話が違う2人

紫蘇

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学園2年目

一路、西へ

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一方、フェリスの心配をよそに無事に合流を果たしたクレイドとパッセルは、西へ西へと馬を飛ばした。

西の方面には災害救助隊が組織されている地域が多く、途中何人かのメンバーと合流しつつ出来る限り飛ばす。

「どこが一番被害が大きいか、分かりますか」
「カヌス領中心部の町です」
「くそ、街か…建物も多いし、人も多いな」

馬に回復魔法をかけ、できるだけ休憩を減らしひた走る。
駿馬とは言えないパッセルの愛馬も、状況を察したのか健気に「まだやれる」とアピールしてくる。
乗っている方も負けてはいられない。

「…フェリスの回復ポーション、飲むか?」
「ええ、一本だけ」

一日一本、と言って渡された回復ポーションは、パッセルが前世に思いを馳せる味をしている。
思わずファイト一発、と気合いを入れたくなるあの味…。

「街道を整備し直しておいて良かったですね」
「ああ、荷馬車を走らせられるからな」

今まで西へ向かうたび、西から戻るたびに違うルートを使って街道を整備しなおしてきた。
地震に強い壁…筋交いを入れる程度の事ではあるが、少しは役に立っているだろう。

それでも…。

「くそ、また魔物の群れだ!」
「兄上!…先手風、後水、最後は火で」
「分かった…全員戦闘準備!」
「「はい!!」」

パッセルの手から鋭い風が何槍も放たれる。

「次、水!弓部隊、弓をつがえろ!」
「「はい!」」

水魔法が放たれたら、その後は火で魔法攻撃はおしまい。
矢継ぎ早に物理攻撃を加える為に、クレイドが救助隊に指示を飛ばす。
その間に準備を終えたパッセルが、今度は水の槍先を空中に形成し、一気に放つ。

「水・弾・掃射!!」
「弓引け!指示あるまで撃つな!」
「「はい!」」

何匹かの魔物が泡を吹いて倒れる。
だが効いていない魔物も…
風にも水にも耐性のある魔物だ。だから…

「火・弾・掃射!!」
「今だ、放て!!」

パッセルはそれほど得意でない火魔法すら使って魔物たちを怯ませる。
直後、クレイドの号令で弓をこれでもかと引き絞っていた弓使いが一斉に矢を放つ。
とにかく一斉、全体攻撃でこの後の各個撃破を優位に進める準備が整う。

「剣部隊、突撃!」
「「おおお!!」」

クレイドが先頭にたち、まだまだ慣れない剣を握った救助隊メンバーが走っていく。

「とにかく上から叩け!横へ振るな、人に当たる!」
「「はい!!」」

クレイドは的確に指示を出していく。
剣を持った隊員は、大体が農夫だ。
日常鍬や鋤を縦に振る彼らにとって、馴染みのある動きを選択し、同士討ちも予防する。

「デカブツは任せろ!」
「「はい!」」

叩くだけでは殺しきれない魔物はクレイドが斬って捨てる。

騎士科ではチーム戦も授業内容に入っている。

仲間のリーチ内に入らない様に動きつつ、自分の3倍はあろうかという熊を袈裟懸けに斬り倒し、その後ろにいた巨大山羊との距離を詰めこれを逆袈裟懸けに斬りつけた後、首を叩き切る。

「兄上、もう一頭、熊!!」
「ああ見えてる!全員一旦引け!」
「「はい!!」」

急造の剣士隊は弓兵のいる位置まで下がる。
派手に怪我をした隊員はパッセルの前へ行き、治療を受ける。
そうこうしている間にクレイドが、もう一頭の熊と、ついでに3頭の魔猪を倒す。

「よし、無力化完了だ!
 後方部隊、獲物の処理を頼む」
「「はい!!」」
「まずは首を落とす事を忘れるな!
 生きてるかもしれないからな!」

***

度重なる戦闘の末、ようやく被災した村へ入る。

とはいえこの村は震源地から遠く、それほど被害はなく、死亡者・行方不明者ともに無し。
ちゃんと筋交いが仕事をしたようで、多くが倒壊を逃れている。

「王都からの復興支援拠点に良さそうだ」
「ええ、そのように領主殿へ進言致しましょう」

パッセルは集められた怪我人に治癒を施す傍ら、クレイドと話した。
怪我の殆どが倒れて来た家具が原因である事を考えると、家具の固定も防災本で広めねばなるまい。

「……今日は、ここまでですね」
「ああ、さすがに暗くなったら危険だ」

人員が増えた今、彼らの安全を確保するのも仕事のうちだ。
ただ、先を急ぐ旅でもある。

パッセルとクレイドは話し合い、2/3をここへ残して復旧作業と家具を固定する作業に当たらせ、まだ体力のありそうな隊員を連れて早朝に出ようと計画を立てる。

「しかし異常だな…西は魔物が増えやすい土地だとはいえ」
魔物大暴走スタンピードが起きる前兆かもしれません、この先の村の状況次第では、この村へ村人を集めた方がいいかもしれませんね」
「だが行き来すら危険だぞ、あれだけ倒してもまだ出るんだからな」

普段群れない、群れても同種で数匹…という魔物たちが30を越える数で種を越えて群れを成し、街道へ出てくる。
出発して3日で被災地まであと少し、の所までは順調だったのに…。

「もしかして、森にいたくない何かがある?」
「棲み処の洞窟が崩落した可能性もあります…
 だが、やるしかありません、可哀想でも」

地震の前に、動物が異常行動を起こす事がある。
大きな地震の後に余震がある事も考えられる。
より大きな地震が来る事だって…

「…とにかく震源地へ向かいましょう」
「ああ、夜に動けないのは痛いな…」

魔物が出る以上、暗闇を行くのは自殺行為だ。
この世界には街灯が無い…

「…こういう時の為に、街道沿いに松明を立てられる場所を確保しておくのも大事か」

改善したい部分は次から次へと出てくる。
だが今は、目の前の事で手一杯…

「パッセル様、クレイド様!畑に魔物が!」
「分かった、すぐ行く!!」

休む間もなく魔物は襲ってくる。
仕方なくパッセルは魔力回復ポーションの3本目を開けて飲む…

「途中でこれも、買えると良いんですが…」

後から来る騎士団がいくらか持って来てくれる事を祈りつつ、パッセルは走った。


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