話が違う2人

紫蘇

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二つの世界が出会う時

苦しめの言い訳

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転生者と知られると、多分面倒な事になる。

フェリスからそう聞いていたパッセルは、これまたフェリスから聞いた裏技でこの場を切り抜けようとした。

「子どもの頃から、随分と夢に見ましたもので」
「……夢?」
「そうです、ここではない何処かの夢…
 最期には全てが炎に包まれて、世界中の生きとし生けるもの全てが燃やし尽くされる夢です」
「…それはまた、何でだ」
「分かりませぬ」

つまり、世界のKUROSAWAばりに「こんな夢を見た」で誤魔化す…「夢」という映画を、フェリスは知らなかったけれど。

パッセルは語った。

「こんな夢を見るのです。
 大国の都合で敵国の兵士になった旧友を、十把一絡げに殺してしまう夢。上官に死ねと命令される夢…そして、部下に死んでこいと命令する夢。
 食い物も無い場所で、目だけをぎらつかせながら、ただ敵を殺す事に邁進する夢。
 正義と正義と正義の三つ巴に巻き込まれ、親兄弟を木っ端微塵にされる夢…。
 そして、この世界に生まれてよかったと心底安堵するのです。ああ、ここに戦は無いのだ…と」

具体的な内容を語る事で、向こうから持ってきた知識を夢で得た知識だと言い張る事も可能になる。

当に裏技!

周りの様子をうかがうと、そういうことか…と納得する様子が見える。
やはり学生さんはチョロい…
だが。

「フェリスもお前も、不思議な夢を見るのだな」
「!」

流石というべきなのか、王子はそう簡単に騙されてはくれないらしい。
仕方なく、パッセルは演技を続けた。

「……フェリス殿も?」
「ああ、ここではない何処かの、不思議な夢の話を」

つまり、フェリスの「夢だと言って誤魔化せばいける」というのは半分経験談だったのだ。
ちゃんと聞いておかなかった自分パッセルが悪い。
それから、王子とフェリスの仲が多少修復され始めている事に気付かなかった事も。

パッセルは内心ドキドキしながら言った。

「そうだったのですか、それはまた…
 フェリス殿も戦の夢を?」
「いや、違う…戦ではなく、病の話だ。
 こういう薬があれば、とかな」
「なるほど…それで薬学を修めようとお考えに?」
「ああ、言われてみればそうかもしれんな」

この世界にどのような病気があるのかをパッセルは知らない。
知っているのは作物の病だけだ。
それにはやはり薬を調合して対策せねばならない。
パッセルには、今薬学の知識を面白い程に吸収し成長しているフェリスの助力が必要不可欠、だから…

フェリス殿を易々と王子にくれてやる訳にはいかん。

「…フェリス殿も、辺境へ共に参りましょうと語りあう仲でございます。
 何か御縁があるのやもしれませんな」
「…そう簡単に、フェリスを渡すと思うな?」
「殿下こそ、フェリス殿の御心をすぐに引き戻せると思わぬ事です。
 フェリス殿の優しさにつけこむ事、まかりなりませんぞ?」

もはや二人の会話は
「娘さんを下さい」
「お前みたいな若造にはやれん」
…のくだりに似たものがあった。

発情期にあんな事や…が有るとはいえ、パッセルにとってフェリスは息子か年の離れた弟のような存在だ。
信用できない人間には嫁がせたくない!
それに、フェリスは…。

「ならば貴殿は、俺の最大の障壁だな」
「いやいやこの程度の壁、次代の王になる方であれば簡単に越えて頂かねば」

次代の王。
その言葉は、軽々しく言って良いものでは無い。

今度は別の意味でパッセルに注目が集まった。
アルファの王子に堂々と対峙するオメガの平民…
バース性も身分もかけ離れた二人がこうして堂々と意見を言い合っている姿は、実に象徴的だった。

アラウダの小さな呟きが聞こえた。

「この構図こそが、王子の目指す世の中…?」

参加者のほぼ全員が、この光景を目に焼き付けた。
そして考え始めた。

こういう世の中に、していくべきか否か…。

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