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最後の学園生活
王宮決戦 4
しおりを挟む拘束した王を離宮から運び出し、謁見室へ転がしてから少し。
「……朝ですなぁ」
「ああ、久し振りに気分のいい朝だ」
戦闘は離宮のみ、その戦闘もいつの間にか指導訓練になった結果、誰も大きな怪我をする事なく……まあ、後頭部をしたたかに打ったり、逆間接を決められたりした者はいるが、それでもこの手の反乱にしては穏やかに事が進んだと言えるだろう。
「しかし、久々に暴れたな!」
「これからは時々乱取りでもやりますか?」
「そりゃいいな……近接戦闘術も面白そうだし」
パッセルとボルタは年齢を越えたところで普通に話している。
柔道以外にも一方は銃殺刑で一方は転落死という、お互い凄惨な死を迎えた事も関係しているかもしれない。
『福井に出張した時、東尋坊から、な。
……自殺じゃないぞ?誰かに落とされたんだ、眠剤を盛られて』
『ただのコンサル屋の死に方じゃありませんな』
『お前にだけは言われたくねー!』
そうして何故か二人で大笑いし、そこから会合を重ねるごとに少しずつ距離が縮んでいったのだ。
今や「親友」といえなくもない関係である。
「で、西へはいつ頃お越しに?」
「エバ殿下が卒業して結婚して戴冠して……5月ぐらいかな」
「ではその頃までに、二人暮らしに丁度良いぐらいの家を建てておきますよ」
「あの仮設住宅をか?」
「仮設ではありません、あれは『少しずつ自分で育てていく家』です。
そうそう、アルス殿とヴェスパ殿も、今から壁の色を話し合っておくと良いですよ。
道中、ペンキを探す楽しみも増えますから」
パッセルは、広間の端っこで寄り添って座わる二人に声をかけた。
二人にはこの後、大事な仕事がある。
「二人は休憩室に隠れておいてくれ。
……本番は、バシッとカッコよく頼むよ?」
ニヤリと笑ってボルタが言うと、ヴェスパは不敵な笑みでそれに応えた。
「ああ、精々見せつけてやるさ……
ここまで何一つ良いところが無かったからな」
「そんな事ない!ヴェスパがいなかったら、僕はとっくに死んでた……」
「はいはい、続きはあっちでね!」
二人のラブラブなシーンを見ている時間は無い。
そろそろ異変に気付いた奴らがやってくる頃だろう。
日の出と共に王都を脱出したオメガ達の、旦那とその家族が……。
「さあ、こっちもそろそろ……
パッセル、これに治癒かけといてくれ」
「えー……顔だけで良いです?」
「うん、後軽く眠らして、暴れたらウザイ」
「かしこまり」
パッセルはぱちんと指を鳴らし、変形した王の顔を元に戻し、さらに軽く催眠をかけた。
ボルタはそれを確認して、王を担いで玉座へ押し込めた。
そして押し込めた後に気付いた。
「あ、王冠どこだっけ?」
「ああ、ここにあるよ。
ヴェスパが一発入れた時吹っ飛んでったから、拾っといた」
「さすがアルス君、気が利くね」
ボルタは部屋を出る直前のアルスからそれを受け取り、王の頭へポンと乗せた。
「さて、準備は整ったな」
「ええ、後は宰相殿が出勤して来るのを待つだけです」
とはいえ、それほど時間はかかるまい。
息子が王宮へ泊まりこむのに付き合って、昨日からずっと王宮の中にいるのだから。
「しかし、王宮では何も起きませんでしたな」
「そうだな、多少の戦闘は覚悟していたが……」
「アラウダ殿のジンクスが仕事をした、という事でしょうかね」
「お前のチートのせいじゃねーの?」
公爵と平民がクククと謁見室で笑う。
王は玉座で眠っている……。
それはとんでもない光景のようで、いつもの光景のようでもあった。
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