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学園2年目
【クレイド】研修初日
しおりを挟むキレネア辺境伯様との面会が終わった後、迎えに来てくれた辺境騎士団長殿に連れられて最寄りの砦へ行く。
馬で1時間程の移動をする間に、団長殿があれこれと教えてくれる。
「辺境騎士団は現在70名が在籍している。
12棟ある砦にそれぞれ4~5名が配属されていて、その砦で任務に当たっている」
「えっ…たった4、5名でですか?」
「そうだ、少ないだろう?
だから、いざという時の為に屯田兵という仕組みを利用している」
屯田兵とは、平時は農民として畑を耕しているが、いざという時には武器を持って戦う兵隊の事だ。
西の辺境もいずれは、と思っていたから、知識としては知っている。
「兵を農民に、ではなく、農民を兵にしたのだ。
武器や防具を貸し与え、税金を低くする代わり、魔物が湧いた時には共に戦ってもらう」
「なるほど、そういう仕組みですか」
給料の代わりに税金で優遇する方が、金銭的にも楽とか?
そういえば、領地から集められる税金が少なければ、中央に納める額も変わる……はず?
その辺り明日、出納係にでも聞いてみるか。
「毎月ちゃんと訓練もするぞ。
それを指導するのも騎士の仕事の一つだ」
「へえ…仕事の幅が広いんですね」
「ああ、中々大変だが…色々と領内で割引も利くし、領民も慕ってくれるからやりがいはあるぞ」
騎士か…まずはそうだよな。
それが悩ましいとこだ。
割引云々はともかく、騎士になれそうな奴が来てくれるかどうか…。
しかも他人を指導できるとなると、かなり経験を積んでないと。
このあたりの事は、状況に合わせなきゃだな…。
「ためになります、団長殿」
「ああ、西の辺境は随分強い魔物が出ると聞く。
大変だろうが、頑張ってくれ」
「ええ、少しずつ、無理のない範囲を見極めて…」
ただ、かつて賢王をして「どうにもならない」と切り捨てられた事も忘れちゃならない。
本当にゆっくりとしか再開拓は進まないだろう。
あのパッセルが30年と言ったんだから、焦らず進めていくしかないよな。
うんうん……。
「ああ、見えて来たぞ、あれが中央砦だ。
一番多く騎士が詰めている棟で、15人いる。
キネレア領で一番大きな街を守る砦で、一番最初に作られた砦でもある」
砦に付くと、中がどんな造りなのか、どういう仕掛けがあるかとかを教わりながら屋上へ上がった。
「他のもこの砦を手本にしているから造りは似ている。
見張り台に狼煙台…ああ、騎士と騎士の家族が住む宿舎が付いているところが違うかな」
「騎士は全員住み込みなんですか」
「ああ、休暇を取る事を可能にするためにはどうしてもな」
騎士だって人間だ、休みが必要な時はもちろんある。
毎日働けと言われたら俺だって気が滅入る…
パッセルなんかは毎日でも働きそうだけどな。
ふむふむ。
「あそこに旗が見えるだろう、あれが隣の砦だ。
異常があれば、赤い狼煙を上げて隣に知らせる」
「そして、それを見た砦からは援軍を送る…と」
「ああ、そうだ。
援軍を送る前には白い狼煙を上げて、その隣に援軍を出す事を伝える」
「…夜は?」
「この照明を振って伝える。
左右に動くのは普通だから、上下に動かすんだ」
「へえ、この照明自体を…」
しかし、異常があったという情報だけで現場へ駆けつけなきゃならないのか…。
かなりの腕と度胸がいるな。
「…辺境騎士団は近衛に匹敵する、と聞いていましたが、近衛以上かもしれませんね」
「はは、褒めても何も出んぞ!」
団長殿が朗らかに笑うので、俺も釣られて笑う。
「いえ、ここへ学びに来られて良かったです。
今日から暫く、お世話になります」
「おう、こき使ってやるから覚悟しろよ!」
…どうやら良い印象を持ってもらえたようだ。
俺は団長殿としっかり握手を交わし、その力強さに驚きながらも「感じの良い方で良かった」と安堵した。
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