旦那様には気付かれたくない!

紫蘇

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恋する旦那様

遠い国境

 
「……あの村もか」
「そうらしいですね」

王位簒奪のために集められた傭兵(ガルディオラ兵)に占拠された村を占領し直し、彼らが奪った補給物資を取り返したのは昨日のこと。

僕らはまた、途中に出てきた山賊から傭兵に占領された村の情報を得て、とある村にやってきた。

「おい、あれ、見ろ」
「また坊主か……」
「ってことは、結局ガルディオラ兵かよ」
「めんどくせぇ……」

何度も言うけど、この威圧感を放つ戦闘集団に襲い掛かって来る傭兵も山賊も野盗もいない。
行けと命令されて動ける兵士だから出来る事だし、殺される事はないという認識を共有しているからこそ突っ込んでこられるのだ。

「今度のところも、村人が無事だといいんですが」
「あ、さっきの村とは違う領主か?」
「ええ、確かそうです」
「で、いるの」
「分かりません」
「またかよ!」

確かここの元領主は、弟が内紛の首謀者だったとかで捕まったんじゃなかったかな。
身内のやらかしで処刑されるとか、本当にやりきれないだろうな……
しかも奥さんや子どもも、だもんな。

「いくつあるんだ、こういう村は……」
「7つは覚悟したほうがいいかと」
「なんで7……あっ、そうか」

7回も王位簒奪とか、狂気の沙汰だよね。
最初の首謀者が処刑されたの見てないのかな。
それとも、自分は上手くやれると思うのかな。

「じゃあ、あと5つはある、と」
「まあ推測の域を出ませんけど……。
 でも、何も全部占領し直さなくても良いんじゃないですかね?」
「道中にちょっかい出して来ないんならな!」

でも占領ったって、武器や防具を取り上げて、丸坊主にするだけだからなぁ。
あと、ボコボコにして恐怖を植え付けるぐらい……

うん、充分だな。

「よしトマス、今回も頼む」
「はい……雷、2本!」

前の村と同じ様に、僕は村の入口にいる坊主と見張り台にいる坊主に雷を当てる。
そしたら馬車ごと……

「突入!」
「「おお!!」」


***


「僕、治癒魔法上手くなってきたかも」

またもあっさり占領し直せたので、前の村と同じ様に村の中を捜索したり武器防具を回収して叩き壊して使い物にならなくしたり……

これをあと5回……5回で済むよね?

「すまんな、手加減が下手で」
「いえいえ!本当は殺したって文句言われる筋合いないのに、殺さないでもらってるんですから……」

王位簒奪の内紛に参加した、っていうんなら、彼らもフィッツラルド兵を殺してるだろう。
そもそも、物資を横取りする時に補給部隊を殺してるはずだし。

「……本当なら殺されたって文句ないはずなのに、ガルディオラがイチャモンつけてくるってだけで殺されないで済むんだからいいご身分ですよね」
「トマス、怒ってる?」
「そりゃ、理不尽ですもん」

こっちは殺されても文句言うなって言われて、あっちは殺したら許さないなんて、不公平極まりない。
でも、そうしないと軍隊がやってきて、もっとたくさん殺される。

「……今でも、属国みたいなもんですよね」
「そうだなぁ……」
「じゃあいっそウィアグランドの属国になったら良いんじゃね」
「それはそれで大戦争が起きますって」

ガルディオラはもっと派手な戦争がしたいのだ。
緩衝地帯であるフィッツラルドがウィアグランドの属国になれば、それこそ本気で攻めてくるだろう。

「ガルディオラはウィアグランドと戦争したいんです」

だから山賊のふりをしてブンデビルドにちょっかい出して、属国から連れて来た兵士が殺されるのを待っている。
そして、属国の民も大事な帝国の民である、と言って、かたき討ちを口実に戦争をしかけることで、属国の民を懐柔しようとしている。

それなのに、ブンデビルドに殺される兵士は一向に出て来ない。
死んだと騒いでも、生きているぞと本人を差し出されれば……
まあ、秘密裏に殺して『死んだ』ことにしてもいいんだろうけど、とにかく兵士本人の死体があってこそ『かたきを取る』っていう言葉は最大の効果を生む。
だからガルディオラは死体が欲しいんだろうけど、山賊は全員きっちりと強制労働所に送られて厳重な警備の中で生きているのだ。

「でも、ブンデビルド兵団のみんなが山賊を殺さないでいてくれたから、ガルディオラは属国の不満を解消する最高の手立てが使えないで困っているんじゃないかと……推測ですけど」
「推測かぁ」

そう、推測だ。
全部推測であって、願望でもある。

「でもその推測が当たってたらいいな!」
「俺らのした事が無駄じゃないってことだもんな」
「ええ、そうですね」

この推測が当たっていたとしたら。
属国の不満は、順調に蓄積していってるはずだ。
そうしたらフォーゲル陛下に進言した、帝国の足元を揺さぶる計画だって発動できる……。

「そっちのパイプも、どうにかして作らないとね」

フォーゲル陛下が商業都市でやってくれてたら良いんだけど、どうかな……。

ま、出来てなかったら作りにいこう。
どうせ帰りに寄るんだし……ね。


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