話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

素敵なプロポーズ計画

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そんな熱烈な抱擁の2時間後、リュノ王子はエバ王子とギル王子に封書の束と報告書を手渡した。

「そうか、皆無事に到着したか」
「ああ、アルス殿もな。
 家の壁は淡い緑だ」
「屋根は水色だろ?」
「その通りだ」

どうやら、逃げたオメガたちは誰一人欠ける事無く西の辺境へ到着したらしい。
食糧の問題は多少あるものの、それも含めて何くれと無くカヌス伯が色々と助けてくれているそうだ。

「この封書の束は?」
「子どもへの手紙だ、渡してやってくれ」
「……分かった」
「この手紙で少しは心が落ち着くと良いが……
 ところで、パッセルは」
「ああ、自室で休んでいる」
「……ふーーーーん」

何でもない風を装うが優越感を隠し切れないリュノ王子に対し、エバ王子は変わらない微笑みを、ギル王子はちょっとイラついた表情を浮かべる。

「結局、選ばれたのはリュノ殿か」
「そういうことだ……羨ましいか?」
「……後で決闘しろ?」

鬱陶しい、と言わんばかりの態度。
献身的なラディアと過ごす事で、ギル王子の心も少々変化したようだ。
それを多少は汲んだのか、リュノ王子も軽く答えた。

「望むところだ……と、ところでだな、エバ殿」
「何だいリュノ殿」
「後で、オヴィス殿に相談したい事があってな」
「……何用で?」
「ああ、ええと……」

リュノ王子はギル王子を少し気にしつつ答えた。

「プロポーズの件で、少々」


***


というわけで、いつものように昼食を取りながらの作戦会議が始まった。

「……で、フェリス殿からは指輪は絶対に必要だと」
「へぇー……で、その用意はあるのか?」
「ああ、祖母から継いだ、由緒ある指輪が……」

勿論場所はいつもの個室。
ただしパッセルやアラウダはいない。
当然ながらフェリスもクレイドもいない。
ギル王子は参加を拒否……
だから椅子は半分以上余っている。

「時間は夕方。場所は当然、夕日が綺麗に見える景色のいい所を選んで。
 それまでは昼食込みのデート。
 二人きりで思い出の場所をめぐって思い出話に花を咲かせること
 ↑必須
 夕日が地平についた瞬間、跪いて指輪を見せ、結婚してくれと告げる
 ↑かっこいい事を言おうとしない
 承諾の後、左手の薬指にそっと指輪をはめて、キスをする
 ↑濃厚な奴は厳禁
 ※この日は絶対セックスしようとしないこと!」

リュノ王子はバカ真面目にメモを読む。
どうやら、たたき台はフェリスがもう作ってくれたらしい……が、そこまで読まなくても。

「うーーん……そうですね、指輪は新しいの作った方が良くないですか?」
「どうしてだ?」
「指に嵌らなかったらカッコ悪いからです!」
「……なるほど」

相談員オヴィスからは早速のダメだし。
しかも、まさかの由緒ある指輪にだ。
ただフェリスの作戦は概ね良し、という事で話が進み……

「あのう、僕、何の為に呼ばれたんでしょう」
「ラディア君は王宮のお庭係でしょ?
 プロポーズにぴったりの、雰囲気あるとこ知らないかなと思って」
「えっ、王宮で!?」
「だって学園の中でそんな事したら、また有料の号外が出ちゃうでしょ」
「あ……そうか、そうですよね!
 となると、……うーーん」

何故か呼ばれていたラディアは自分の存在意義を確認した後、真剣に悩み始めた。
そしてオヴィスは、ラディアの言葉を待つ間に指輪の話を詰め始めた。

「勉強会の分科会で宝飾デザインの研究会があるから、そこに頼んだら良いですよ!
 パッセルさんも、自分が開いた勉強会の成果っていう価値が乗った指輪なら喜んでくれると思いますし」
「……では、それで」
「石はどうする?」
「それも僕に考えがあります!
 スイテイマセキを使うんです」
「えっ……でも、あれは」

スイテイマセキの色は、透き通るような黒だ。
それはパッセルの瞳の色であって、リュノ王子の色ではない。
だが、それが良いのだとオヴィスは言う。

「普段使いして貰えるほうが良いでしょ?
 それにスイテイマセキには魔力があるって聞いたし、いざって時に役立ちそう」
「おもいっきり実用的な話だな」
「だって、リュノ殿下、言ってたでしょ。
 『結婚しても、番になっても、一生心配する』って」
「な……」

すると、リュノ王子の顔はみるみる真っ赤になっていった。
そして叫んだ。

「オヴィス殿、聞いてたのか!?」
「当然じゃないですか!
 耳から得る情報は小さい音のものの方が大事って、フェリス様から教わりましたもん!」

ばっちり聞き耳立ててました!とオヴィス。
まさか、ここでもフェリスの教えとは……。
リュノ王子は真っ赤になったまま固まり、ラディアはふんふんと頷きながら小さい声で言った。

「……勉強になります」


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