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学園2年目
不思議なトリオ
しおりを挟む衝撃の発表がなされてから、学園の空気は一気に平穏なものとなった。
今まで派閥争いをしていた王家派・貴族派・領主派がそれぞれ納得する形でコトが収束したのだ。
あれ以降、小さな小競り合いはあるものの、話し合いで解決できる範囲の事に収まっている。
「後はモンタルヌス家とカヌス家の問題だな」
「ああ、西の辺境を治めるには相当の金がかかる」
「まさか…押し付け合い?」
「そうだ。だがモンタルヌス家は今、金が無い」
「金が無いのに領主派の筆頭なのか?」
「まあ、代々そうだし、それで困る事も無いしな」
王家派や宮廷貴族たちにとっては、金の有る無しは派閥のトップに立つための大きなファクターだ。
自分の意見を国政に反映させるには、意見に賛成してくれる人間を集めなければならない。
賛同者を集めるために、金をかけて夜会を開き社交をし、時には他人のゴシップを集め…
だが、領主たちは違う。
「領主って、その土地を治める人間だろ。
税金以外の国政なんかどっちでも良いんだ」
派閥の長になったからとて、それで魔物が襲って来なくなるわけでも、嵐が領地を避けてくれるわけでもない。
どこでも地面は揺れるし、大雨・洪水、日照り・干ばつ、害虫の大量発生…
いつ何かあるか分からない。
だからできるだけ貯め込むのが当たり前。
金をばら撒くなんて、とんでもない!
決めるのにも金がかかる、だったらもう筆頭は、ずーーーーーーっとモンタルヌス家でいいじゃん。
被災した時の減税交渉さえ…
……うん?
「……なるほど、モンタルヌス家か」
「……なるほど」
何がなるほどなのかは分からない。
分からないけれど、何故かそこにいた全員が謎に納得したのであった。
***
一方、第一寮裏の勉強会では妙な緊張感を漂わせる3人組が出来た。
三角関係と言うには矢印の数が足りない3人組。
1人の男を取り合う2人の男…
つまりはパッセルとリュノ王子とギル王子の3人組だ。
今日も他のメンバーから少し離れた場所で、土を掘り返している。
「…と、耕す時は、風の刃を縦回転させて…渦を横にしたイメージですね」
パッセルの言葉を聞き、それをリュノは絵で、ギルは文字で表現するためメモを取る。
メモを取った後、二人がそれを実践してみる。
それを見て、パッセルが彼らに指導する…
「風で土を切る…というイメージが、難しいな」
「乾いていると、固いですからね。
ですから先に土を柔らかくするのに水を撒きます」
「その水は水魔法で良いんだな?」
「ええ」
畑を作るのだから土魔法…と思いきや、魔法農法で使うのは主に風と水の魔法だ。
土魔法を使うのは、あぜ道を作る時ぐらいだ。
「この範囲分、とイメージが付きやすい様に、杭を立てるなどしておく…
この作業は魔法を使わずにやります。
そうすることで、よりイメージを強固にできますし、背が低くて大きな障害物に気付く事も出来ます」
土魔法は土を成形するのに向いている。
だから、かつて多くの魔法使いが土魔法を使って畑を作り…
結果、土が堅すぎて種を蒔く事も出来ずに終わった。
「土に働きかけるのだから、土魔法だと思いきや風なのだな」
「ええ、土に空気を含ませるのですから風魔法です」
「確かに、畑の土はフワフワしているな」
畑の土に空気を含ませる、を絵でどう表現するか。
そして、いかに分かりやすく字で表現するか…。
耕す事ひとつとっても難問だ。
大きなプロジェクトを前に、3人は一時恋を忘れて真剣に話し合った。
その事がパッセルには有難く、
リュノとギルにはもどかしく…。
そんな、危うい様な強固な様な不思議な光景は、夏休み直前まで続いた。
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