5秒後の廃棄者はゴミスキルで異世界を旅する

深田くれと

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005ゴミスキルは昇華するらしい

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「ねえ、ナギって言ったっけ? 私は倒す方専門で薬草なんて見分けつかないから、期待しないでよ」
「もちろん。探すのは俺がするんで」

 そう言うとアルメリーさんが少し眉を寄せて睨んできた。
 これもスルー決定。

 良さそうな場所を求めてさらに奥に進む。
 終始つまらなさそうなアルメリーさんは大あくびを連発して暇そうだ。
 ガダンさんが推す人だから大丈夫とは思うけど不安は残る。
 ただ、時折、石を投げて何かを警戒しているので仕事はしてくれていると信じたい。
それに、今はそれよりも――

「どこまで広げられるかなんだよなぁ」

 森の奥まった場所に踏み入り、あぐらをかいて座る。
 意識を集中し、目をつむる。

 感じる。
 自分の周囲にある薬草の色が暗闇の中に浮かび上がる。
 けれど、範囲が二メートルくらいだ。
 最初に森に入ったときは、自分の目で軽く見下ろす範囲の薬草の色しかわからなかった。
 金色も、赤色も、その薬草に近づかないと色が見えないのだ。

 でも――
 よく思い出せば、少し前、明らかにその限界距離を越えて色が見えた瞬間があった。
 王と宰相の二人を見た時だ。
 相当離れていたのに、彼らの、特に王の黒は目に焼き付くほどはっきりわかった。

 《強感力》というスキルは、色が強ければ、遠くのものでも【視る】ことができるようだ。
 逆にスキルを使いこなせれば、限界に思える知覚距離を伸ばすことができるはずだ。
 そして、それは俺の武器になる。
 探知に近いことができれば、モンスターの接近にも気づける。

「一本目は青……二本目も青……」

 目をつむって意識を更に集中する。
 周囲の草むらの中で薬草を選別し、色を視る。
 そしてその本数を増やしていく。

「……っく」

 頭がズキンと痛む。
 胸の中が、ザワザワとざわめく感覚がある。奥に何かあるのに、表面しかなぞれないようなもどかしい気配。
 でも、確かに、数センチ知覚距離が伸びた。
 まだだ。やれるところまで、できる限り。
 頭痛に耐えて集中……

「――ギ! ちょっと、ナギ!」
「……えっ?」

 一瞬、目の前が真っ白に弾けた。
 アルメリーの青い瞳が正面にあった。
 俺は胸ぐらを捕まれて持ち上げられていた。

「いい加減にしなさい! もうゴーストが増えすぎたわ。逃げるわよ!」
「う、うん」

 強い力で引っ張られ、肩に担がれる。
 ふと、気づいた。アルメリーさんのグローブには黒い靄がまとわりついている。
 目を見開くと、彼女は何でもないと、ぷらぷら手を振ってみせた。

「心配ないわ。ゴーストの返り血みたいなものだから」
「えっ?」

 もう戦っていた?
 いつ?
 アルメリーさんが戸惑いを見て取って、あきれたように言う。

「寝てたわけ? ずっと座ってるだけだったでしょ」
「いや……そうじゃないんだけど……ゴーストって一匹?」
「二十は倒したわ。呼びかけたのにずっと起きないから。ほんとに……知らなかったの?」
「……うん。っ!?」

 思わず頭上を見た。
 いつの間にか星が出ている。夜になっている。
 日は高かったはずた。
 俺は、どれくらい目をつむってたんだ?
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