐへえ……響、ここに居ないのか?」
「ちょっとひと眠りするよ。そこの大食らいに取られるのも癪だからねえ」
「そっか」
ひらひらと手を振る響はすぐに林の闇に溶けて消えてしまった。



「まあ、あいつもまだまだ本調子じゃないからな」
うんうんと頷きながら、大五郎のおっさんが近づいてくる。
「そっか……」
おっさんの言う通りなのだろう。
いつもの飄々とした態度だったが、あれは俺に心配をかけない為なのだろうか。

「それよか持ってきたか?」
「おう、今までの分の働きに見合うかは分からないけど。日本酒焼酎ビールにウイスキー、選り取り見取りだ」
「分かってんじゃねえか。んじゃ取りあえず一本寄越せ」
「えー……?」
凄んでくるおっさんに今渡すべきか少し考えてしまうが、どうせ設営の時は構ってやれないのだ。いつものを一本渡しておけば大人しくしてくれているだろう、と思い至る。

「じゃあ渡すから夜まで保たせろよ?」
「がはは、それは確約できねーわな」
「ったく……」
こちらの意向など全く聞く気の無い笑い声を上げる大男に、思わず溜息が出てしまう。
本当に水かジュースかのように飲んでしまうので困りものだ。

とは言え、この二週間程の成果はこの男無しにはあり得ないものだった。
文字通り八割以上はおっさんが切ってくれたわけで。
なので今日ばかりはあまり文句も言い辛いのだった。

「軽トラにあるから、とりあえず三本ぐらい持ってって。それで大人しくしとけよな」
「おうおう、話が通じるようになってきたじゃねえか。それでいいんだよ、それで」
再び大口を開けて豪快に笑い、俺の背中をバシバシと叩く。本当に遠慮ってやつを知らない妖怪だ。
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