黒髪の死霊術師と金髪の剣士

河内 祐

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クラン

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(敗北した……)

 暗い空間の中でカレルは歩きながら思う。

(また……我輩は間違えてしまった……)

 自分の足元を見る。
 そこには沢山の死体が積み上がっていた。
 腐って一部骨が見えているのが一層カレルの不快感を強める。

(なぜだ……なぜ我輩は……あいつを……)

 自分の過去を振り返る。
 蘇るのは自分の過ちで死んでいく仲間、友人、そして……自分を救ってくれた女性。

(……エミル)

 自分の最愛だった人達が音も無く崩れて行くのを感じる。

 そして、崩れた先に見える自分の不甲斐なさが心を潰しにかかる。

(なぜだ……)

 裁かれるのは自分なのに周りが死んで行くのは。

(なぜだ……)

 それなのにどうして周りは自分を責めないでいるのは。

(なぜだ……)

 幸せを手にしたと思ったらその手から零れ落ちて行くのは。

(わからない)

 わからない。

 その言葉が自分を埋めて行く。

 わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない。

 言葉の海に呑まれて行く。
 考える事が出来なくなって行く。

「何故なんだぁぁぁぁああ!!」

 それを避けるように吠える。
 それはまるで獣のようだった。

(どうしてだ!!途中までは完璧だった幸福だった!!なのに!!)

「どうして幸せになれないんだぁぁぁぁああ!」

 天に向けて咆哮するがそれに答えるものはいない。

「……死のう」

 そう簡単に思えてしまう。
 昔は昔、もう幸福の時は来ない。
 崩れて尖っている骨を拾う。
 それが誰の骨なのかはわからない。
 それを自分の喉に突き立てる。

 そして……その骨はカレルの喉に当たった瞬間、音も無く崩れさった。

「そんな……」

 暗い中呟く。

「我輩はもう……死ぬ方法すら失ってしまったのであるか?」

 他の骨を拾うがそれも崩れて行く。

「そんな」

 不幸が近づいてくる。

「あ……あ……ああ……」

 目から涙が溢れる。

「ぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

 絶望がカレルを抱きしめる。
 それでカレルは……。

「あは……あはははははははははははは!」

 狂ってしまう。

 目を背けて見たくない現実から狂ってしまう。

「我輩は……化け物だ!はははははは!」

 カレルは天に向かって狂った笑顔を見せる。
 カレルの笑いを見てる者は誰もいなかった。

 ーーーー

 開いている窓から風が彼を揺らす。

「むっ……」

 カレルが目を開けるとそこは見知らぬ天井がありカレルはベットの上でただ一人寝ていた。
 腕に刺さっている点滴がここが医療施設の個室を示している。

(ここは……)

 カレルはそこから動こうとするが……。

「グッ!?」

 足に痛みが走る。
 見てみると……。

「やはり……」

 “魂の脚”が存在していた場所は今は何も無くベットのシーツがカレルの膝より下から見える。

(……我輩は我輩の足を……)

 しかし自分がやった自傷行為だ文句は言えない。

(……)

「はぁ……」

 それでもため息は漏れる。

 その時だった。

 ガラガラガラ

 病室の扉が開いた。

「ん?」

 カレルはそこを見る。
 そこには完治したエミルがいた。

「そっちは完治したようであるな」
「……」

 カレルが話を振るがエミルは無言だ。

「どうかしたであるか?」
「単刀直入に言う」
「?」

 エミルはカレルを見る。
 それは真剣な眼差しだ。

「私はお前と共にクランを作りたい!」







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