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小説の世界
悪役令息フェリス・シルウェストリスの苦痛
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フェリスは16歳になった。
だから貴族が多く通う高等学校へ行くことになった。
王立アルカ学園…小説の舞台である。
王子とは顔合わせの後のパーティーで儀礼的な会話をしたきり個人的な交流はしていない。
大きな茶会などでたまに会うだけだ。
あちらからなんの誘いも来ないし、もちろんこちらからの誘いは全て断られている。
だからいっそこのまま、婚約破棄までほぼ他人のまま過ごそうと決めた。
「王子に構うから断罪されるんだ。
放っておけば婚約解消で済むかもしれない」
そして、卒業したら小説を書いて静かに暮らすのだ。
小説書きは、バース性が重視されない数少ない職業の一つ…
「はぁ~、早く婚約解消してくれないかな」
小説ではそれなりに素敵に見えた王子だが、当事者になってみればただの傲慢クソ野郎である。
「本当の愛を見つけたら追放してやる」
なんて言葉を吐くぐらいだ、こちらから愛してやる義理すら感じない。
だというのに…
「フェリス!」
「ごきげんよう、我が王国の偉大なる太陽の御子。
何かご用ですか?」
「ふん、今日も高慢な態度だな。
俺に捨てられたら、お前を婚約してくれる者なんか一人として居ないのだぞ?」
「はい、仰せの通りで御座います」
「何だ、その態度は!
貴様には少しも「俺の機嫌を取らなければならない」とか、そういう気持ちは無いのか!」
「殿下に嫌われている私には「お傍に寄らない」事こそが、出来る最善で御座いますれば」
…わざわざ向こうからこっちに突っかかってくるのだ。
大変に困った事に。
しかもイエスマンな側近まで伴って…
アルファの方が上だと言う割に、フェリス一人に対して二人態勢なのだ。
おまけに仲間であるはずのオメガ達が集められた教室の中は王子の意見に賛同する者ばかりで、
「公爵家だからってオメガのくせにお高くとまっている」…とか。
「アルファを立ててあげないなんて、オメガとしてどうなんだ」…とか。
こんなので、毎日楽しいわけがない。
あまりに酷い差別意識に、フェリスは気が狂いそうだった。
特にアルファどもの特権意識と言ったら…!
「殿下、フェリス殿の匂いに中てられでもしたら大変です。もう戻りましょう」
「ああ…アラウダの言う通りだな。
強引に番になどされたらたまったもんじゃない」
オメガが媚びないというだけで、世のアルファは生意気だと叫び出す。
それで相手が折れなければ、二言目には「番にさせられたら堪らん」と言って逃げる。
「は、オメガの癖にアルファと対等のつもりとは」
「立場をわきまえて頂けますか?フェリス公子。
我々はアルファで、あなたはオメガ。
あなたは我々の助けが無ければ生きていけない生き物なのですよ」
……今の王子は最低の差別主義者。
ついでに側近のアラウダも平然と差別的な発言をする糞野郎。
だが、この意識をごっそりと覆す人物が現れる。
それがこの王子の運命の番…
パッセル・モンタルヌス。
この世界の元となっているであろう、小説「わたしの箱庭」の主人公。
「…そろそろ、転入してくるはずなんだけどな」
とにかく、この狂った世界を何とかして欲しい。
王子の意識さえ変えられれば、少しはましな学園生活が送れるかもしれない…
彼の登場により、自分が断罪されてしまうとしても。
もうこの腐り切った貴族社会で生きていくよりはずっといい!
「早く転入して来ないかなぁ…」
なのに、彼は未だ姿を見せない。
小説の通りであれば、パッセルはフェリスや王子が入学して1週間ほどで入学してくる。
そして初登校の日にたまたま王子と校舎の入り口でぶつかって転倒する。
そしてパッセルを助け起こした時、王子は彼の香りを嗅ぎつけ…運命の人だと直感する。
パッセルもまた同時に、王子の放つ香りに強く惹かれ…2人は恋に落ちる。
その後、パッセルは自分のバース性も知らないままフェリスと同じオメガクラスに編入される。
そう、パッセルは自分をオメガだと知らないのだ。
なぜなら
「ここ数十年、平民のアルファは生まれていない」
だから
「平民は全てベータであると推定される」
なので
「バース性診断は不要である」
…と、数十年前に国の方針で決まったから…
という裏設定があった事は、転生してから知ったけれど。
話を戻そう。
小説では、運命の人を手に入れたい一心の王子が度々オメガクラスを訪れ、パッセルと会話したり、ランチの約束をしたり、デートに誘ったりする。
フェリスがパッセルと同じクラスにいるにも関わらず、である。
クソ無神経野郎である。
そしてそのクソ野郎にまんまと嫉妬心をかきたてられたフェリスは、パッセルを虐め抜く……
でも、今のフェリスには嫉妬など毛の先ほどもしないだろうと確信がある。
繰り返すが、クソ無神経野郎である。
そして今現在はレイシストでモラハラ野郎。
ギリ顔は好みだったから、そこはプラスで…
プラマイ=ゼロ。いやマイナス。
王子を好きになる要素、マイナス。
だから……。
「早く来て、パッセル・モンタルヌス…」
そうして、僕をここから救い出して欲しい。
あんな王子、僕は要らないから…
断罪だって、喜んで受け入れるから。
「早く王子の心を射止めて、僕をここから追い出して」
だがその願いも虚しく、パッセル・モンタルヌスは暫くフェリスの前に姿を現わさなかった。
だから貴族が多く通う高等学校へ行くことになった。
王立アルカ学園…小説の舞台である。
王子とは顔合わせの後のパーティーで儀礼的な会話をしたきり個人的な交流はしていない。
大きな茶会などでたまに会うだけだ。
あちらからなんの誘いも来ないし、もちろんこちらからの誘いは全て断られている。
だからいっそこのまま、婚約破棄までほぼ他人のまま過ごそうと決めた。
「王子に構うから断罪されるんだ。
放っておけば婚約解消で済むかもしれない」
そして、卒業したら小説を書いて静かに暮らすのだ。
小説書きは、バース性が重視されない数少ない職業の一つ…
「はぁ~、早く婚約解消してくれないかな」
小説ではそれなりに素敵に見えた王子だが、当事者になってみればただの傲慢クソ野郎である。
「本当の愛を見つけたら追放してやる」
なんて言葉を吐くぐらいだ、こちらから愛してやる義理すら感じない。
だというのに…
「フェリス!」
「ごきげんよう、我が王国の偉大なる太陽の御子。
何かご用ですか?」
「ふん、今日も高慢な態度だな。
俺に捨てられたら、お前を婚約してくれる者なんか一人として居ないのだぞ?」
「はい、仰せの通りで御座います」
「何だ、その態度は!
貴様には少しも「俺の機嫌を取らなければならない」とか、そういう気持ちは無いのか!」
「殿下に嫌われている私には「お傍に寄らない」事こそが、出来る最善で御座いますれば」
…わざわざ向こうからこっちに突っかかってくるのだ。
大変に困った事に。
しかもイエスマンな側近まで伴って…
アルファの方が上だと言う割に、フェリス一人に対して二人態勢なのだ。
おまけに仲間であるはずのオメガ達が集められた教室の中は王子の意見に賛同する者ばかりで、
「公爵家だからってオメガのくせにお高くとまっている」…とか。
「アルファを立ててあげないなんて、オメガとしてどうなんだ」…とか。
こんなので、毎日楽しいわけがない。
あまりに酷い差別意識に、フェリスは気が狂いそうだった。
特にアルファどもの特権意識と言ったら…!
「殿下、フェリス殿の匂いに中てられでもしたら大変です。もう戻りましょう」
「ああ…アラウダの言う通りだな。
強引に番になどされたらたまったもんじゃない」
オメガが媚びないというだけで、世のアルファは生意気だと叫び出す。
それで相手が折れなければ、二言目には「番にさせられたら堪らん」と言って逃げる。
「は、オメガの癖にアルファと対等のつもりとは」
「立場をわきまえて頂けますか?フェリス公子。
我々はアルファで、あなたはオメガ。
あなたは我々の助けが無ければ生きていけない生き物なのですよ」
……今の王子は最低の差別主義者。
ついでに側近のアラウダも平然と差別的な発言をする糞野郎。
だが、この意識をごっそりと覆す人物が現れる。
それがこの王子の運命の番…
パッセル・モンタルヌス。
この世界の元となっているであろう、小説「わたしの箱庭」の主人公。
「…そろそろ、転入してくるはずなんだけどな」
とにかく、この狂った世界を何とかして欲しい。
王子の意識さえ変えられれば、少しはましな学園生活が送れるかもしれない…
彼の登場により、自分が断罪されてしまうとしても。
もうこの腐り切った貴族社会で生きていくよりはずっといい!
「早く転入して来ないかなぁ…」
なのに、彼は未だ姿を見せない。
小説の通りであれば、パッセルはフェリスや王子が入学して1週間ほどで入学してくる。
そして初登校の日にたまたま王子と校舎の入り口でぶつかって転倒する。
そしてパッセルを助け起こした時、王子は彼の香りを嗅ぎつけ…運命の人だと直感する。
パッセルもまた同時に、王子の放つ香りに強く惹かれ…2人は恋に落ちる。
その後、パッセルは自分のバース性も知らないままフェリスと同じオメガクラスに編入される。
そう、パッセルは自分をオメガだと知らないのだ。
なぜなら
「ここ数十年、平民のアルファは生まれていない」
だから
「平民は全てベータであると推定される」
なので
「バース性診断は不要である」
…と、数十年前に国の方針で決まったから…
という裏設定があった事は、転生してから知ったけれど。
話を戻そう。
小説では、運命の人を手に入れたい一心の王子が度々オメガクラスを訪れ、パッセルと会話したり、ランチの約束をしたり、デートに誘ったりする。
フェリスがパッセルと同じクラスにいるにも関わらず、である。
クソ無神経野郎である。
そしてそのクソ野郎にまんまと嫉妬心をかきたてられたフェリスは、パッセルを虐め抜く……
でも、今のフェリスには嫉妬など毛の先ほどもしないだろうと確信がある。
繰り返すが、クソ無神経野郎である。
そして今現在はレイシストでモラハラ野郎。
ギリ顔は好みだったから、そこはプラスで…
プラマイ=ゼロ。いやマイナス。
王子を好きになる要素、マイナス。
だから……。
「早く来て、パッセル・モンタルヌス…」
そうして、僕をここから救い出して欲しい。
あんな王子、僕は要らないから…
断罪だって、喜んで受け入れるから。
「早く王子の心を射止めて、僕をここから追い出して」
だがその願いも虚しく、パッセル・モンタルヌスは暫くフェリスの前に姿を現わさなかった。
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