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合わさる世界
【ラディア】僕と王子様
しおりを挟むある日いきなり決まった体験学習で、僕は大手を振ってアルカ学園の高等部にやって来た。
「僕、ずっと来てみたかったんだよね」
「あ~分かる!今の高等部って有名人いっぱいだもんな」
……うん、僕の言ってるのはそういう意味じゃないけどね。
僕が会いたいのは一人だけ、だから……。
彼が中等部を卒業してから、1年。
卒業前までは頻繁にお会いできたのに、今は殆どお見掛けする事が無くなってしまった、僕の……王子様。
そんな僕の心を知らず、興奮気味のクラスメイトは言う。
「そうそう!静のエバ殿下に、動のギル殿下。
才女ウルサ様に暗躍のアラウダ様だろ」
「それに『美少年薬師』フェリス様と『魔法騎士』クレイド様、『運命』のオヴィス様に……
『救国の士』パッセル様も!」
「あ~、うん、そうだね」
救国の士・パッセル……。
その名前を聞いて、ちょっと僕はへこむ。
訳あって、僕は彼の事が嫌いだからだ。
けど、クラスメイトたちは僕のそんな気持ちを悟ることなくおしゃべりを続ける。
「なぁ、お前誰に会いたい?」
「そりゃクレイド様一択でしょ」
「あ~そっか、お前騎士科志望だっけ」
「おうよ!ベータでも成り上がれる仕事ったらそれしかねー!」
ベータクラスの仲間は明るいやつが多くて、そんな明るさに助けられて、僕はそれほど落ち込まないでいられる。
大好きなあの人に会えないつらさも……
「あっ、ギル殿下だ」
「えっ、どこ?」
「あっこ」
なんと、ギル殿下はお兄様のフォエバストリア殿下とお話をしていらっしゃるようだ。
中等部にいた頃は、あんなに嫌っていたのに……。
「ギル殿下は、すっかり変わられてしまった」
「えっ、何?」
「何でもない!中等部の時は兄殿下とああやってお話されるとこ見たことないなって思っただけ」
「あー、言われてみれば?」
ギル殿下の兄嫌いは中等部でも有名だった。
ついでに人間嫌いも。
クラスメイトの誰かが言った。
「ギル殿下も、変わられたんだな」
***
僕はベータクラスにいるけど、オメガだ。
といっても、誘引香も薄いし発情期も軽くて短い。
抑制ポーションさえ飲んでいれば、寝込んだりする事も無い。
だから、両親は敢えて僕をベータだと偽る事にした。
なぜなら、中央ではオメガが堂々と差別されていて、人間扱いされていなかったからだ。
オメガはアルファを産む道具。
だからアルファの子を産んだら最後……。
だから、僕にそんな扱いを受けさせたくないって、父さんがそう決めた。
『地方の中等部という選択肢さえあれば……』
けど、王領で官吏をしてる家の子どもは全員、王立アルカ学園中等部へ通うことが義務付けられている。
しかも中等部にいる間は、王宮へ住込みで働かされる。
『いいか、ラディア。
3ヶ月に1回の仕送り品には、必ず抑制ポーションを入れておく。
だからちゃんと飲むんだぞ』
『うん』
『王宮では庭仕事の手伝いに就け。
できるだけアルファやオメガと会わないようにするんだ、いいな』
『うん』
実際、誰にもバレなかった。
ベータの人たちはそもそも誘引香を感じないし、僕ぐらいの華奢な子だって普通にいる。
父さんの作戦は大成功だった……
けど、ギル殿下は違った。
どこでだか僕に目を付けて、僕を「オメガとして通用するベータ」として利用する為に声を掛けて来た……
きっと、僕が本当はオメガだってどこかで気付いたんだ。
気付いていて、敢えて「オメガとして自分の側妃になれ」と命令したんだ。
その頃から、僕はギル殿下のいう事を聞かざるを得なくなった。
でも、最初は嫌々だったはずが、ギル殿下の計画や胸の内を聞いているうちに、僕は少しずつ殿下の事を……。
なのに。
ギル殿下の心は、いきなりパッセルに持っていかれてしまったんだ。
あの頃はこう言ってた。
『正室にパッセルを据え、あれの遺伝子で魔力が豊富な子を作る』
『その上で、その子はお前が産んだ事にする。
そして奴はやはりアルファだったと公表する。
そうすれば、バース性を騙った罪で領主派筆頭のモンタルヌス家の勢いを削ぐ事ができる。
パッセル自身も罪を負い、求心力を失う』
魔力量とバース性は関係しない。
だからその子がオメガだとしても構わない。
魔力が多くて賢い子ならそれでいい。
そしてその子を、次の次の王にする。
自分は王の父親として、後見人に……。
ギル殿下の中には策略しか無かった。
それでも……
『持って生まれる才が飛びぬけているだけでは駄目だ。
それを最大限まで引き出し、誰よりも優れた人間を作る……お前にも手伝ってもらう事は多い。
まずは、優秀な成績だな』
そう言って、僕に勉強を教えてくれて……
なのに。
「高等部へ行ったら『忙しくて時間が取れない』って、そればっかり」
僕は今でも、必死で勉強してるよ。
だってそうすれば、成績優秀者として名前が発表されるから。
そしたら、ギル殿下は嫌でも僕を思い出すでしょ?
あの時、あの計画を語り尽くした相手の事を、ね。
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