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真実
第8話 2年目のその日
しおりを挟む去っていくジルの背中を追いかけて縋ってしまいたくて仕方が無かった。けれど今、縋ってもきっとジルはリリアに冷たい視線を投げるだけだ。
分かっているから、出来なかった。
でも、もう我慢する日々も終わる。
今日この日こそ、ミラがジルに魅了の魔法を掛けて2年目の日なのだ。
どんな魔法でも2年経てば綻びる。国中の魔女達は口々にそう言った。2年なんて待っていられるか!とリリアは孤軍奮闘していたけれど……結局、魔法を解く方法は見つからず、状況は悪くなるばかり。結局は魔女達の言葉を信じて待つしか手はなくなった。
指折り数える手を噛んでしまいたい衝動にかられながら、リリアはこの日を待っていた。辛い日々から解放される。歓喜に震える心を抑え、今日という日の朝日を浴びながら、リリアは寝台からおり、世話役のメイドに命じて入念に髪を梳かさせ、身なりを整えてジルの訪れを待った。
魅了の魔法が今日解けるのならば、きっとジルはミラではなく、以前のように自分の部屋を訪ねてくる。そんな予測を肯定するかのように、リリアの部屋の扉が静かに叩かれた。
「……お嬢様、よろしゅうございましょうか」
静かに問いかけてくる世話役のメイドに、リリアは逸る気持ちを抑えて「ええ」と答える。
(きっとジルが会いに来てくれたのね!)
弾む心のままに、扉の前まで走ったリリアだったが、メイドが放った次の言葉に、期待に膨らんでいた心がすぐに萎んだ。
「旦那様がお呼びです」
旦那様とは父であるヨウォンのことだった。
(どうして……お父様なの?)
嫌な考えが頭をよぎった。
けれど今日は待ちに待った日なのだ。
予想に反した事が起こっただけで、全ての希望を捨てる必要はない。
思い直して、リリアは「行くわ」と極めて冷静に答えた。
急いで自室から出て、ヨウォンの執務室へと向かう。心臓が耳を穿つように鳴るのを聞きながら、リリアはわずかに歩調を早めた。
「……旦那様」
メイドが執務室の扉を叩くとすぐに「入れ」と命ずるヨウォンの声が聞こえた。
緊張しながら、中へ入ると……そこにはジルと、その横にミラがいた。
そして、ヨウォンの隣には義母が立っている。彼女の悠然とした微笑みを見て、リリアは背に嫌な汗が伝うのを感じた。
(どういうこと……?)
惑う視線をジルへ向ける。彼はリリアを見ることなく、何故か目を真っ赤に腫らしているミラを心配そうに眺めていた。
「リリア」
ヨウォンに呼ばれて、リリアは視線を戻した。
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