話が違う2人

紫蘇

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学園2年目

いわゆる知恵熱

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クレイドとフェリスに恋愛相談した翌日、パッセルは自室から出て来なかった。
様子を伺いにいったフェリスによれば、熱が出て動けないらしい…とのこと。

「どうしたんでしょう、パッセルさん…」
「最近忙しいし、疲れてるんじゃねえかな」
「熱さましのポーション、作っとけばよかった…!」

オヴィスとクレイドとフェリス…第一寮組の3人は、後でお見舞いに行こうと話し合った。
それまではそっと寝かせておこう。

「オヴィス、パッセルが寝込んでる事、他の奴に言うなよ」
「えっ、何で…」
「人に聞かないで自分で考えてごらん、オヴィス。
 それを癖にしないと、周りに惑わされる王子妃になっちゃうよ!」
「は、はいっ!」

オヴィスはパッセルの不調をどうして人に言っては駄目なのか、ウンウンと考え始めた。
これはこれで素直すぎて困るんじゃないか…と思いながら、クレイドは言った。

「フェリス、オヴィス、悪いが俺はここに残る」
「そっか、発情期もそうだもんね」
「ああ、最近は不審な奴が訪ねてくる事も無くなったけど、万が一って事もある」

そもそも、クレイドが騎士科を選んだのはパッセルを守るためだ。
騎士科の成績上位者には帯剣が許されている。
だからクレイドは努力を怠らなかったし、怠る事はできなかったのである。

「じゃ、僕らは授業に行くよ。
 お昼ご飯、適当に買って持って来るから」
「ああ、じゃあまた昼に」
「……う~~ん……」

さっきクレイドが言った事で答えは出ているのに、オヴィスはまだ考えている。
この調子で間に合うかな…と少し心配になりながら、フェリスはオヴィスの手を引いて教室へ向かった。

***

一方、寝込んでいるパッセルは落ち込んでいた。

「ちょっと経験の無い事を考えただけで、こんな事になるとは…」

これは知恵熱だ、何も考えず寝よう、と思えば思う程あれこれと考えてしまう。
特に自分の恋心についてだ。
自分ではなんの意識もないのに、周りからはリュノ王子の事が好きなのだと言われる事に納得がいかない。

「…男女が仲良くしてるだけで、付き合ってるとか言い立てるアレじゃないのか」

ちょっと女子と話をしただけで、あいつと付き合ってるのかとか、好きなのかとか…
暇を持て余した中学生の妄想。
恋人というものに対する大いなる憧れからくるひがみ。

「大体、そんなに、態度を変えているつもりは無い…」

エイギルフェルド王子からはギルと呼べ、と言われているが、一度も呼んだ事は無い。
リュノ王子の事も、たった一度、錯乱して呼び捨てにしたが、それ以降は無いはずだ。

体の関係で言えば、一番濃厚な接触をしているのはフェリスだ。
いや、時々リュノ王子からも一方的に触られたり、キス…

「っ…」

そうだ、エイギルフェルドともキスをした。
オヴィスが止めてくれたから濃厚なやつは未遂で終わったけれど、それが無ければその先へも進んだだろう。

パッセルの中にいる奥津四郎の中では、キスは大して重要なものでは無かった。
体育会系の悪ノリで、ファーストキスは罰ゲームで消え、ディープキスすら何度も消費してきた…

「そうか、キス…」

パッセルは思い出した。
冬休み、山の中でリュノとしたキス。
たかがキスごときで、蕩けるような感覚に陥ったのは、あの時が初めて…

「…だが、上手い下手はあるかもしれんし」

ただ、下手よりは上手い方が良いのは確かだ。
キスでも…セックスでも。

「…もう一度、エイギルフェルド王子と、キス…して、みようか」

そこで何もなければ、リュノを選ぶ…
いや、あんな若い子に気を持たせるような事をしては駄目だ。
ここはどちらもきっぱりと断って、卒業して3年以降に結婚イベントが起きるのを待った方が…

「…何も今、決めなくてもいい…」

そうだ、まだ16歳なのだから、あと20年ぐらい結婚なんて考えなくていい。
前世では36歳で死んだのだから、それ以上に生き延びられたなら、その時に考えれば…。

「先延ばしに、するしかない」

そうしているうちに、二人とも他に好きな人ができるかもしれないし、運命の番に出会う事もあるかもしれない。
だったらそれはそれで目出度い事だ…

「今引き返せば、笑って…」

笑って?
…そう、笑顔で祝える、だろう。
エイギルフェルド王子は勿論……リュノ王子の、事も。

「俺は、辺境へ行くんだ。
 辺境で農園をやって、村を作って、町に発展させて、それで…」

時には災害もある。魔物も襲ってくる。
だけど、戦争のない日々を…
死んでしまった「わた箱」仲間の分まで、俺がやり遂げるんだ。
それであの世へ行った時、彼らに話してやるんだ。
「わた箱」みたいな世界があるぞ、って。

「…みんなの魂が、焼失していません様に」

そうして、またここへ、今度はみんなで戻って来て…

だけど次の人生には、今生で得た友人も仲間もいないだろう。
だから記憶はきれいさっぱり消してもらって、それで…

「そうか、普通前世の記憶が無いのは、そういう事か」

もし前世を覚えていたら、孤独で仕方ないだろう。
家族も友人も、愛する人も…


…と、パッセルが埒も無く考えていると、扉の外で騒ぐ声がする。
クレイドと誰かがもめているような…

と、その時。

「パッセル!熱があるって、大丈夫か!」
「パッセル!大丈夫か、熱があるって!」

リュノ王子とエイギルフェルド王子が、大体同じような事を言いながら部屋に押し入ってきたのだった。


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