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二つの世界が出会う時
王子と側近
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王子は3人の輪に加わり、非礼を詫びた。
「すまん、立ち聞きなどという無礼な真似を…」
「お構いなく。
今までのフェリス様への態度に比べれば、大した事ではありません」
パッセルは王子に対し、辛辣な一言を放った。
王子はそれにも真摯な態度を示した。
「…そうだな、オメガだオメガだと言って、フェリス自身を少しも見る事が無かった。
勝手にこうだろうと決めつけて、馬鹿にして…最低な行いだった」
「そうですね、最低でしたね」
「本当に、済まなかった」
フェリスも堂々と王子に言いたい事を言った。
王子もフェリスに心から謝罪した。
それを聞いたクレイドは、王子の後ろへ声をかけた。
「王子の尻馬に乗って言いたい放題してたお前は謝罪しないつもりか?」
「…はい、大変申し訳ございません」
アラウダもまた謝罪した。
ただ、今までの言葉を恥じなければならないと、分かってはいるが納得していないようだ。
その事を嗅ぎ取ったのか、パッセルが大きな声で食堂中に聞こえるように言った。
「大体、16歳のヒヨッコが『オメガは誘う性だ』とか良く抜かしたものですな。
見ていてこっちが恥ずかしくなりますぞ?」
それともアルファ様の頭には、良い血筋を残す為にそういう知識が沢山詰まっているのですかなぁ?
とパッセルは大きめの独り言を言った。
フェリスが追撃した。
「アラウダ殿だって、オメガであるお母上様に産んでもらったのでしょう?
自分の親を散々人前で馬鹿にしているのと同じと、何故気が付かないのです」
その上、王子を産んだ王妃様をも散々に貶めている事に気づかないで、良く王子の側近をやっていられますね、アルファ様は面の皮まで優秀なんだなぁ、へぇー…とフェリスは続けた。
ついでにクレイドも言った。
「そんなだから成績でパッセルに負けるんですよ?
ついこの間まで文字の読み書きも出来なかった、農民上がりのパッセルにね」
「う、うう…す、すみません…」
「せっかくアルファに生まれたのに、何の努力もされないからでは?
やればできるからやらない、だから出来ない。
こんな事も分からないのを良く腰巾着にしましたなぁ、さすが我が国の太陽、フォエバストリア殿下様だ」
「…本当に、すまなかった」
「そんな事を言って、その賢い頭の中じゃあ明日にはこれが自分への称賛にすり替えられるんでしょう?」
「なんたってアルファ様だからなぁ」
「ええ、アルファ様ですものね」
王子とアラウダは顔を青くしたり赤くしたりしながら耐えた。
そして「これがバース性で差別されるという事なのだ」と、少しだけ理解した。
だからパッセルは静かに二人を諭した。
「王子、先日申し上げましたでしょう。
人を殴って良いのは殴られる覚悟のある者だけだ、と。
つまりこういう事です、お分かり頂けましたね?」
そうして、王子とアラウダはもう一度頭を下げ…
もう二度とバース性による差別も出自による差別もしない、と3人に誓った。
3人と2人は一応の和解をし、暫くは和やかに…多少緊張感のある食事を楽しんだ。
***
食事が終わったところで、パッセルは王子に質問した。
「ところで王子殿下、何故こちらへお越しに?」
「ああ、その…パッセルが運命の番かどうかを、確認したくて」
意外と純情だったらしい王子は、あの日フェリスから聞いた言葉を忘れられなかったようだ。
3人はさらりと「こいつ馬鹿かな」と思ったが、顔には出さなかった。
パッセルは言った。
「…確認してどうするつもりです」
「それは、その…」
もじもじするな、気持ち悪い。
3人に加え、多分アラウダも少しそう思った…とパッセルは見た。
だからバッサリお断りする事にした。
「私は辺境へ行くのです。
私と結婚するなら共に辺境へ行くご覚悟を。
それが出来ぬなら…」
パッセルはフェリスの顔を見る。
嫌ですぅ~、と顔に書いてある。
…が、一応聞いてみる。
「…どうします?フェリス殿」
「うーん、正直、僕と殿下の婚約を好意的に捉えている家は少数派だし、僕個人としても公爵家がこれ以上力を持つのはバランスが悪いよね。
だから結婚はちょっと…ということで、殿下にはさっさと婚約破棄して頂いて」
「えっ」
「殿下はずっと、もっといい相手がいたら乗り換えるって言ってたでしょ?
そのいい相手に早いとこ話つけてもらって…」
「えっ…あ、いや…その」
「えっ、いないんですか?」
「…………いな、い」
その言葉に、フェリスはプチンとキレた。
「何やってるんですか!?あんなに言ってたじゃないですか、真実の愛を見つけてお前を辺境に捨ててやるって!
今更捨てないって言われてもこっちは困るんですけど!?」
「えっ、ええっ…」
「さっさと婚約破棄してください。
相手はいくらでもいるでしょ、あんた王子様なんだからっ!!」
もう王子の言葉に怯えるフェリスは過去の過去。
婚約破棄どんとこい!と言えるほど強くなった婚約者を見て、王子は…
ショックを受けるとともに、猛烈な悔しさを覚えたのだった。
「すまん、立ち聞きなどという無礼な真似を…」
「お構いなく。
今までのフェリス様への態度に比べれば、大した事ではありません」
パッセルは王子に対し、辛辣な一言を放った。
王子はそれにも真摯な態度を示した。
「…そうだな、オメガだオメガだと言って、フェリス自身を少しも見る事が無かった。
勝手にこうだろうと決めつけて、馬鹿にして…最低な行いだった」
「そうですね、最低でしたね」
「本当に、済まなかった」
フェリスも堂々と王子に言いたい事を言った。
王子もフェリスに心から謝罪した。
それを聞いたクレイドは、王子の後ろへ声をかけた。
「王子の尻馬に乗って言いたい放題してたお前は謝罪しないつもりか?」
「…はい、大変申し訳ございません」
アラウダもまた謝罪した。
ただ、今までの言葉を恥じなければならないと、分かってはいるが納得していないようだ。
その事を嗅ぎ取ったのか、パッセルが大きな声で食堂中に聞こえるように言った。
「大体、16歳のヒヨッコが『オメガは誘う性だ』とか良く抜かしたものですな。
見ていてこっちが恥ずかしくなりますぞ?」
それともアルファ様の頭には、良い血筋を残す為にそういう知識が沢山詰まっているのですかなぁ?
とパッセルは大きめの独り言を言った。
フェリスが追撃した。
「アラウダ殿だって、オメガであるお母上様に産んでもらったのでしょう?
自分の親を散々人前で馬鹿にしているのと同じと、何故気が付かないのです」
その上、王子を産んだ王妃様をも散々に貶めている事に気づかないで、良く王子の側近をやっていられますね、アルファ様は面の皮まで優秀なんだなぁ、へぇー…とフェリスは続けた。
ついでにクレイドも言った。
「そんなだから成績でパッセルに負けるんですよ?
ついこの間まで文字の読み書きも出来なかった、農民上がりのパッセルにね」
「う、うう…す、すみません…」
「せっかくアルファに生まれたのに、何の努力もされないからでは?
やればできるからやらない、だから出来ない。
こんな事も分からないのを良く腰巾着にしましたなぁ、さすが我が国の太陽、フォエバストリア殿下様だ」
「…本当に、すまなかった」
「そんな事を言って、その賢い頭の中じゃあ明日にはこれが自分への称賛にすり替えられるんでしょう?」
「なんたってアルファ様だからなぁ」
「ええ、アルファ様ですものね」
王子とアラウダは顔を青くしたり赤くしたりしながら耐えた。
そして「これがバース性で差別されるという事なのだ」と、少しだけ理解した。
だからパッセルは静かに二人を諭した。
「王子、先日申し上げましたでしょう。
人を殴って良いのは殴られる覚悟のある者だけだ、と。
つまりこういう事です、お分かり頂けましたね?」
そうして、王子とアラウダはもう一度頭を下げ…
もう二度とバース性による差別も出自による差別もしない、と3人に誓った。
3人と2人は一応の和解をし、暫くは和やかに…多少緊張感のある食事を楽しんだ。
***
食事が終わったところで、パッセルは王子に質問した。
「ところで王子殿下、何故こちらへお越しに?」
「ああ、その…パッセルが運命の番かどうかを、確認したくて」
意外と純情だったらしい王子は、あの日フェリスから聞いた言葉を忘れられなかったようだ。
3人はさらりと「こいつ馬鹿かな」と思ったが、顔には出さなかった。
パッセルは言った。
「…確認してどうするつもりです」
「それは、その…」
もじもじするな、気持ち悪い。
3人に加え、多分アラウダも少しそう思った…とパッセルは見た。
だからバッサリお断りする事にした。
「私は辺境へ行くのです。
私と結婚するなら共に辺境へ行くご覚悟を。
それが出来ぬなら…」
パッセルはフェリスの顔を見る。
嫌ですぅ~、と顔に書いてある。
…が、一応聞いてみる。
「…どうします?フェリス殿」
「うーん、正直、僕と殿下の婚約を好意的に捉えている家は少数派だし、僕個人としても公爵家がこれ以上力を持つのはバランスが悪いよね。
だから結婚はちょっと…ということで、殿下にはさっさと婚約破棄して頂いて」
「えっ」
「殿下はずっと、もっといい相手がいたら乗り換えるって言ってたでしょ?
そのいい相手に早いとこ話つけてもらって…」
「えっ…あ、いや…その」
「えっ、いないんですか?」
「…………いな、い」
その言葉に、フェリスはプチンとキレた。
「何やってるんですか!?あんなに言ってたじゃないですか、真実の愛を見つけてお前を辺境に捨ててやるって!
今更捨てないって言われてもこっちは困るんですけど!?」
「えっ、ええっ…」
「さっさと婚約破棄してください。
相手はいくらでもいるでしょ、あんた王子様なんだからっ!!」
もう王子の言葉に怯えるフェリスは過去の過去。
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ショックを受けるとともに、猛烈な悔しさを覚えたのだった。
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