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最後の学園生活
再会と報告と
しおりを挟む「……という事で、西の辺境から来た魔物なのか、北の辺境領にダンジョンがあるのか、まだ定かではない」
「分かりました、では後はメジロに」
「ああ、彼の鼻に期待しよう」
ギル王子の報告によれば、西の辺境領との境目を少し過ぎたあたりでダンジョン産魔物が出ているとの事だ。
ただ、ダンジョン産魔物が地上で繁殖していた前例もあり、ダンジョンからなのか西から来たのがその辺りで繁殖を始めたのかは定かでない、との事。
「北の辺境にも、ダンジョン産魔物がいるという事には変わりがないのですね」
「ああ、その通りだ。
ダンジョン産魔物との戦い方は、通常の魔物との戦い方とは異なる。
魔法が使える人間はいるか?」
「ええ、一部の騎士は魔法が使えます。
昨年クレイド殿から魔法剣の指導をして貰いましてね」
「それは心強い、あとは腕の良い治癒師もだな」
ダンジョンに夢を持つ北の辺境伯は、頭の中で早速派遣する人間の選定を始めた。
あいつとあいつと……
「と、いうわけでリュノ殿、パッセル、後は頼めるか」
「ああ、任されよう」
「御意に」
「すまんが、先に休ませて貰えるか?
頭の先から足の先まで、埃まみれでな」
「かしこまりました、殿下」
ギル王子はそう言って、案内係と客間へ行ってしまった。
「あ……」
ラディアはそれを見て、小さな声を上げた。
それを聞いたパッセルはすぐさま指示を出した。
「ラディア、ここまでの行程について報告書をまとめなさい。ギル殿下がご休憩を終えられたら、すぐに提出できるように」
「えっ」
それから、少し遠くにいた案内係に大きな声で話しかける。
「すみません。
お手数になりますが、弟子を部屋まで案内して頂けませんか。
私はまだ打ち合わせがありますから、後ほど参りますので」
「あ、はい!」
「弟子」という言葉で、全員がラディアに注目する。
あれが弟子か、大したことはなさそうだが、これから伸びるとの見立てか、等々の囁きが起きる。
ラディアにはまだ、分からない。
パッセルが自分を「弟子」と呼ぶ事で一体何が起きているのか……。
***
ラディアがいなくなってから、北の辺境伯はパッセルに問うた。
「あの頼りなさそうなのが、弟子なのか?」
「ええ、今のところは魔法だけ、ですが」
「体術や交渉術は」
「先に得意な部分を伸ばして自信を付けなければ、どれも中途半端になるだけでしょう」
「ふむ、なるほどな」
北の辺境伯は、パッセルの言葉に頷いて同意した。
「それで、どのぐらい伸びた?」
「少しずつですが魔力量も増え、命中率も上がっています。
詠唱の方も、自分のやり方が身について来始めたところですが……
私と違って成績優秀で真面目な子ですから、今後もっと伸びるでしょう」
本人のいないところでラディアを褒めるパッセル。
北の辺境伯は大きな発言力を持った貴族だ。
彼に良い印象を持たせられれば、ラディアの恋が成就する可能性も多少は上げられる。
「ほう、そうか」
辺境伯は深く頷き、パッセルの目を見た。
そして……
「ところで、パッセル。
もう数人、弟子を増やす予定は無いか」
「……は?」
とんでもない事を言い始めた。
あまりに突然の申し出に、パッセルは目を見開く。
「なに、カヌス領での魔法使いの活躍を聞いてな。
うちの騎士団にも魔法使いが何人か欲しいんだ。
取り敢えず魔法が出せる人間を集めたが、魔法を教えるとなると難しくてな……」
「私だって、教えるのは得意じゃありませんが」
パッセルは申し出を断るべく、そう発言するが……それはあまりにも謙遜が過ぎた。
いよいよ周りがどう言って良いか悩んで黙る。
「頼む、学園へ帰るまでの間でいいから、な?」
「いきなり長すぎませんか!?」
「そうだ、あまりにも突然すぎるぞ辺境伯殿!」
ようやくリュノ王子が辺境伯に物申した。
だが挨拶を忘れ去ったぐらいに、辺境伯にとってリュノの発言などどうでも良かった。
要はパッセルさえ頷けばいい!
「ラディアの横へ付けておくだけでもいい。
勝手に学んで帰ってくる、それでどうだ」
「面倒を見る人間が増えるだけじゃないですか!」
パッセルも抵抗する。
だが、北の辺境伯は東の辺境伯よりも粘り腰だ。
理由は簡単で、東より余裕がないからである。
冬は寒い。冬は雪が積もる。冬は……
誰も、来てはくれない。
「大丈夫、うちの騎士をちゃんとつけるから」
「そういう問題ですか」
「そういう問題だろう」
……
結局押し問答の結果、同行者が数人増える事になってしまった。
「……何でこんな事に」
「パッセルが悪い」
「何でですか!!」
二人の時間がさらに減りそうな予感に、リュノはただため息をついた。
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