1 / 1
ある閉鎖的な村の最期
しおりを挟むこの世界は精霊と契約を結ぶことで人間は超常の現象を起こす。契約は精霊の気まぐれであり、結ぶも切るも精霊が主導だ。精霊を説得して契約を複数結ぶ様な猛者は伝説足り得る。
さて、本編は交流が途切れ後は滅びるだけとなった農村から始まる。そこは古来より火の精霊が封じられていると言う様な伝承が伝わっていた。
伝承では火の精霊による怨念が原因で、この村で火を使えないというものだった。だが人を捧げることでその怨念を回避できるとも伝わっていた。
そのために代々、溢れ者が厄介払いの意味も含めて捧げられた。
今日もまた、恒例行事と化した儀式で生贄に捧げる者が会議で決まる。
「お前はこの村を救う運命を持って生まれてきたのだ。しっかりと、その運命を真っ当するのだぞ」
「……」
その言葉を告げたのはこの村でも一番の年長者であり、生贄として捧げられる少女の祖父であった。
生贄に捧げられる少女の経歴を告げる必要はないだろう。なぜなら、この少女はこれから儀式のためにこの村に帰ることはないのだから。
「運べ」
この村から離れ、儀式場に着いても少女が何かを話すことはない。
儀式場と呼ばれるところは石造りの祭壇であり、煌々と暗がりを照らしながら燃え盛る篝火がある。
祭壇の中央に立たされ他の者が祭壇から降りると篝火の火が燃え盛った。その火は少女を生き物の様に蠢き少女を包み込む。
その熱風は外で固唾を飲んで見ている村民にも伝わった。村民の内心は場の緊張感とは反対に晴れ晴れとしている。
しばらくすると、火が治まる。炎に包まれた祭壇の中心部は陽炎が揺らめいているために外から見ていた者には見通すことができない。
だが、そこには誰か立っている。その人物は赤い髪を靡かせながら平然とした様子で村民の方に向かっていることが足音で分かる。
火に包まれた後に何者かが立っているというのはこの伝承が伝わって以来、初めての出来事であった。そのため呆然とした様子でただただ眺めていた。
ひんやりとした空気が祭壇に流れ込み陽炎が徐々に治まってくると、歩いて来ているのは先程炎に巻かれ死んだと思われる少女だった。
だが、身にまとっている服装や瞳の色などが違う。それは伝承に伝わる火の精霊が現れた、その様に言っても過言ではないだろう。
呆然と眺めていた村民を見た少女は、何かをすることもなく祭壇を降りて村を出た先の森へ行く。
我に帰った村民は慌てて村へ戻り、先程の出来事を報告しようと祭壇から離れる。
だが、その村民が見たのは目映い位に明るくなった村だった。先程の篝火の様に煌々と夜の闇を裂く炎によって村は燃えていた。
空には一つの村が燃えていることなど関係ないかの様な満天の星空が広がっている。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
予言姫は最後に微笑む
あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。
二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる