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先祖返りの君と普通の僕
運動部会議/野球部会議
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樫原君の頭をモフモフしながら、高原先生は寝てしまった。
モフモフで癒されて、首元が暖かいのもいけなかったのだろう、気持ち良さそうに寝ている。樫原君が尻尾の先で鼻をくすぐると、ふふっと笑う。
「先生、お疲れだなー」
「体力ないもんな」
「かわいー」
女子は高原先生のほっぺをフニフニつついている。
「でさ、これで分かったと思うけど、どうやら高原先生の血には、多分魔素がめっちゃ含まれてる…
俺らには手が出ないけど、プロの選手は使ってるって聞くだろ?「魔素補給剤」ってやつ、あれみたいなもんじゃないかって」
「えー、魔導士でもないのに?」
「お兄さんが魔導士だったって言ってた」
「あ、そういや、魔導士で、タカハラって人いたよな、めっちゃ強いんだって何かで読んだ」
「それで、高原先生にも魔素があるってこと?」
「よく分からんけどそうなんじゃない?」
「…でな、こっから本題よ。
今日さ、こいつ…バスケ部の川田が、ここに先生呼び出すからって、みんなちょっと期待して、室内のやつは多少いつもよりハードな練習したよな?」
こく、こく。全員頷く。
「結果、どう?」
「すごかった。疲れがぽーんってどっか行った」
「もう1回練習出来そうなくらい」
「私、膝痛かったんだぁ、それも治った」
「だろ?だからさ、週1回くらい、高原先生に頼んで、みっっっちり練習してから、治してもらおうぜ」
「ちょ、小田先輩!?」
「そのかわり!先生にたっぷりモフモフを楽しんでもらう、ってのはどうよ」
「えー、お触りと交換って…何かやだぁ」
「じゃあ、モフられ係を選んでだな…なあ、猫科のやつらでモフられ係、やれよ」
「ええっ!」
「先生、猫科が好きなんだと思うんだよ。
俺の頭、モフらなかったし、矢吹もモフモフされなかっただろ?ウサギの山辺も、クマの河本もそんなに触らなかったし…でも川田の頭はモフってた」
小田君の観察力がすごい。
キーパーをやっているだけのことはある。
「だから…かっしーと、川田、あと…本山、は、女子だから、駄目…で、だから、かっしーと川田」
「だ、駄目でしょ、川田が可哀想ですよ」
「僕、高原先生にモフモフされるのは嫌じゃないので、モフられ係でもいいっすよ!」
「な!?」
「高原先生、優しいし、歴史以外の勉強も見てくれるし、お世話になってるから…」
照れながら川田君が言うのを見て、樫原君がなぜかカッとなる。
「いーよ、川田、俺がやる、先生には…先生のお兄さんには、命助けてもらったし、俺の方が全然お前より世話になってるからな!」
なぜかムキになる樫原君は、先生を他の部に渡すわけにはいかねー、と、ゴニョゴニョ理由を述べる。
「んじゃ決まりな。
高原先生に、週1回、ここで血を舐めさせてもらって、代わりにかっしーを存分にモフモフしていいですよ、って、交渉してみようぜ」
「そうね、先生が嫌でなければ…だけど」
さっきちょっと怯えてたし…と、卓球部の猫型、本山さんが言って、会議は解散…
「ところで、先生の家、誰か知ってる?」
「あ」
「送ってやんねーと駄目だろ…これ」
スヤスヤ、もふもふ…
高原先生は目を覚ます様子もなかった。
----------
先祖がえりたちの会議の少し前。
「なーんかさ、高原先生、痩せすぎじゃね」
「そうそう、河川敷まで行くのもヒイコラ言ってるしさ…自転車で来りゃいいのに」
うんうん、よその顧問はそうしてるし…
「でもさ、一緒に走ってくれるの…いいよな」
「確かになー、エラソーにしてるよその顧問よりずっといいよな、人柄っつうかさ」
うんうん、そうなんだよなー。
「そーだよなー。優しいし。でも、高原先生にずーーーっと続けてもらいたいけど、断られるかもしれないだろ…「体力がついていかない」とかってさ。だからさ、体力つけてもらわないとじゃね?」
それな、それそれ。
来年も再来年も顧問してほしー。
「先生、ゼリーしか食わないって言ってたぞ、それってやばくねぇか?」
「だよなー、それが体力無い理由だよなー」
うんうん、そうだそうだ、良くない。
「じゃあさ、昼飯だけでも何か食わそうぜ」
「やっぱ米と肉だろ、体力って」
「毎日弁当でも差し入れたらいいんじゃね、高原先生の性格上、生徒からの善意は断れなさそうだもん」
確かに…その性格を見越して、顧問になってくれって頼みに行ったんだしな。うんうん。
「弁当って…俺、学食なんだけど…」
「オニギリぐらいなら作れるだろ?」
「まあ…米、丸く固めるだけだもんな」
「海苔くらい巻けよ…」
「知ってる?焼海苔ってカロリーゼロらしいぜ」
「じゃあ味付け海苔か」
「中の具、何にしよーか」
せっかくだから、商店街で買ってこうぜ!
「順番決めて、オニギリ、持ってこう」
「最悪コンビニでも売ってるしな!」
初日誰にする?
と言いながら、野球部員たちは商店街へ向かった。
モフモフで癒されて、首元が暖かいのもいけなかったのだろう、気持ち良さそうに寝ている。樫原君が尻尾の先で鼻をくすぐると、ふふっと笑う。
「先生、お疲れだなー」
「体力ないもんな」
「かわいー」
女子は高原先生のほっぺをフニフニつついている。
「でさ、これで分かったと思うけど、どうやら高原先生の血には、多分魔素がめっちゃ含まれてる…
俺らには手が出ないけど、プロの選手は使ってるって聞くだろ?「魔素補給剤」ってやつ、あれみたいなもんじゃないかって」
「えー、魔導士でもないのに?」
「お兄さんが魔導士だったって言ってた」
「あ、そういや、魔導士で、タカハラって人いたよな、めっちゃ強いんだって何かで読んだ」
「それで、高原先生にも魔素があるってこと?」
「よく分からんけどそうなんじゃない?」
「…でな、こっから本題よ。
今日さ、こいつ…バスケ部の川田が、ここに先生呼び出すからって、みんなちょっと期待して、室内のやつは多少いつもよりハードな練習したよな?」
こく、こく。全員頷く。
「結果、どう?」
「すごかった。疲れがぽーんってどっか行った」
「もう1回練習出来そうなくらい」
「私、膝痛かったんだぁ、それも治った」
「だろ?だからさ、週1回くらい、高原先生に頼んで、みっっっちり練習してから、治してもらおうぜ」
「ちょ、小田先輩!?」
「そのかわり!先生にたっぷりモフモフを楽しんでもらう、ってのはどうよ」
「えー、お触りと交換って…何かやだぁ」
「じゃあ、モフられ係を選んでだな…なあ、猫科のやつらでモフられ係、やれよ」
「ええっ!」
「先生、猫科が好きなんだと思うんだよ。
俺の頭、モフらなかったし、矢吹もモフモフされなかっただろ?ウサギの山辺も、クマの河本もそんなに触らなかったし…でも川田の頭はモフってた」
小田君の観察力がすごい。
キーパーをやっているだけのことはある。
「だから…かっしーと、川田、あと…本山、は、女子だから、駄目…で、だから、かっしーと川田」
「だ、駄目でしょ、川田が可哀想ですよ」
「僕、高原先生にモフモフされるのは嫌じゃないので、モフられ係でもいいっすよ!」
「な!?」
「高原先生、優しいし、歴史以外の勉強も見てくれるし、お世話になってるから…」
照れながら川田君が言うのを見て、樫原君がなぜかカッとなる。
「いーよ、川田、俺がやる、先生には…先生のお兄さんには、命助けてもらったし、俺の方が全然お前より世話になってるからな!」
なぜかムキになる樫原君は、先生を他の部に渡すわけにはいかねー、と、ゴニョゴニョ理由を述べる。
「んじゃ決まりな。
高原先生に、週1回、ここで血を舐めさせてもらって、代わりにかっしーを存分にモフモフしていいですよ、って、交渉してみようぜ」
「そうね、先生が嫌でなければ…だけど」
さっきちょっと怯えてたし…と、卓球部の猫型、本山さんが言って、会議は解散…
「ところで、先生の家、誰か知ってる?」
「あ」
「送ってやんねーと駄目だろ…これ」
スヤスヤ、もふもふ…
高原先生は目を覚ます様子もなかった。
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先祖がえりたちの会議の少し前。
「なーんかさ、高原先生、痩せすぎじゃね」
「そうそう、河川敷まで行くのもヒイコラ言ってるしさ…自転車で来りゃいいのに」
うんうん、よその顧問はそうしてるし…
「でもさ、一緒に走ってくれるの…いいよな」
「確かになー、エラソーにしてるよその顧問よりずっといいよな、人柄っつうかさ」
うんうん、そうなんだよなー。
「そーだよなー。優しいし。でも、高原先生にずーーーっと続けてもらいたいけど、断られるかもしれないだろ…「体力がついていかない」とかってさ。だからさ、体力つけてもらわないとじゃね?」
それな、それそれ。
来年も再来年も顧問してほしー。
「先生、ゼリーしか食わないって言ってたぞ、それってやばくねぇか?」
「だよなー、それが体力無い理由だよなー」
うんうん、そうだそうだ、良くない。
「じゃあさ、昼飯だけでも何か食わそうぜ」
「やっぱ米と肉だろ、体力って」
「毎日弁当でも差し入れたらいいんじゃね、高原先生の性格上、生徒からの善意は断れなさそうだもん」
確かに…その性格を見越して、顧問になってくれって頼みに行ったんだしな。うんうん。
「弁当って…俺、学食なんだけど…」
「オニギリぐらいなら作れるだろ?」
「まあ…米、丸く固めるだけだもんな」
「海苔くらい巻けよ…」
「知ってる?焼海苔ってカロリーゼロらしいぜ」
「じゃあ味付け海苔か」
「中の具、何にしよーか」
せっかくだから、商店街で買ってこうぜ!
「順番決めて、オニギリ、持ってこう」
「最悪コンビニでも売ってるしな!」
初日誰にする?
と言いながら、野球部員たちは商店街へ向かった。
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