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殆どノリ
しおりを挟むここは、ある国ではゲームとして使われた世界である。
この世界では時折、転生者が現れる。転生者には特典として神からランダムで異能を貰える。
そんな転生者がここにも一人、エンディアという名前で生を受ける。
(何なの、この異能は……)
元気に泣いているがその内心では焦りを浮かべていた。
「可愛い女の子ですねぇ、お館様」
「あ、ああ。エンディア、公爵家に生まれた以上恥をさら……っ!?」
生まれたばかりの子供に対して言う言葉ではないと感じたエンディアを抱えた従者は、お館様と呼んだ青年の頭を殴る。
(公爵家……? そして、エンディアという名前……どこかで聞いた様な気がする)
そのやり取りを認識しているが、それ以上に気になることがあり反応する余裕はないエンディアである。泣き喚いているが内心の様子には変化がない。
「いつまで茶番をしているの? 早く連れて行きなさい、世話は任せたわ」
「怒っているのかハッキリして下さいよぉ、奥様。分かりましたぁ、邪魔者は退散しますぅ」
「従者の癖に私の扱いが悪くないか?」
「妥当ですぅ、では失礼します」
お辞儀をしてエンディアと呼ばれた赤子を抱きながらその場を立ち去る。
立ち去ったことを確認してからしばらくは部屋に静寂が訪れる。その空間が破られた切欠は青年の溜息だった。青年は青色の瞳を妻である女性に向ける。
「まったくあの従者は……、いつもながら何を考えている」
「それでも近くに置いているということは気に入っているのでしょう?」
「年齢不詳、名前不明。そんな奴を置いておけるのは星の導き手を先祖とする俺の家系のみだけだ」
その言葉を聞いた女性は口元に手を当てて笑う。青年の耳は赤く染まっており、照れている証拠だと知っているからだ。考えていることがバレていることに気づいた青年は咳払いをして思考を切り替える。
「ごほん、そんなことよりエンディアについてだ」
その話題に女性の笑いは途切れ、真面目な光が瞳に宿る。
「婚約者とか決めるべきであるが、決めたくない」
「我儘もいいところね。従者でも呼びましょうか、笑顔で止めてくるわよ」
真面目な雰囲気を壊すような青年の発言に女性は溜息を堪え切れない。先程、従者と共にエンディアを部屋に行かせたのは正解だったと内心は安堵する。
(思い出した、たしかお約束を踏襲しようとしてできていないゲームのキャラだ)
それは廊下を歩いている従者に抱えられているときのことだった。
エンディア・スフィアリード。スフィアリード公爵家の天才であり星の導き手の生まれ変わりと言われる。
(基本事項であり、キャラの概要に書いてあったこれしか知らないのだけど)
泣き止んでうとうととしているエンディアを見た従者は笑みを浮かべる。従者にはエンディアが何を考えているのか、というのは分からない。だからエンディアが転生した存在であるということは分からないのだ。
(あのゲーム、乙女ゲームのお約束だったんだけど。これは不味い、落ちがさっぱり読めない。お約束が複数あるのは確かなジャンルでこんなことしないで欲しかった)
乙女ゲームのお約束、それは例えばヒロインが下級の身分、王子がメインの攻略対象、幼馴染が攻略対象であるなどだ。
だが、悪役である公爵家の従者が謎展開を作る要因とは誰が想像していただろう。
(初めてキャラの概要を見たときに驚いた事なんだけど、従者の名前が無いというのに概要欄に載っていたから)
乙女ゲームがどのようなキャラ概要を持っていたか思い出している間に意識が遠くなる。そして眠りについていた。従者は寝息をたてているエンディアを見て、目を見開く。
「お館様、部屋が遠すぎるのですが。かれこれ五分くらい歩かされているというのに、まだ着かないとは思いませんでしたぁ」
そう言う従者はお館様と呼ぶ当主に対して呆れの溜息を吐くが、従者は気づいていない。先程から同じ場所を歩いていることに、それに気づいたのは十分経ったあとだった。
「そういえば、部屋についてはどう伝えたの? あの従者は基本的に正規ルートを辿らないわよ」
「この俺がエンディアのことで間違える訳がないだろう」
呆れを多分に含んだ目を青年に向ける。その目を振り切る様に自慢気な笑みを浮かべる男性はそう言う。だが、その返しを聞いた女性は溜息を吐く。
「どうかしら。あの従者は扱いに手間がかかるわ」
「慣れればそこまでじゃないさ。そうだ、エンディアをあいつに任せるか」
流れる様に言われた言葉に女性は固まる。しばらくして復活するもまだ驚愕が抜けないのか動きがぎこちない。
「……正気かしら」
「途中から渡すから手間取るんだ、始めから渡していれば常識となるだろ」
「それもそうね」
エンディアと従者の二人がいないところで勝手に決まっているがもし居たとしても止めることはできないだろう。
常識としてしまえば驚きも少ないはずであるという作戦は、本来なら成功していただろう。だが、エンディアは転生者である。別世界とは言えある程度は常識が共通していることも知っている。
この場合、従者の暴走を止める者が現れたかどうかは定かではない。だが、平穏から離れる原因は別のところで作られていた。
エンディア・スフィアリード。スフィアリード公爵家の天才であり星の導き手の生まれ変わりと言われる。
(基本事項であり、キャラの概要に書いてあったこれしか知らないのだけど)
泣き止んでうとうととしているエンディアを見た従者は笑みを浮かべる。従者にはエンディアが何を考えているのか、というのは分からない。だからエンディアが転生した存在であるということは分からないのだ。
(あのゲーム、乙女ゲームのお約束だったんだけど。これは不味い、落ちがさっぱり読めない。お約束が複数あるのは確かなジャンルでこんなことしないで欲しかった)
乙女ゲームのお約束、それは例えばヒロインが下級の身分、王子がメインの攻略対象、幼馴染が攻略対象であるなどだ。
だが、悪役である公爵家の従者が謎展開を作る要因とは誰が想像していただろう。
(初めてキャラの概要を見たときに驚いた事なんだけど、従者の名前が無いというのに概要欄に載っていたから)
乙女ゲームがどのようなキャラ概要を持っていたか思い出している間に意識が遠くなる。そして眠りについていた。従者は寝息をたてているエンディアを見て、目を見開く。
「お館様、部屋が遠すぎるのですが。かれこれ五分くらい歩かされているというのに、まだ着かないとは思いませんでしたぁ」
そう言う従者はお館様と呼ぶ当主に対して呆れの溜息を吐くが、従者は気づいていない。先程から同じ場所を歩いていることに、それに気づいたのは十分経ったあとだった。
「そういえば、部屋についてはどう伝えたの? あの従者は基本的に正規ルートを辿らないわよ」
「この俺がエンディアのことで間違える訳がないだろう」
呆れを多分に含んだ目を青年に向ける。その目を振り切る様に自慢気な笑みを浮かべる男性はそう言う。だが、その返しを聞いた女性は溜息を吐く。
「どうかしら。あの従者は扱いに手間がかかるわ」
「慣れればそこまでじゃないさ。そうだ、エンディアをあいつに任せるか」
流れる様に言われた言葉に女性は固まる。しばらくして復活するもまだ驚愕が抜けないのか動きがぎこちない。
「……正気かしら」
「途中から渡すから手間取るんだ、始めから渡していれば常識となるだろ」
「それもそうね」
エンディアと従者の二人がいないところで勝手に決まっているがもし居たとしても止めることはできないだろう。
常識としてしまえば驚きも少ないはずであるという作戦は、本来なら成功していただろう。だが、エンディアは転生者である。別世界とは言えある程度は常識が共通していることも知っている。
この場合、従者の暴走を止める者が現れたかどうかは定かではない。だが、平穏から離れる原因は別のところで作られていた。
『題名回収の遅さに私は驚くわね』
(異能を使った第一声がこれとは一体どういうこと?)
初めてエンディアが異能を使ったのは、生まれたばかりでやることが無かったときのことだった。
『おっと、流石に初めからこの展開は不味いわね。異能である私は第四の壁を破りし者とかなんとか言われているわ』
(何者というのは異能ということでいいんだけど、原作にこんなの存在していたかな……)
誰もいない部屋で困惑しているエンディアである。従者が居ない理由はエンディアの食事を作りにいってるからだ。
『存在しないわね。既に少し触れられていたけれど、異能というのは世界を越えた者……言い換えれば転生者にしか手に入らないものよ』
(私は平穏に……ありきたりに過ごしたいんだけど)
エンディアはキャラの概要と、元となったゲームのコンセプト上、エンディア・スフィアリードというキャラクターの最後は破滅だったのではないかと予想していた。
だから、会話が一応成立していて長い付き合いになりそうなこの異能に対して自分の望むものを告げる。
『平穏とありきたりは等号で結ばれるとは思ってはいないけれど……。それがこれからエンディア・スフィアリードとして生きるあなたの願うことかしら』
(こんな公爵なんて位の高い身分に私が成れるとは思えないから、スフィアリードという名前は要らない)
従者が部屋に入ってくるが、意識が内側に向いているエンディアは気づかない。従者からすれば眠っている様子にしか見えないが、近づいてくることもなく入口付近で立ち止まる。
『あなたの望むものはこちらで把握したわ。まだあなたの人生は始まったばかり……ですが、最初からどこへ向かうか分かっているというのは私からすれば楽ね』
(…………どうやって呼べばいいの?)
異能の言葉はエンディアの頭に直接語りかけてくるという様子だった。だが聞いているエンディアは時折、聞こえていないのに脳内に文字が浮かび上がる様子がある。
『私のことかしらね……ふむ、星の導き手様とでも呼びなさい。声をかけてくれれば反応してあげるわ』
(なんで様付け?)
その言葉を境にエンディアの脳内に語りかけてきていた言葉は途切れる。そして、エンディアの真横から突如として間延びした声がかかる。
「お嬢様、お食事の時間ですぅ。お待たせ致しましたぁ」
入口付近で立っていたはずの従者は、異能である星の導き手様と呼ばれる者との会話が終わったことを見計らった様子で、エンディアの側に向かった。
(い、いつの間に……。この異能の使い道が結局分からなかったし……)
食事をさせてもらうことしかできないエンディアは、暇なときに星の導き手様に脳内で話しかけようと決意するのだった。生まれたばかりなため何もすることがなくて暇だったいう理由もある。
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