獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~ R18

鈴田在可

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故郷編

8 絆

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「お前、いつもあんな事されてんのか?」

 リュージュが怒った声で忌々しげに聞いてくる。

 ヴィクトリアは下を向いた。本当は、リュージュには知られたくなかった。

 距離を置こう。きっと嫌われた。父親と恋人同士みたいなことをしてるなんて、気持ち悪いと思われても仕方がない。

「もう、余計なことしないで。私のことは放っておいて。近づかないで」

 冷たく、突き放すように言葉を紡ぐ。

 せっかく出来た友達だった。リュージュと過ごした楽しかった時間も、もう全部全部、遠い所へ行ってしまう。

 ずっと側にいてほしかった。だけど、この地獄には巻き込めない。

 リュージュは先程までの勢いを殺し、悲しそうな顔で言った。

「お前は、あいつが好きなのか?」

「そんなわけないでしょう! 大っ嫌いよ!」

 思わず声を荒げてしまった。
 夜も深まっているが、宴会の直後だから皆まだ起きているはずだ。誰が来るか分からない。分かっているのに、それでも叫ばずにはいられなかった。

「父親にあんな事されて喜ぶと思う? そんなわけない。おかしいわ。あの人はおかしいのよ」

 悔しくて涙が出てくる。

「ずっと不思議だったんだ、なんでお前はいつも一人で、誰も寄せ付けようとしないんだろうって。他の奴らはヴィクトリアには近づくなって、それしか言わないし、お前だって何も言わないし…… でも分かったよ。お前を不幸にしてるのは、あのクソ野郎じゃないか」

 リュージュは苛立たしげに言うと、拳を作って壁を殴り付けた。

「泣いてるじゃないか。お前にこんな顔させる奴、絶対に許さない」

 ヴィクトリアは戸惑った。嫌われたと思っていた。なのに、リュージュはヴィクトリアの為に怒っている。

「あいつに何かされそうになったら俺が助ける。必ず呼べ」

(何を言っているの? 助ける? あの超人的な強さを持つシドから?)

「そんな事……」

「わかってる。今の俺じゃあいつには勝てない。さっきだってお前に庇ってもらって、情けない」

 リュージュは寂しそうな顔をした。

「ウォグバードにも言われたよ。ここじゃ力の無い者が何を言っても無駄だって。守りたかったら強くなれって。今はまだあいつの足元にも及ばない。でも、俺もっともっと強くなるよ。俺がお前を守るから」

 胸が詰まった。でも、ヴィクトリアは首を振った。

「リュージュに迷惑はかけられない」

 何言ってんだよ、とリュージュはヴィクトリアを真っ直ぐ見つめて言った。

「お前の痛みは俺の痛みだ。辛かったら俺に言え」

 ヴィクトリアは顔を覆った。涙が次から次へと溢れてくる。

 母が死んでから、そんなことを言ってくれる人は誰もいなかった。

 嬉しかった。

 ふわっと、リュージュの匂いが覆い被さってきた。思いの外強い力で抱き締められる。

(駄目、シドが来るかもしれない)

 リュージュに触れたらシドが来るか、確証はない。けど、危険な橋は渡れない。

 離れなくちゃいけない。分かってるのに、腕を振り払う事ができない。

「リュージュ……」

 温かい。

 ずっと孤独だった心が溶かされていくようだ。

 人の温もりとは、こんなにも温かいものなのか。

 今だけは、もう少しこのままでいたい。

「リュージュ、ありがとう」

 ヴィクトリアはリュージュの背に手を回した。

 ウォグバードが来て引き剥がされるまで、二人はずっとそうしていた。
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