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新しい朝

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 朝になる。
やっと長かった漆黒の闇から解放される朝になる。

チビはもうベッドに居なかった。


(流石に小学生は朝が早いわ)
自分の十年前のことなのに、もうすっかり忘れ去っていた私。


だから……
暫くはそのままで居たかった。

チビと過ごした冒険の余韻を感じて居たかった。




 「ママー、お腹が空いたよ」
寝ぼけ眼でダイニングに向かった。


「あれっ何時から甘えん坊さんになったのかな?」
母が笑っていた。


(あちゃー、そうだった! 此処は過去の世界だった一)
私はタイムスリップしたことも忘れていのだ。


私はことの重大性に気付き、慌てて姿を隠した。


(でも今更もう遅いんだよね)
私は覚悟を決めて母と向き合った。




 「何で隠れていたの?」
母はまだ笑っていた。


「悪い夢でも見た?」
そう言いながら、母の顔が近付いて来る。


「ホラ、早くしないと大学に遅れちゃうよ」


(えっ!?)
と思った。


「あれっ私……お母さん私誰?」


「何馬鹿言ってるの?」
母はもっと笑い出した。


「私の大事なエイミー。お誕生日おめでとう。ジョーさん達によろしくね」


(えっ!?)
私は又固まった。


「ママ……私エイミーでいいの?」
母は真剣な眼差しで私に向き合い……、何度も頷きながらとびっきりの笑顔をくれた。


「だってエイミーはエイミーでしょう?」





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