永遠に見続ける夢

かじはら くまこ

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友情は永遠に

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次は来週とりに来てと言われていたから、次の週の月曜日に日記を取りに行った。

すると門に黒い幕がはってあった。

「!!!」

どういうこと?

駆け足で門をくぐり玄関に入る。

「おばちゃん!!」

大きな声で菫の母親を呼ぶ。

菫の母親が奥から黒い着物姿ででてきた。

「成美ちゃん……」

目から涙が溢れていた。

「ごめんね。連絡しようと思ってた。」

「何を?」

「菫がね、今朝亡くなったの。」

頭を殴られたような感じになる。


菫が亡くなった。

亡くなった。

亡くなった?

「嘘だよ!!」

「嘘じゃないの。」

「私と一緒に遊園地に行くんだよ。」

「うん。」

「アイスクリームも食べようって。」

「うん。」

「旅行も行きたいって。」

「うん。」

「大学も一緒のところ行きたいって。」

「うん。」

「ずっと友達だよって。」

「うん。……成美ちゃん、ありがとう。」

おばちゃんも泣き崩れてしまった。

奥からおじさんがでてきた。

「成美ちゃん、これ、菫から預かっていた……。」

おじさんが交換日記を渡してきた。

成美はそれを無言で受け取りとぼとぼあるきだした。

どこに向かって歩いたのかわからない。

ずっとふらふら歩いて行き着いたのは遊園地の観覧車が見える海辺だった。

そこにペタリと座り込んで日記を開いた。

読むのか?

これを読んだらもう最後だ。

菫との会話は。

読んでいいのか?

何回か自問自答して、やっとページをめくる。

深呼吸して読む。

「8月18日」

「8月18日。

ありがとう。ずっと友達って言ってくれて。
すごく嬉しい。
私もずっと友達って思ってる。

でもね、このポンコツはね、どうしようも無いよ。

もう持たないと思う。

すごく残念だけど、もう会えないと思うんだ。

でもずっと友達だよ。

あの図書館で成美に会えたことで自分の世界を分かってもらえたみたいで嬉しかったんだ。

私って友達がいたことをずっと覚えていてほしい。

私はいつも大空にいるから。何かあったときは空を見上げてほしい。

きっと私が空にいるから。

そして成美ちゃんの夢、必ず叶えてね。

それが私の病気の人を励ましたいという夢を叶えることにもなるから。

約束だよ。

ずっと一緒に夢を見続けよう。

これが最後の短歌。

今日はわたしが最後だから上の句も下の句も詠むよ。

大空へ

舞い上がる夢

いつの日も

永遠の友と

見続けている」


成美は涙でいっぱいになる。

顔がしわくちゃになる。

声がないまま、空を見て泣いた。

こんな私を永遠の友とよんでくれた。

ずっと夢を見続けようって言ってくれた。

ありがとう。約束だよ。

もうこの泣き虫の友を涙で濡らさないでよ。永遠に……。


成美はしわくちゃの顔で空に微笑んだのだった。

空には変わらず青空が広がっていた。
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