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最後の学園生活
火急の用
しおりを挟む夕方に戻って来たクレイドと久し振りの挨拶を交わし、パッセルとリュノはフェリスを加えた4人で夕食を囲んだ。
「で、ものは相談なんですが……
リュノ殿下の絵の才を、貸して頂けないかと思いまして」
「ほう?」
「表じゃ見かけない蝙蝠型の魔物や、鳥型の魔物、それに……二足歩行のやつが、出てきましてね。
それから、魔法を使う魔物も」
「ついにですか」
「ああ、そうなんだ。
今のところはダンジョンで拾った魔法を跳ね返す盾を駆使して、何とか凌いでるが……」
「という事は、剣では倒せない敵も?」
「ああ、魔法剣で何とかなってるけどな」
クレイドは言う。
新しい層は一筋縄ではいかない。
だが、魔物の姿形から何となくの法則は感じる。
その法則をはっきりさせるためには、記録が必要になる……
「何にしても、俺たちだけじゃ手が足らない。
既存の層にしたって、間引きをしないと表へ出て来るかもしれないしさ」
「では、あの12人を一旦引き入れてはいかがです」
パッセル自身が鍛え、経験を積ませてきた12人だ。
余裕でパッセルの弟子を名乗る権利すらある。
その12人なら……
まあ、それでも既存の層までだろうが。
「つか、パッセルも来てくれたら一番助かる。
リュノ殿下と一緒に、出来れば……1ヶ月、ダンジョン時間で」
「また大変な事を仰いますね」
「いや、結構何とかなるもんだぜ?
新しい層には光が入る場所もあるんだ、だから……あ、そうだ!
パッセルやリュノ殿下も来るんだし、フェリスも行くか?」
「えっ、いいの!?」
「パッセルっていう治癒師がいるからな」
明日1日しっかり休養を取って、明後日から潜ろう。
それでも充分早いだろう。
そのはずだった……
次の日が、来るまでは。
***
次の日の早朝、いつもの習慣で目が覚めたパッセルは、幸せそうな顔で寝ているリュノをそっと押しのけ、ベッドを降りて服を着た。
「……若いよなぁ、俺も」
昨日の自分の痴態を思い返すと叫びたくなる。
もう指はいいから、……とか、何とか……
あああああ!!
「よし、考えない事にしよう」
パッセルはさっさと平常心を取り戻し、顔を洗う水を汲みに外へ……すると、村の入口に続く道に、小さな人影が見えた。
「……ちっ」
大体の嫌な予感は当たる。
良い予感などない世界で生きた弊害だろうか。
まあ、そんな事はどうでもいい。
その小さな人影が、かなりの速さで大きくなっていく事に比べれば。
パッセルは急いで水を汲んで顔を洗い、一度着た服を脱いで戦闘用ネックガードを装着し、すぐにでも出られるように装備を整え、細剣を腰に下げた。
「おい、リュノ」
「ん……何だ、パッセル」
「起きて支度を整えろ、今すぐ」
「はぁ?」
「急ぎの用が来る、俺は先に出て出迎える」
「……分かった」
表へ出て、村の入口の方へと向かう。
先程の人影はもう随分と大きく、近衛の2騎だと分かる程だ。
そろそろ跳ね橋を降ろさねばなるまい。
パッセルは急ぎ足で向かう。
近衛が来たという事は、王都で何か起きたという事だろう。
誰に用があるかは分からないが、自分にであればダンジョンの件は一旦保留にするしか……
「パッセル殿!」
「今橋を降ろします!」
パッセルがハンドルを操作し、跳ね橋を降ろす。
タイミング良く近衛が橋の前へ到着し、最速で村の中へ入る。
そして懐から書状を取り出し、パッセルへ渡しながら言う。
「パッセル殿、フォエバストリア殿下のご命令です。
急ぎ王都へ戻られたし、との事」
「……何がありました」
「契約解除の件で、動きが」
「……分かりました、少々お待ちを」
パッセルは急いでフェリスとクレイドの家へ行き、クレイドの方を何とか叩き起こして言う。
「兄上、私は一旦王都に戻らねばなりません。
ダンジョンの件は申し訳ないのですが、後日。
それから、数名のオメガを受け入れる準備をお願いします」
「……分かった」
「近衛が2騎来ておりますが、ダンジョンの件、彼らではどうでしょうか」
「うん、近衛……って事は、魔法剣使えるな」
クレイドは上着を羽織ると、パッセルの後を追った。
パッセルはクレイドに聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「……政変、か」
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