風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜

古道 庵

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「にしても俺の居ない間によくここまでやったよな。お疲れさん」
「ほぼ康平と壬生さん、それに天狗ちゃんや磐裂達のお陰だけどな。俺がやったのなんて石並べるぐらいだったし」
横に並んだ匠がそんな事を言うので目線を追うと、そこにはこの二週間ほどで作り上げた小川の溝が。
その小川に並走するように土が盛り上がっているのは、水道のパイプを入れたからだ。こちらは康平と壬生さんに九割お任せして敷設してくれた。
トイレの予定地と管理小屋の予定地、そして小川の終わりに作った小さな泉へとパイプが通じている。

小川の方と言えば、俺がせっせと石を打ち込んだもののやはりそれだけでは不十分だという結論に至った。
理由としては土が流れてしまう事、川底が角張った石のみで構成されているのは危ないという意見が出たからだ。

なので内田建設さんを通し、ある程度大きさのある川砂利を購入して敷き詰めた。
ホームセンターで売っているような十キログラムの袋で想像してどれ位金額が掛かるかハラハラしたものだが、思っていたよりもずっと安く住んで胸を撫で下ろしたものだ。
聞けばああいった形の個包装はかなり割高で値段を設定しているそう。そもそも業者がキログラムなんて単位で買うわけもないので、計り方自体が違うそうだ。

そんなこんなで川底はかなり綺麗に仕上がっていた。丸い川砂利のお陰で裸足で歩いても痛くない程だ。
後は今夜、天狗ちゃんの言う”舞”で目論見通り護岸が出来れば完成となるだろう。

「今日はまた手伝ってくれた皆にお疲れ様って言いたいね」
「それ毎回じゃねーか。いい加減しつこいぞ?」
匠が鬱陶しそうに手の甲を向けて振るが、俺の気持ちは変わらない。

「滅茶苦茶助けられてるのは変わらないし、せめてこういう時ぐらいはさ」
「その『せめてこういう時』ってタイミングが多いんだっての。逆に皆気を遣うぞ?」
「そうか?」
「そうだよ。お前が思ってるよりずっと俺らは自分達で楽しんでやってるんだよ。感謝なんかされたって恩着せがましいわ」
そう言うと俺の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてくるのでその手を振り払う。

「うっぜえな。でもよ、申し訳ないのが正直な所だし」
「だーかーら! 何でも自分の責任ですごめんなさいって態度やめろっての。少なくとも俺はお前と一蓮托生なんだからよ」
「それは僕も同じかな」
不意に後ろから声が聞こえると、壬生さんがゆっくりとした歩調で近づいてきていた。

「僕もこのキャンプ場計画と一蓮托生な所あるからね。無理矢理店改装させられたし」
「ああ、まあそれは……すんません」
「はは、冗談だよ」
匠が謝るとカラカラと笑いながら額に浮いた汗を拭っている。

「壬生さん聞いてました?」
「うん、わりと声大きいからね君達。僕も匠君に同意見かな。好きでやってるわけだし、特に涼介君にはかなり手伝ってもらったし。それなのに余所余所しい態度取られると寂しいよね」
「お互い様ってところですか?」
「というか、そういう利害とか抜きで考えようよ。わりと仲良くなったと思ってるんだけど……僕だけかな?」
「いや! そんな事は!」
「ならいいじゃない。友達助けるのも助けられるのも、一緒に何かやるのだって楽しいから、そうしたいからする訳なんだし」
「マスターの言う通りだな。涼介、お前頭堅いんだよ。社畜時代経験したからそういう考え方になったのかもしんないけどよ」

匠の言う事は図星だった。店長をやっていた数年間、誰に対してもずっと気を遣っていてそれが心労として蓄積もされていた。
上司連中の無茶苦茶な要求も黙して承諾していたし、接待役も受けて随分と気を回した。
客からのクレーム対応も俺がしていたし、何度か足を運んで謝罪に行ったりもした。
社員やパートさんバイトに対してはクビを宣告する役回りだし、残ったメンバーに対しても激務を強いていたので不満の捌け口になっていた。

そんな生活を続けていたせいだろう、他人の持つ感情に敏感になってしまったのは。
気の置けない友達と思っていた匠にさえも、余計な気を遣ってしまっていたらしい。

「もうちょっと気を抜けよ。俺らが気まずくなる」
「だね、今日誘ってくれたのは嬉しいけど堅苦しいのは抜きだよ」
タバコを取り出して深く吸いながら笑う匠に、俺の肩を軽く叩く壬生さん。

「そういう面倒な話はー……これ飲んでふっ飛ばすッスよー!」
そう言いながら突進してきた康平に何故か横っ面をぶん殴られ吹っ飛ばされる。
「痛っ! 何すんだ康平!」
「悪いッス! 勢い余ってやっちまったッス! ほい、タクミ君、マスター!」
と全く悪びれる様子の無い康平の手には片手に二本ずつビールの缶が握られていた。

「康平、それ殺人の言い訳みたいに聞こえるぞ。おう、ありがと」
「見てたけど走ってる時腕振ってたよね……?」
匠はタバコを持っていない方の手で受け取り、壬生さんは訝しげな表情で恐る恐るといった感じだ。

「ほい、リョースケ君」
と先程俺をぶん殴ったであろう缶を差し出し、次やったらぶっ飛ばすからなと呟きながらも受け取る。

「んじゃあ、まずは練習って事で! カンパーイ! うおわっ」
高々と缶を掲げた後プルタブを開けると、噴水のように白い泡が吹き出してモロに浴びる康平。
「ほらー、やっぱ振ってたからー……変えてこようかな」
「待て待てマスター。『一蓮托生』だろ?」
「ここでそれ言う?」
壬生さんは予想通りといった具合だが、意地の悪い匠の言葉に後に引けなくなった様子。

「ほらほら皆仕方ないなー、俺が開けてやるッスよ!」
「馬鹿やめろ康平!」

康平の悪ノリにより、結局皆ビールまみれになって炎天下の中騒いでいた。
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