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最後の学園生活
そして卒業
しおりを挟むこうして、特務隊とパッセルの対戦試合は幕を閉じた。
その夜は何故か王宮をあげての大宴会となり、王都じゅうの酒屋から1/3の酒樽が消えた。
「……というわけで、俺の勝利を裏で支えてくれたのは、兄上なんだ」
「なんと、そんな事が!?」
「ああ、だから兄上が王でなければ俺は困る。
俺だけで今回の試合を挑んでいたら、もっと酷い展開で負けていただろう」
宴会中、ギル王子は勝利の半分は兄のおかげだとそこら中で語った。
「何を言ってるんだ?
あれは特務隊員たちの結束と能力の高さ、ギルの強さ、ラディアの思い切りの良さがあったからこそだ。
勝利者は全特務隊員だ、隊長も見習いも含めてな」
そしてエバ王子は弟の勝利を手放しで讃え、自分のした事などたかが知れていると謙遜した。
「このお二人がいれば、アルバトルスは安泰ですな」
「ああ、パッセル殿が西の辺境へ籠ってしまうとしても、何の不安も無い」
一方パッセルは、友人と共に宴を少しだけ離れて眺めていた。
「これで、大きな肩の荷が下りました」
「そりゃよかった!
ところでツーバイフォー工法を請け負ってくれそうな職人を見つけたんだが」
「おお、それは良かった!
で、その方は入植してくれそうですか?」
「ああ、結構前向きな感じだ。
あと武具職人と鍛冶屋も、工房が無くて独立させられないっつー弟子を色々紹介して貰ってるから……」
共に西へ行く気満々の友人は、今の生活水準を落とさないために随分あれこれと画策したらしい。
「では、また仮住まいを作らねばならんという事ですな」
「問題無い!今うちの領でキャンピング馬車を量産してっから。
ほら、遠征でも使えそうだろ?」
騎士団でまず運用してもらって、国道が出来たら領主に売り込んで……と、友人は壮大な計画を語り始める。
パッセルはふと思いつく。
「そう言えば、そういう馬車を特務隊が使っているという話を聞きましたが」
「ああそれ、うちで試作したやつだわ。
俺さ~、引退したらキャンピングカーで全国制覇すんのが夢だったのよ」
「つまり、それを叶えようと?」
「そう!もう前世の夢物語は全部叶っちゃったから、今度はリアルな夢追っかけたろと思って」
友人とパッセルの話はとんとんと転がっていく。
宴はまだまだお開きになる気配を見せない……
「……寂しいか?」
「まあ、多少はね。
それでもここでの仕事を全部終わらせなければ、西へは行けませんから。
まだ各地の災害救助隊に彼らの事を頼む、という仕事が残っていますが……それは今、書簡を作っていただいていますしね」
「彼氏に?」
「婚約者、と言ってください」
「そうだった」
明日は卒業式だ。
それが終わったら戴冠式及び叙爵式、王の結婚式……
そして自分の結婚式。
「……終わりますね、王都での生活が」
「ああ、そんで待望のスローライフだ!」
終わりが来て、始まりが来る。
ついに自分の夢だった「わたしの箱庭」での生活が始まるのだ……
「ダンジョンも、ありますけどね」
***
宴は深夜まで続いたが、さすがに学生たる2人の王子は卒業式があるからと途中で部屋へ戻った。
オヴィスやフェリス、パッセルも同じく寮へと戻った。
「……ちょっと寂しそうだったな、パッセル殿」
「ああ、あまりこうした集まりに参加する方でないから、最後ぐらい一緒に飲めば良かった」
今まで散々世話になった騎士たちや、意見を交わしたり仕事を依頼したりした官吏たちも反省した。
「これまで最前線に出て国民を救ってきたのはパッセル殿だったのに、何の感謝もせずただ西へと追い出すような真似をしても良いのか」
「……いや、良いわけが無い」
「パッセル殿が王都を発つのは、いつだ?」
「確か結婚式の次の日……」
「じゃあその日だ」
遠くへ行ってしまうと思えば、今までの理不尽とも思える追い込みも懐かしく感じるものだ。
「盛大に送りだそう、パッセル殿を」
「ああ、今までの感謝を示すんだ、アルバトルス史上、最も偉大な民であるパッセル殿に」
彼らはわらわらと集まり、計画を練り始めた……
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